雑司ヶ谷高校 執筆部
コインランドリー
 卓球が終わり、みんなで部屋に戻る。  僕は色々な疲れから畳の上にゴロリと転がった。 「明日、混浴に行くから、水着洗って干しといてね」  また、上杉先輩が妙なことを言い出した。  混浴って…。 「ん? 混浴で、水着? どういうことですか?」 「熱海に温泉使った温浴プールがあるみたい。帰り道だから少し寄っていくことにした」  それ、ただのプールやん。 「上杉先輩、それを混浴というなら、学校のプールも混浴になっちゃいますよ」 「混浴っていったら、ちょっとドキドキするでしょ?」 「しません。それより、いつ、そこに行くと決めたんですか?」 「さっき卓球やる前に行こうって話になった。キミはなかなか風呂から出てこないから」 「そうですか…」  まあ、いいや。 「旅館に洗濯機と乾燥機があったからみんなの分の水着、洗ってきます」  毛利さんが立ち上がって言った。 「悪いね」 「お願い」 「私のもお願いできるかしら」  上杉先輩、伊達先輩、島津先生が自分たちの水着をカバンから出して手渡した。 「武田君のは?」 「僕のは自分で洗いに行くよ」  と言って、立ち上がった。 「一緒に行こう」  自分で水着を洗うと言ったのは、女子に洗ってもらうのはちょっと恥ずかしいし、それに部屋で、伊達先輩、上杉先輩、島津先生と4人だけになるのは、いろいろ気を張ってないといけないから精神的に疲れるので、ちょっと逃げたかった。  そんなわけで、僕と毛利さんは旅館に設置されているコインランドリーで水着の洗濯をする。  そして、洗濯を終え、次に乾燥だ。  僕らは、乾燥機の前にあるパイプ椅子に並んで座った。  すると、毛利さんが話しかけて来た。 「私がやるから部屋で休んでればいいのに」 「あの3人と一緒にいると落ち着かないんだよ。特に上杉先輩が変な絡み方してくるので油断ならないから…、さっきも脱がされそうになったし。それに毛利さんといた方が気が休まる」 「そ、そう?」  毛利さん、なんか嬉しそうだな。  僕は話を続ける。 「なんで、あんなに絡んでくると思う?」 「うーん…。武田君は、あまり怒らないからじゃないかな」 「まあ、怒らないな…。怒ると疲れるんだよ」  などと雑談をしていると、毛利さんが話題を変えて来た。 「そういえば、進路希望ってどうするの?」 「進路希望ってなんだっけ?」 「理系か、文系か、よ。2年生はクラス分けがあるから」  何も考えてなかった。 「毛利さんは文系だよね?」 「ええ」  そうだろう。文学少女が理系に進むって言いだしたら、どこかのマンガだ。 「僕はどうしようかな…?」  学校の成績は、理系科目、文系科目ともに満遍なく平均より少し上だが、将来やりたいことが特にない。  こんなことで進学とかどうなんだろう?  と言っても、社会に出て、生きていける自信もあまりないな。 「文系にしちゃいなよ」  毛利さんが明るい声で言ってきた。 「そうしたら2年も同じクラスになれるかも」 「そうだなあ…」  今、クラスで話をするのは、毛利さんと悠斗ぐらいだからな。  悠斗もおそらく文系に進むのだろう。  理系に進んで、話をするやつが全くいないよりかはましか…。  しかし、進路、こういう決め方でいいんだろうか?  とりあえず、今日のところは解答は出さずにおいた。  そうこうしていると、乾燥機が終了の合図の音を立てて止まった。  僕らは乾いた水着を取り出して、部屋に戻った。
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