雑司ヶ谷高校 執筆部
たこ焼きと恋人つなぎ
 僕と毛利さんはインターナショナル・カフェを後にする。  まだ休憩は30分も残っていた。  僕はふと思い出して、悠斗の所属するサッカー部の出し物に行きたいと思った。  学園祭パンフレットによると、サッカー部はたこ焼きの屋台を出していたはずだ。  たこ焼きぐらいなら、まだお腹に入りそうだし、毛利さんも少し食べるだろう。  そんなわけで、僕と毛利さんは、人ごみをかき分けてサッカー部のたこ焼き屋台を目指す。  校舎から校門までの屋台の列にそれはあった。  サッカー部員が頑張ってたこ焼きを作っていた。  そして、まだ足の捻挫が癒えない悠斗は座って売り子をやっていた。   「やあ、悠斗。1つ、ちょうだい」  僕は代金の500円玉を悠斗に手渡す。 「ああ、純也。毛利さんも来てくれて、ありがとう。出来上がったばかりのやつをあげるよ」  悠斗はそう言って、パックに入ったたこ焼き6つと爪楊枝を手渡してくれた。  たこ焼き、熱々なのがパック越しに手に伝わってくる。  悠斗は話を続ける。 「それにしても、昨日の舞台は災難だったね」 「災難?」 「織田さんにキスされたことだよ」 「ああ、それね」 「え? 災難と思ってない? ひょっとして、ラッキーだったと思ってたのかい?」 「いや、災難だった」 「まあ、気を付けてな。織田さん、男好きだから、純也は狙われているんじゃないかと思って」 「さすがに、そんなことないだろ」 「いや、彼女は顔とか気にしないみたいだよ。だから、今まで何人の男とも付き合ってこれたんだよ」  顔とか気にしないのか…。しかし、悠斗め、暗に僕の顔が良くないと言っているな。確かにイケメン悠斗に比べるとだいぶ落ちるのは同意せざるないが。 「ん? いや待てよ、僕が王子様役を悠斗と代わってなければ、織田さんは悠斗とキスしていたことにならないか?」 「そうかもしれないね」 「本当は狙われていたのは悠斗だったんっじゃあ?」 「どうだろう? それは織田さん本人のみが知ることだね」  そう言って悠斗は笑った。  悠斗だったら、大抵の女子は狙いそうだ。きっと、織田さんもそうに違いない。  悠斗との会話を切り上げて、僕と毛利さんは中庭まで移動してベンチに座る。中庭のステージでは、ギター弾き語りの演奏をしていた。  僕らは、演奏を聞きながら、たこ焼きをハフハフと平らげた。  たこ焼きを食べ終えても、まだ休憩時間は15分残っていた。  そこへ、毛利さんがとんでもないことを言いだした。 「お化け屋敷、行かない?」  それは、できれば遠慮したい。  僕が躊躇していると、 「怖いの?」  毛利さんはちょっと嘲笑気味に尋ねてきた。 「いや、別に…」  僕は答える。本当は怖いのだが…、しょうがない行くか。  占いメイドカフェと同じ階に、お化け屋敷があったので、そちらに向かう。  お化け屋敷前の受付で入場料300円をそれぞれ払う。  高校生が学園祭で作るお化け屋敷なんて、そんなに怖いはずがない、と自分に言い聞かせながら。扉を開けた。  なんやかんやで、出口まで。  滅茶苦茶怖かった…。まだ、ドキドキしている。息が出来ん…。  特に、からかさ小僧の傘が開いた時、エイリアンみたいなのがウジャウジャ出てきたのが、一番ビビった。あれはどういう風なカラクリなのか? 「あー、怖かった」  毛利さん、少し嬉しそうなんだが…、何故?  そして、彼女はぴったり僕に張り付くように体を寄せていた。さらに、手が、恋人つなぎになっていた。  いつの間に?!  毛利さん、伊達先輩と付き合っているんでしょ?  二股はいけないよ、と、僕は心の中でつぶやきつつ手を放した。  そして、僕は、なんとか呼吸を整え、毛利さんと一緒に占いメイドカフェに戻って行った。
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