雑司ヶ谷高校 執筆部
水着回
 お昼前。  島津先生の運転する歴史研一行は出発から約2時間半で伊東の海水浴場に到着した。  部員達は、海の近くで車から下ろしてもらい、先生は車を止めるための駐車場を探すとのことで一旦別れた。  いい天気、そして暑い。  目の前に広がる青い海と青い空。    海水浴は、小学校以来だな。  僕は基本インドア派なので、小学生の頃、親に連れられて行った以来だった。  伊東自体も初めてやって来た。  砂浜を見ると、結構な人がいる。場所取りが大変そうだな。  僕らは頑張って場所を確保して、レジャーシートを敷く。  そして、先に女子3人が更衣室で着替えをしてくるということで、僕は確保した場所で待つ。  そして、水着はズボンの下に履いて来ていたので、その場でズボンを脱いで準備完了。  だいぶ待たされて、女子3人が戻って来た。  伊達先輩は白いワンピースの水着、毛利さんが水色のワンピースの水着だ。予想通り、この二人は露出度が低い。  上杉先輩はピンク色で大きなフリルのついたビキニだった。上杉先輩は露出度が高かった。 「どう?」  上杉先輩がポーズを取りながら、絡んできた。  ここは、ウソでもいいから褒めておくんだっけ…? 「上杉先輩、水着が可愛いですね」 「水着だけ?」 「ええと…、上杉先輩も可愛いです」 「ちょっと間があったけど?」 「気のせいですよ」  そう言って僕のとっさに作った笑顔は、引きつっていたに違いない。 「それにしても、すごい人出ね」  伊達先輩があたりを見て言う。  男性グループ、女性グループ、家族連れ、カップル。色々居て、波打ち際はイモ洗い状態だ。  見ているだけで疲れそうになる。 「おさわりターイム!」  と、上杉先輩は再び絡んできた。手になんか小瓶を持っている。 「ほらほら、日焼け止め塗ってよ」  持っているのは日焼け止めか。 「いやいやいや、伊達先輩か毛利さんにやってもらってくださいよ」  遠慮した。 「折角、女子の生肌に合法的に触れる機会なのに」  何を言う。  触ったら触ったで、後々、『あの時、触ったよね?』とか言ってきそうなので、固辞する。  結局、日焼け止めは女子3人でお互い塗り合っていた。  そして、僕の背中は、毛利さんがやって来て塗ってくれた。  それにしても、最近は毛利さんの機嫌は良いな。  日焼け止めを塗りたくっていたら、やっと先生もやって来た。  既に着替え済みだ。  先生は紺色の下地に花柄のワンピース。さすが教師だけあって(?)、露出度が低い。  それにしても、先生って歳いくつだろう? 20歳代中盤か後半ぐらいのようだが。 「じゃあ、行くよ」  上杉先輩が海を指さして言う。 「え。僕はここで寝てます」 「何、言ってんの? キミも行くんだよ」 「何でですか?」 「女子だけでいると、ナンパがウザイから、君がツレで側にいれば、ナンパされる可能性が下がるから」  先輩、いつも彼氏が欲しいとか言ってなかったけ?  ナンパでも、なんでも相手見つければいいのに。  とは、口にしない。 「荷物は私が見てるから、行ってらっしゃい」  先生がそう言ってくれたので、僕は仕方なく、女子達に連行されて海に向かった。
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