雑司ヶ谷高校 執筆部
虫取り網
 卓球部のメンツは、青いユニホームに着替える。  部員でない僕は当然、卓球部のユニホームは持っていないので、学校ジャージに着替える。 「その網を忘れないでね」  羽柴部長は、来る時に池袋で僕に渡した虫取り網の事を指さした。 「あ、はい」  僕は言われたとおりに網を手にする。  しかし、卓球の練習に虫取り網? 謎は深まる。  そして、一同は、体育館のような卓球場に集合した。島津先生と女子生徒も集まって来た。  羽柴部長が何やら合宿の心構えみないなことを簡単に話す。次に島津先生も一同に喝を入れる様に何やら話している。  僕は関係が無い上に、興味がないので適当に聞き流している。  そして、準備体操、ストレッチをして練習開始だ。  その前に、羽柴部長と島津先生が僕のところへやって来て、僕のやることを説明する。 「武田君には、最初のうちは球拾いをお願いするわ」 「球拾いですか? 簡単ですね」 「その網を使って、散らばった球を集めて、あの籠の中に入れていってほしいのよ」 「わかりました」  この網は球拾い用だったか。    部員達が練習をはじめる、“多球練習”というのをやるらしい。  練習が始まってすぐに、ピンポン球はポロポロと床に落ちて散らばり始める。僕はそれを網ですくったり、手で拾ったりする。さほどあわただしい感じではなかったので、のんびりやれた。  午後の練習の前半、ピンポン球を無心で拾い、かごに戻す。  多球練習が終わると、僕の仕事も無くなった。  すると、島津先生に近くのコンビニまでお使いを頼まれたので、出かけたりして、あっという間に夕方になった。  夕食を取りに宿泊所の食堂に集まる。  隣に羽柴先輩が座り、話しかけてくる。 「いやー。助かるよ。部員が球拾いをやると、その分練習時間を取られるからね」 「あの網、最初、虫取り網かと思いました」 「虫取り網にしては網の目が粗くないかい」  そう言って、羽柴先輩は笑った。 「武田君は卓球には興味ないかい?」 「すいませんが…、あまり興味ないですね」 「そうかい。島津先生はスジが良さそうだって言ってたよ」 「温泉卓球でやった程度で、そんなのわからないと思うのですが…」 「島津先生は指導者としても良いから、見る目は確かだと思うよ」 「そうですか…、でも、すみませんが、興味ありません」  最初に、ちゃんと拒否っとこう。これ以上、巻き込まれたら、たまらんからな。  食事も終わり、部員たちはミーティングをやるというので、大広間のようなところに集まる。僕は関係なかったが、とりあえず顔を出して話を聞いていた。
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