雑司ヶ谷高校 執筆部
演劇…だと?
 僕と毛利さんは二条城近くのホテルへ戻ろうと二条駅までやって来た。  ホテルに戻る直前に上杉先輩からLINEで、『晩ごはん買ってきて』というメッセージと共に買い物リストが送り付けられてきたので、仕方ないので近くのコンビニで買い物をした。  そして、部屋に入ると上杉先輩が早速、声を掛けて来た。 「お帰り。遅かったね」 「ちょっと余分に回ってまして。それで、ご依頼のご飯買ってきましたよ」  テーブルの上に買って来たものを広げた。  僕と毛利さんの分の晩ごはんを見て伊達先輩が話しかけて来た。 「二人の分、少なめね」 「さっき、コロッケ食べましたから」 「コロッケ?!」  上杉先輩が食いついてきた。 「え、ええ。嵯峨野コロッケというやつを」 「二人だけズルいなぁ」  上杉先輩が自分の弁当のふたを開けながら苦情を言う。  そう言われてもなあ。 「お二人も明日、食べてきたらどうですか?」  僕は提案した。 「残念だけど、明日はそんな時間ないわね」  伊達先輩がそう言うと、明日の予定を改めて言う。 「午前中には大阪まで移動して、大阪城を見て、お昼には東京に戻るために出発しないと」  そうか、確か大阪から東京まで乗り継いで約10時間コース。新幹線だと2時間半で行けるのに、青春18きっぷだとすべて在来線だからそうなる。  大阪の名物を食べる時間も有るか、無いかどうかわからない状態だ。まあ、すべて部費から出てタダだから文句は言うまい。 「そういえば、学園祭だけど、クラスでは何かやるの?」  伊達先輩が話を続ける。 「クラスで?」 「そんな話題は今まで出たことないと思います」  僕はホームルームで担任の話をちゃんと聞いていない時が多いので、一応、毛利さんにも同意を求める。 「だよね?」 「はい、出てません」  毛利さんが言うなら間違いないだろう。 「ほとんどの部活では展示とか出店をやるけど、各クラスでもやっていいのよ」 「そうなんですね」 「それは、各クラスでやるかやらないか決めるのよ」 「いつ決めるんですか?」 「それはクラスごとに違うと思うけど、大抵ホームルームの時間に決めてるけど」 「じゃあ、2学期になってからですね」  僕は首を捻って考えた。確か学園祭は9月末。学期が始まったら早々に決めないとダメじゃないのか? 「そういえば」  毛利さんが口を挟んだ。 「小耳にはさんだけど、クラスで演劇をやりたい人たちがいるみたい」 「演劇?! 初耳だよ」  僕は驚いて言った。 「キミに演技なんかできるの?」  上杉先輩がからかうように言ってきた。 「出来るわけないですよ。演劇とか断固拒否します」  僕は少々興奮気味に言う。  伊達先輩がたしなめる様に言う。 「クラスで演劇をやるとなると、俳優だけでなくて、脚本、大道具、小道具、衣装などの担当も振り分けられるだろうから、そういう担当になれば演技ができなくても大丈夫じゃないかしら」  さすが伊達先輩、冷静な分析だ。 「ああ。それに、よくあるじゃん。台詞の無い木の役とか」  上杉先輩が、わかったように言う。 「なるほど、演劇になったとしても裏方をやればいいんですね」  良いことを聞いた。最悪、台詞の無い役でいいや。  しかし、演劇をやりたいなど、だれが言い出したんだ? 「先輩たちのクラスは何かやるんですか?」 「アタシらは1学期のうちに何もやらないって決めたので、学園祭の活動は歴史研だけだよ」  上杉先輩がご飯を頬張りながら言う。 「私は生徒会の仕事も併せてやらないといけないから少し忙しくなりそう」  と、伊達先輩が珍しくぼやいた。  それにしても、伊達先輩、良くやるよなあ。  部長職に会長職。僕は絶対にやりたくない。  そんなこんなで、僕らは食事、入浴、世間話などを済ませて明日もあるので早めに休むことにした。
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