雑司ヶ谷高校 執筆部
イケメン同級生と昼休みを過ごす
 土日の長旅から明けて、月曜日。  旅の疲れが残っているような気がする。  さらに天気は雨なので、登校の意志がだいぶ削がれた。しかし、学校をさぼると授業に追いつくのに苦労するから、気力で登校した。  しかし、その気力は登校までで尽き、午前中の授業は半分近く寝ていた。やはり疲れている。  そして、昼食の時間。  今日は、足利悠斗と一緒に弁当を食べている。  彼は、僕の学校での数少ない友達で、幼馴染みである。  悠斗は、サッカー部所属のイケメンだ。髪を少し茶色に染めて、ピアスなんかも開けている。そして、イケメンだけあって女子にモテる。  ちょっと、うらやましい。  彼のような陽キャとは幼馴染みでなければ、友達になることはなかっただろう。  僕らは弁当を食べながら、歴史研究部や週末の旅の話をする。 「歴史研究部に入ったんだって?」 「ああ。無理やりだったけどね。先輩が勉強を見てくれるっていうから」 「先輩って誰?」 「勉強を見てくれるのは伊達先輩だよ。生徒会長候補。勉強を見てくれない上杉先輩という人もいる」 「へー。先輩女子の個人授業とか、うらやましいよ。それに、先輩女子2人と1泊旅行とか、なかなか、やるじゃん?」 「そんな、良いもんじゃないよ。旅行も半ば無理やりに参加させられたし。かなり疲れた」 「全部、無理やりじゃん。純也は、押しに弱いからなあ」  悠斗はそう言って、声を上げて笑った。 「笑うなよ」  僕は、わざと不機嫌な表情を作って言った。  悠斗はそれを気にせず、質問を続ける。 「先輩二人は可愛いの?」  先輩二人が可愛いかどうかは、評価を保留したい。 「うーん…」 「なんで、悩むんだよ」  悠斗は弁当のウインナーを一つ平らげて続けた 「じゃあ、旅行では、どこに泊ったの?」 「名古屋のホテルだよ」 「まさか、先輩二人と一緒の部屋?!」 「そんな、ことありえないよ。別の部屋だった」  僕は首を大袈裟に横に振って見せた。 「それは、当たり前か」 「悠斗は、モテモテだから、そこは羨ましがることないだろ?」 「そうでもないよ」  悠斗は軽くためいきをついた。 「好きな人から、好かれないと意味ないね」  え?? 好きな人? いるのか?  気になるが、今日のところは突っ込まないことにした。  悠斗もそのことを口に出して後悔したのか、露骨に話題を変えてきた。 「そうそう、噂になっているけど、来週のどこかで、抜き打ちで持ち物検査があるらしいよ」 「持ち物検査? 『来週』って、それじゃあ、抜き打ちの意味は?」 「さあ、風紀委員の誰かが、うっかり漏らしたんじゃないのかな? とりあえず、来週が終わるまでは、気を付けた方がいいね」 「そうだね」  僕はそう答えたが、学校に不要なものは、もともと持ち歩かないので、全く気にすることはないだろう。普段通りにしていればいい。  弁当を平らげ、しばらくすると予鈴がなったので、僕らは次の授業の準備に取り掛かる。
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