雑司ヶ谷高校 執筆部
大洲城でおやすみ
 水曜日。  今日は生徒会長選挙の投票日だ。  午後の授業が終わった後、各クラスで投票のための時間が10分ほど取られた。  僕はもちろん、我らが歴史研究部部長の「伊達恵梨香」の名前を書いて投票した。  エロマンガの件が気になっているが、伊達先輩には当選してほしい。  文学少女の毛利歩美も、イケメン同級生の足利悠斗も、帰り際に誰に投票したか聞くと、僕がお願いしていたこともあって、伊達先輩に入れてくれたらしい。  ありがたや。  そんなこんなで、放課後。僕と毛利さんは、一緒に歴史研究部の部室に向かう。  校舎の4階、奥の奥、理科準備室。  僕は部室の扉を勢い良く開け、伊達先輩と上杉先輩に挨拶をした。 「投票しましたよ!」 「ありがとう」  伊達先輩は微笑んで礼を言ってくれた。 「私も入れました」  毛利さんもアピールする。 「ありがとう」 「これで、当確だね!」  上杉先輩が声を上げた。 「まだ、箱が開くまでわからないわ。でも、もうできることは無いわね。やれることはやったと思うし、武田君の応援演説でいい方向に行ったと思うわ」 「そうですかー?」  僕は伊達先輩のその言葉に納得できず、怪訝な声で言った。 「逆効果ではなかったでしょうか?」 「そんなことないと思うわ。まあ、結果を見ればわかるわね」  伊達先輩、ちょっと余裕そうだが、自信があるのだろうか?  いずれにしても、票は選挙管理委員会によって集計され、明後日の金曜の昼休みには結果が掲示板に張り出される予定だ。  僕と毛利さんは椅子に座ると、昨日、毛利さんは居なかったから、伊達先輩が改めて夏休みの城めぐりと合宿について説明をする。僕も、もう一度聞く。  毛利さんは、なぜかノリノリで行きたがっている。 「ところで、合宿の場所だけど、どこかリクエストはないかしら。ただし関東近県の温泉地で」  伊達先輩が尋ねる。 「うーん」  温泉地で有名なところと言えば…。 「箱根ですかね?」 「草津とか鬼怒川もいいかも」  毛利さんが提案する。 「熱海、伊東あたりも良いかなー」  上杉先輩も提案してきた。  まあ、僕はどこでも良かったが。 「じゃあ、あみだくじにしましょう」  そう言うと、伊達先輩はノートを取り出し、1ページを切り取ってあみだくじを作り出した。  5本の縦線の先には、箱根、草津、鬼怒川、熱海、伊東と書かれている。  しすて、僕らがそれぞれ、横線を適当に加えていく。 「じゃあ、やるわね」  伊達先輩が適当に1つスタートを決めると、指をなぞって進めていく。  すると…。  伊東に決定した。 「やった!」  上杉先輩がガッツポーズをする。 「あー」  毛利さんが天を仰いだ。  僕はどこでもよかったので、結果を静かに受け入れる。 「じゃあ、決まりね」 「ところで、合宿とお城めぐりの日程はどうなるんですか?」  毛利さんが尋ねた。 「7月の内に、中部~関西の城めぐり、8月上旬に合宿、8月下旬に関東  の城めぐりでどうかしら?」  僕はどうせ暇なので、いつでも良かった。  上杉先輩も毛利さんも異議は無いらしい。決まりだ。 「話は変わるけど、泊まれるお城があるのを知っているかしら?」  伊達先輩が話題を変えた。 「いえ。そんなお城があるんですか?」 「愛媛県の大洲城、1人55万するけど」 「「「ひえー」」」  僕らはその金額に驚いた。  伊達先輩は僕らの反応が面白かったのか少し笑いながら言う。 「さすがにそこまで出せる部費は無いわね」 「宝くじでも当たらないとねー」  上杉先輩が諦めたように天井を見つめた。  僕らは、その後、小一時間ほど雑談をして、部室を後にした。 =========================== 大洲城キャッスルステイの情報 https://castlestay.ozucastle.com/
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