午前、剣術修行の終わり、イサミが息を吐きながら講師に言った。
「流石は 最高騎士長さん、結構ハードですわ 」
その講師はハリー・オルデオス、金髪に緑の目をさている二十代後半の男だ。髪の右側を後ろに上げており穏やかな顔をしていた。今のその顔からは修行で見せた強さを見せていない。
「いえ、先代の兄ほどではありませんよ」
「先代?もしかして五年前魔王を封印して行方不明になった?弟さんだったんですか?!」
ハリーが謙遜するとイサミは驚いた。前日出たフランデン以前でもハーデルト王国には脅威があったのだ。
それを封印したのが当時の最高騎士長、 オルストローク・オルデオスと言われている。イサミの街にもそれは伝わっており有名な話だ。
その弟がイサミの目の前に現れていたのだ。
「はい、未だに帰って来ない上に彼ほどの力になれず苦心してますが」
ハリーは苦笑いする。
「その実力で、ですか………」
イサミはハリーの力を味わってなお上がいると聞き愕然とした。
そしてフランデンが最初きて一週間後、再び彼が現れたという知らせが城内に響いた。
「勇者様、こっちです!」
剣の修行に向かおうとしていたイサミは隣で歩いていたアステリア王女に引っ張られる。
「ちょっと、どこに行くんですか?!」
外とは別の方向なためイサミは戸惑ってしまう。
アステリア王女は顔を赤くしむっとするのみで答えようとしない。
「あのっ、早くフランデン倒しに行かないと!」
「ダメですっ、わたし達にはやるべきことがあるんです!」
イサミが急かすがアステリア王女はそれでも行き先を変えない。