図書室での作業が終わり、急いで自宅に帰宅した。
制服を抜いで、部屋着に着替えるとベッドに横になった。
そして、考える。
さっきの書庫のあれは一体何だったのか?
間違いなく、伊達先輩と毛利さんはキスをしていたのだが…。
自分の目が信じられなかった。
再びグルグルと頭の中を色んな考えを巡らせて、一体どういうことでああいう事に至ったのか予想をしてみるも、答えは出ない。
やはり、伊達先輩と毛利さんは好き同士で、それでキスをしていた。というのが、そのものずばりの正解なのか…?
僕は、突然思い立った。
そうだ、悠斗に意見を聞いてみよう。
ヤツならこういう事には詳しいかもしれない。多分。
スマホを手にして悠斗に電話を掛けた。
「もしもし、悠斗? 今、いいかな?」
『いいよ。捻挫のせいで、自宅で暇してるから。でも、純也が電話してくるなんて、珍しいね。いつもはLINEなのに』
「ちょっと聞きたいことがあってね」
『何だい? 改まって』
「いや、今日、学校で書庫に行ったんだけど」
『ああ、図書室で作業するとか言ってたね』
「それで、キスシーンを見てしまったんだよね」
『へー、覗きかい?』
「違うよ、偶然目撃してしまったんだよ。それで、キスしていたのが、毛利さんと伊達先輩だった」
『え…? そうなんだ?』
「いろいろ、ショックで」
『そうか、毛利さんは純也の事が好きだと思っていたけどね』
「僕もそう思っていたんだけど…」
『さっさと付き合わないから、取られちゃったんだね。しかも女子の先輩に』
「やっぱり、そういう事なのかな…?」
『でも、女子同士って仲が良いと、じゃれ合って軽くチュッってしたりするじゃん? そう言うのじゃないの?』
「いや、そんな感じは全くなくて、なんか深刻な感じだったんだよね」
『深刻な感じのキスって、何だよ』
「実際、じゃれ合った感じじゃないし、そもそも、あの二人はじゃれ合うとか、そういう事をしなさそうだし」
『じゃあ、本人たちに直接聞いてみたら?』
「いや、聞けんだろ。僕が覗いていたことがばれる」
『偶然見たんだろ? そういって聞けばいいじゃん? 毛利さんのことを諦めるのは、それからでもいいんじゃない?』
「うーん…。ちょっと考えてみる」
もし、2人が2人の関係を秘密にしたいと思っているなら、僕は見ていないことにした方がいいのではと思った。
実際、こんなに悩むのであれば、見ない方が良かったと思っている。
「ありがとう、話を聞いてもらって、ちょっとスッキリしたよ」
『まあ、あまり思い悩むなよ』
「まあ…、そうだな」
『じゃあ、明日。舞台頑張ってな。俺は客席から応援するから』
「頑張るよ。じゃあ、明日」
そういって、僕らは会話を終了した。
とりあえず、毛利さんと伊達先輩の事は忘れようと思い、何とか頭の中を明日の舞台に切り替えるため、台本を再び最初から読むことにした。