雑司ヶ谷高校 執筆部
この歴史研究部には問題がある!
 月曜の午後。  先ほどの授業の時間で、1年生の全教室対象に風紀委員主導で抜き打ちの持ち物検査が行われた。2,3年生は別の日に行われるらしい。  イケメン同級生の足利悠斗から持ち物検査の情報を事前に得ていたし、そもそも僕は特に問題になるような持ち物を持ち歩いていないので、難なくクリアした。  そして放課後。  教室から出る時、その悠斗が声を掛けてきた。 「これから部室に行くんだろ? 気を付けた方がいいよ」 「気を付けるって何を?」 「持ち物検査だよ。部室もチェックされるらしいよ。うちのサッカー部も先週のうちにヤバめの物は退避したよ」 「うちの部室には何も置いてないから大丈夫だよ」  僕はそういって笑った。  悠斗と別れると僕は歴史研究部の部室に向かった。  校舎の4階、奥の奥、理科準備室。部室の扉を開ける。 「いらっしゃい」 「来たね!」  例によって、伊達先輩、上杉先輩がポテチを肴にスマホゲームをやっている。 「こんにちは」  挨拶をして椅子に座ると、上杉先輩がニヤリと笑って話しかけて来た。 「ねえ、ねえ、ねえ」  そういって顔を近づけてくる。  もう、上杉先輩の接近には慣れたぞ。  僕は平静を保ちながら答える。 「なんでしょう?」 「こーれ!」  見覚えのある表紙…。これは!部屋に隠してあったエロマンガじゃないか?!  僕は、動揺を隠すことができなかった 「な、な、な、な、なんで、これを持っているんですか!?」 「君の部屋に行ったとき、ベッドと壁の隙間に落ちてた」 「それは、隠してあったんです!!」 「あんなのすぐに見つけられるよ。あれじゃ、母親や妹も知ってるぞ」  上杉先輩は嬉しそうにエロマンガをペラペラをめくって見せた。 「見て見ぬふりするのが家族の優しさなんです」  ああ、自分の答えが、答えになってない。 「ふーん。武田君はこういうシチュエーションが好きなんだ? 中世ヨーロッパの伯爵が屋敷のメイドを何人も手籠めにしていく…」 「そ、そ、そ、そんなことはありません!」  横から伊達先輩が付け加える。 「武田君はメイドが好き…と」  伊達先輩、傷口に塩を塗るのはやめてくれ。 「もう、返してください!!」  そういって僕は上杉先輩からエロマンガを取り上げた。  上杉先輩は声を上げて笑っている。  取り上げたエロマンガをカバンに入れようとした次の瞬間、部室の扉が勢いよく開けられ、男女2人の生徒が入って来た。そして、女子生徒の方が宣言する。 「風紀委員です! 部室での持ち物検査を行います!!」
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