雑司ヶ谷高校 執筆部
メイドと執事
 週が変わり月曜日。  伊達先輩からLINEで学園祭の歴史研、手芸部、占い研合同の出し物“占いメイドカフェ”で着る衣装が届いたというので、放課後、手芸部がいつも使っているという教室に行くことになった。  手芸部の部員は、12人という大所帯。  ちなみに歴史研は4人、占い研は2人。  総勢18人で、なんと、僕以外は全員女子という怖い状況となっている。  この18人で、ローテーションを組んでカフェを切り盛りする。  ちなみに歴史研の伊達先輩、手芸部の津軽先輩、占い研の松前先輩の各部長は、生徒会役員でもあるので、カフェにいる時間は少々短くなるそうだ。  学園祭の当日は、休憩時間なども入れて、カフェには常に10名は居るような体制で臨む。  そんなわけで、僕と毛利さんは放課後、連れ立って指定の教室に行くと、女子たち数名が業者から届いたという段ボールからワイワイ言いながらメイド服を取り出していた。  メイド服は、それぞれが好き勝手に好みのデザインを選んだので、微妙に違うものとなっていた。  伊達先輩と上杉先輩も居た。  伊達先輩は空き教室に入ってきた僕らを見つけると衣装を手渡してきた。  僕には執事の衣装だ。  そこへ、上杉先輩が声を掛けてきた。 「これから女子は着替えるから、30分ばかり外で待ってて」  ということで、僕は執事の衣装を近くの男子トイレ個室で着替えることにした。  衣装は黒のシックなもだったが、詳しくはわからないので、なんとも評価のしようがない。  着替えが終わり、洗面台の鏡で自分の姿を確認する。  まあまあ、良い感じ? かな。  自分の着替え後、時間がまだあったので、着替えた学生服を手にしたまま、廊下や階段の踊り場をうろうろしながら30分待つ。  時間になったら、念のためLINEで教室に入っていいか? と確認して教室に戻る。  伊達先輩からOKの返事をもらったので、扉を開けると、そこはメイドだらけだった。 「おお! 来たね!」  上杉先輩は僕の執事姿を見ると大声を上げた。 「なかなか、いいじゃん!」  そして、近づいてきてもう一言。 「“馬子にも衣装”とは、良く言ったね」  上杉先輩、それ誉め言葉じゃないよ。  それにしても、上杉先輩のメイド服のスカート丈が短い。相変わらず攻めてるな。 「スカート、短くないですか?」  僕は、思わず尋ねた。 「ああ、見せパン履いてるから大丈夫」  と、上杉先輩は、いきなりスカートをまくり上げた。 「わっ!」  突然だったのでびっくりしたが、目に入ったのは、ただの見せパンだった。 「ほらね」  上杉先輩は何故か満足そうにニヤついている。  次に毛利さんが近づいて、声を掛けてきた。 「執事、かっこいいね」 「ありがとう。毛利さんも似合っているよ」  毛利さんの衣装はロングスカートのクラシカルなメイド服だった。彼女らしいチョイスだ。  メイド服と執事服のお披露目会も落ち着いたところで、伊達先輩が話を切り出した。 「明日、近所の男子校と女子校に、カフェの宣伝のフライヤーを配りに行くことになったのだけど、行きたい人いる?」 「フライヤー配りって勝手にやっていいんですか?」  僕は尋ねた。 「大丈夫、事前に先方の生徒会に話をつけたから、下校時間、校門のそばで1時間ほど許可をもらっているわ」  さすが、伊達先輩は根回しに抜かりがない。  女子たち数名が男子校に行きたいと立候補した。 「グヘヘ…、男子校」  上杉先輩が下品な笑みを浮かべている。  女子校は最初、誰も立候補が無かったが、それを見て松前先輩が立候補した。  そして、僕に声を掛けてきた。 「女子は執事に萌える子がきっといるから、武田君も一緒に来て。いい宣伝になるわよ」  女子校かぁ。ちょっと興味あるな。 「わかりました」  その様子を見た、毛利さんがちょっと不機嫌そうに言ってきた。 「なんか、嬉しそうね」    毛利さん、鋭いな。 「そ、そ、そんなことないよ。重要な任務だよ、これは」  僕は何とかごまかす。  それでも、毛利さんは不満そうだ。 「私も行きたいけど、明日は図書委員があるから」   「じゃあ、決まりね。明日の放課後、またここに一旦集まってから行くことにしましょう。衣装は各自、保管してください」  伊達先輩がそう言い、皆、再び制服に着替えて、この場はお開きとなった。
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