雑司ヶ谷高校 執筆部
嵐山
 僕と毛利さんはホテルを出て、二条駅に向かった。  時間は夕方5時前で、まだまだ外は明るかった。  目的地は電気の神様がいるという “電電宮” だ。JRでの最寄り駅は嵯峨嵐山駅。二条駅から10分もかからずに行ける距離だ。  伊達先輩から預かった青春18きっぷを駅員に見せる。駅員は注意深くハンコの日付を見ると、改札を通してくれた。  本当にこれで乗り放題なんだな、と改めて感心した。  ホームへ上り、少し待ってから電車に乗り込んだ。  二条駅から4駅で目的の嵯峨嵐山駅。  嵯峨嵐山駅で降りてから、グーグルマップをルートを確認しながら、しばらく歩く。  すると、人がかなり多い通りへとやって来た。  僕は人ごみは苦手なんだが、嵐山は超有名観光地だから仕方ない。  毛利さんは、はぐれないようにするためか、僕のシャツの腰辺りを掴んで後ろをついて来る。  人ごみを分けてようやく渡月橋へとやって来た。渡月橋の上も人だらけだ。  さすが嵐山。  渡月橋を渡り切ってさらに進む。ここら辺まで来ると人はあまりいない。  電電宮のある法輪寺へ上る石の階段を進んだ。  途中、エジソンとヘルツの碑があるのを見つけた。ネットで事前に調べた通りだ。  ヘルツって何をした人だっけ?  碑の前には電電塔というの石の灯篭に似たものが建っている。  折角なので、スマホで写真に収めた。  法輪寺までやって来ると、せっかくなので神様にお願いをすることにした。  ここでは何をお願いするのが正しいのだろうか? ちょっと悩む。  とりあえず僕と毛利さんは、本堂の前で並んだ。  そして、鈴緒を振って鈴を鳴らす。お賽銭を投げて、柏手。  電気の神様だから、スマホを無くしませんようにとか、ブレーカーが落ちませんようにとか、お願いした。  お願いを済ませると、僕らは本堂を後にする。 「何をお願いしたの?」  僕は毛利さんに尋ねた。 「ひみつ」  毛利さんは、そう言っていたずらっぽく笑う。  ああ、そうですか。  次に僕らは、お守りとか並んでいる売店を見る。  ところで、このお寺には何とSDカードのお守りがあるという。  さすが電気の神様がいるところだなあ。  しかし、僕の財布の事情から見るだけで何も買わずに退散した。 「竹林の小径に行かない?」  突然、毛利さんが提案してきた。  竹林の小径。僕でも知っていた嵐山の見どころの一つだ。  グーグルマップで調べると徒歩15分程度。時間もまだあるし、折角だから行ってみるか。  一応、伊達先輩にLINEで、戻りが少し遅くなると連絡をしておく。  一旦、元来た道を戻ることになる。僕らは再び渡月橋の人ごみをかき分けて進む。 「ねえねえ、お腹空かない?」  突然、毛利さんが尋ねて来た。 「そうだなあ。少し空いたかな」 「じゃあ、あれ食べてみない?」  毛利さんが指さす先に『嵯峨野コロッケ』という看板が見えた。 「さっき、通った時に気になって」 「いいね」  僕は同意する。  二人で行列を少し並んで、目的のコロッケを受け取る。僕らは店の近くで向き合って、コロッケを、一口頬張った。  サクサクして、とても美味しい。  それにしても、今日は毛利さん機嫌がいいな。ずっと笑顔だ。  僕と毛利さんはコロッケを食べ歩きながら、竹林の小径へ向かう。  途中も結構、人が歩いている。  竹林の小径へ到着する。  ここは、数百mほどの小径の両側に竹林が続くという名所。  名所なのでやはり人が多い。  それでも何とかスマホで写真を少しばかり撮ってみた。 「ねえねえ、一緒に撮らない?」  毛利さんが言ってきた。  僕はそれを断る理由もなかったので快諾した。  毛利さんがスマホを構える。僕らは肩を寄せ合って写真を撮った。  その写真を見せてもらった。ピントが僕らに合っているので、背後が竹林とは今一つわかりにくかったが、毛利さんが満足そうにしていたので、特に何も言わなかった。 「じゃあ、そろそろ帰ろうか」  僕は毛利さんに声を掛けた。  そして、僕らは再び徒歩で、もと来た道を戻って、嵯峨嵐山駅へ向かった。  ============================  電電宮の情報  https://www.kokuzohourinji.com/dendengu.html
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