雑司ヶ谷高校 執筆部
図書委員に詰問される
 昨日は、図書室でギャルの上杉先輩に絡まれて、全くの予定外であったが、歴史研究部に入ることになった。  今日も部室に寄ろうかと思っていた。というのも、昨日のうちに歴史研究部の部長・伊達先輩に英語の勉強を見てもらう約束をしたのだ。明日、英語の小テストがあるので、その対策だ。  伊達先輩は成績優秀者で、入部する代わりに彼女に勉強を教えてもらえることになったのはいい点だ。これで僕の成績も爆上がりだろう。多分。  そんな昼休み、中庭のベンチに座って一人で弁当を食べていた。  一応、言っておくが、僕には友達がいないわけではない。  今日はたまたま、一番の友達が学食で食べるとのこと。  そして、今日は天気も良かったので、中庭で弁当を食べている。  弁当を食べ終わった頃、ある女生徒が近づいて僕に話しかけて来た。 「ねえ」  彼女は同じクラスの毛利歩美あゆみ。  おかっぱの髪型にメガネ、見た目も中身も、ザ・文学少女だ。休憩時間は、いつも何か小説を読んでいる。  彼女は、おな中で、中一、中二ではクラスも同じだったが、ほとんど口はきいたことが無い。高一の今も同じクラスであるが、やはりほとんど口をきいたことが無かったので、そんな彼女に話しかけられて、ちょっと驚いた。 「何?」  毛利さんは、僕の隣に座って質問をしてきた。 「昨日、金髪の人に連れていかれたけど、大丈夫だった?」  昨日の事を知っている?  そうか、毛利さんは図書委員だ。そういえば、昨日も受付にいたな。上杉先輩に拉致られたのを見ていたのか。というか、当然、見られていただろう。 「大丈夫だよ。最初、カツアゲかと思ったけど」  僕はそう言って笑ってみせた。 「結局、あの後、歴史研究部に連れていかれて、入部することになったよ」 「歴史研究部?」 「そう、あの金髪の人、上杉先輩っていうんだけど、図書室で歴史研究部の部員の勧誘をしてたんだ」 「そうなんだ。よく図書室に来て、武田君のことを見てたみたいだから」  やはり、目を付けられていたのか。全然気が付かなかったけど。 「だから、武田君のことが好きなのかなぁ、って」 「いやいや。それはあり得ないよ。本当に勧誘だけが目的だよ」 「で、入部したのね」 「うん。部長の伊達先輩が勉強を見てくれるって言うから」 「伊達先輩って2年で成績がトップクラスの人?」 「そうだよ。伊達先輩の事、知ってるんだ?」 「名前だけだけど。頭が良いって。それに生徒会長の選挙にも立候補するっていう噂も聞いたことがあるし」  伊達先輩、有名人なのか。生徒会長の立候補の件は初耳だが。 「生徒会長の選挙っていつだっけ?」 「今月末よ。だから、立候補の締め切り日は、そろそろなはずよ」  そうなのか。全然興味がなかったので、知らなかった。一年生は投票以外 関係ないし。  立候補の件は、後で伊達先輩に聞いてみよう。 「歴史研究部って、他に部員がいるの?」 「いや、伊達先輩と上杉先輩の二人だけ。僕が入ってやっと三人だよ」 「そうなんだ」 「先輩たちは、一年生が居なかったから、来年以降、部の存続に危機感を持っていたらしいよ」 「でも、武田君が二年生になった時は、三年の二人は引退だから、一人だけになっちゃうね」 「別にいいよ。僕は部の存続に責任を持つつもりはないし」  そうなのだ。僕にとって別に部の存続はどうでもいいことだ。僕が二年になった時、新しく一年生が入ってくれば、それはそれでいいし、入ってこなくても、それはそれ。 「ふうん」  毛利さんがそう返事をしたところで午後の予鈴がなった。  僕らは教室に戻った。
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