雑司ヶ谷高校 執筆部
年上女子は苦手
 翌日。  今日は、雨が降っているので憂鬱だ。  登校をすると、いつものようにげた箱付近で毛利さんと出会い、連れ立って教室へ向かう。  悠斗が松葉杖をついて、登校してきた。今日も数名の女子の取り巻きを引き連れている。雨の日の松葉杖は傘もあって大変そうだな。いや、女子たちがいるから大丈夫か。  さて、先日、上杉先輩に悠斗を紹介してくれとお願いされたのだが、このところ女子の取り巻きが常に張り付いているので、その話をするタイミングが無い。  仕方ないので、LINEで聞いてみることにする。昼休みにメッセージを送った。 『歴史研の上杉先輩が、悠斗を紹介してくれと言っているが、どうだろう?』  しばらくして返事が来た。 『上杉先輩って、あの小柄なギャルの人だよね?』 『そうそう。知ってるんだ?』 『見かけたことがあるよ。うちの学校でギャルは少ないから目立つし』 『で、どう?』  しばらく経って返事が。 『悪いけど、年上には興味ないな。ちょっと苦手で』 『そうか、わかった』  そうか、悠斗は年上には興味ないか。  悠斗はイケメンだから、その気になれば女子は選びたい放題だろう。だから、あえて好みでない女子と知り合うことをしなくてもいいのだ。  羨ましい。  ちょっと嫌味を送ってやろう。 『イケメンは女子が選り取り見取りで良いよなー。うらやましい』 『別に良くないし、うらやむこともないだろう? それに、純也は毛利さんがいるじゃん』 『毛利さんとはそう言う関係じゃないよ (;・∀・)』 『そうかい? まあ、時間の問題だね ( ̄ー ̄)ニヤリ』  というわけで、上杉先輩に悠斗が“年上には興味ない”ことを伝えなくてはならなくなった。  彼女は、どういう反応をするかな?  放課後。  僕と毛利さんは一緒に歴史研の部室である校舎の4階、端の端、理科準備室に向かう。  扉を開けるも部室には、誰もいない。  僕と毛利さんは、学園祭の展示を作る作業に取り掛かる。  しばらくすると上杉先輩がやって来た。そして彼女も展示作りに取り掛かった。  悠斗の件は、毛利さんが居るので遠慮して話題にしなかったが、毛利さんがお手洗いに立ったので、今がチャンス。 「足利悠斗を紹介する件ですが…」 「おお! どうだった?!」  上杉先輩は嬉しそうに顔を上げた。 「本人曰く、“年上には興味ない”そうです」 「なんだー。残念」  上杉先輩は落胆して肩を落とした。 「先輩だったら、他のイケメンがすぐ見つかりますよ」  と、心にもない慰めの言葉を口にした。  などと、やり取りをしていると毛利さんがお手洗いから戻り、続いて伊達先輩が部室にやって来た。  伊達先輩は、僕の作業している展示物を見ると感想を言う。 「私の分もやってくれて、ありがとう。良くできてるわ。さすがね」  なんたって、一昨年の展示やネットで検索した内容をパクっ…、いやいや、インスパイヤされて作ったからね。 「ところで」  伊達先輩が話題を変えた。 「図書委員の毛利さんは知っていると思うけど、来週の木曜日と金曜日の放課後に図書室で本の整理をするのよ。OBから大量に書籍の寄付が来る予定で、それの整理と、元々、図書室にあった人気の無い書籍を書庫に移したり、処分したりする作業もついでにやろうということになったの」  よりによって学園祭直前にその作業か。OBの人も寄付のタイミングが悪かったな。そして、作業をやらされる生徒会も図書委員もご苦労なことだ。  などと考えていると、伊達先輩が僕に近付いて言った。 「武田君も手伝ってくれないかしら?」 「え?」  なぜ巻き込む? 「武田君には寄付された書籍のリスト化をお願いしたいのよ。タイトルと著者名をパソコンで入力してほしいの」 「なぜ僕が?」 「以前、“パソコンを使う作業があるときは、手伝ってくれる”という約束をしてくれたから」  しまった。  たしかに、夏休みに生徒会室で、そう言う約束をしたな。  運の悪いことに、クラスの出し物の演劇のリハは水曜日なので、予定がかぶらない。  仕方ないな。 「わかりました」  僕は、しぶしぶ承諾した。  それを聞くと伊達先輩は満足そうに微笑んだ。  やれやれ、僕も年上女子が苦手になりそうだ。
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