雑司ヶ谷高校 執筆部
秋の予定
 僕と毛利さんは、歴史研究部の部室の扉を開けた。  すると中ではいつもの様に伊達先輩と上杉先輩が座って待っていた。 「いらっしゃい」  伊達先輩は紙パックのコーヒーを飲みながら、ポテチをつまみながらスマホをいじっていた。 「来たね!」  上杉先輩は野菜ジュースの紙パックを片手にマンガを読んでいる。  ん? それ、僕のマンガだよね。  ……。辛うじてエロじゃないやつだった。 「「お疲れ様です」」  僕と毛利さんは挨拶する。  伊達先輩は僕と毛利さんが席につくのを待って話始めた。 「早速だけど、9月の予定の詳細を決めたいと思うのよ」  伊達先輩は何やら書いた紙を机の上に広げて説明をする。 「まずは月末の学園祭。先日も言ったと思うけど、私たちは去年占いカフェをやって、今回もカフェをやるつもり。それで、今年は趣向を凝らして“占いメイドカフェ”をやろうと思うのよ」 「え? メイドですか?」  僕は驚いて思わず声を出した。 「キミ、メイド好きでしょ?」  上杉先輩が横から突っ込む。 「別に、それほどでも」 「え? だって、エロ漫画でメイドを手籠めにするの読んでたじゃん!」 「あれは、たまたまそういう作品だったんです!」 「まあ、メイド喫茶はこういう学園祭で王道だから。それに、一緒にやる占い研、手芸部にもOKもらっているから」  伊達先輩は解説する。  机に広げた紙は、教室での配置図のようだった。  テーブル、調理場所、占いコーナー、手芸部の物販用机。結構、ぎゅうぎゅうだな。 「毛利さんもそれで良いかしら?」 「はい」  毛利さんは小声で答えた。  毛利さんはメイド服を着るの抵抗ないのだろうか? 「僕はどうすればいいんですか?」 「キミもメイド服だよ! 男の娘!」  上杉先輩が嬉しそうに声を上げた。 「断固拒否します」  僕は抗議する。 「そう言うだろうと思って、執事の衣装を着てもらおうと思うのだけど、どうかしら?」  伊達先輩はたしなめるように言う。 「まあ、それなら…」 「じゃあ、決まりね。あと、交代で料理もやってもらおうと思うんだけど、武田君は料理できるのかしら?」 「いえ、全然」 「メイドカフェの王道のオムライスを作ってもらおうと思うので、作り方を覚えてもらえると助かるわ」 「オムライスって簡単なんでしたっけ?」 「簡単よ」  本当かなあ…? 「特訓だね!」  上杉先輩が再び声を上げた。 「キミんちで特訓しよう」 「なぜ、うちで…?」 「だって、キミんちがみんなの家からの中間地点じゃん」  まあ、学校では料理場所が無いからな。  ん? 「学園祭当日は、調理道具とかどうするんですか?」 「調理道具やカセットコンロ、材料は、前日までに準備するわ。去年もやったから大丈夫。メイド服と執事の服は通販で安いのを注文するから、服サイズをそれぞれ教えてね」  そう言うと、伊達先輩は通販サイトの表示されたスマホを掲げた。  そして、上杉先輩と毛利さんは伊達先輩の周りに集まって、メイド服の選定をワイワイ始めた。  僕の執事の服は伊達先輩の好みで適当にお願いした。  しばらくして、それぞれの服は決まり、伊達先輩は“注文”ボタンを押した。 「次は、お城巡りの予定だけど」  伊達先輩は別の紙を取り出して、机の上に広げた。 「9月は学園祭があるから、お城巡りは2つだけにしておくわ。日帰りで、山中城と駿府城ね。どちらも静岡県よ。そして、10月は東北地方を回ろうと思うのよ。“秋の乗り放題パス”というのがあって、JR在来線が3日間の乗り放題になるから、水戸城、青葉城、国府多賀城、山形城、新発田城の5つを回るわ」  伊達先輩は紙に書いたルートをの簡単な地図を指さす。  お城の場所は、茨城県、宮城県、山形県、新潟県の4県にまたがる。また過酷なルートを、と思った。  これに参加するかは、ちょっと考えよう。  僕らはその後、世間話を少しだけして解散となった。
ギフト
0