体育館に並べられた椅子で座って待っている。
しばらくして、舞台『ロミオとジュリエット』が始まった。
この作品は、流石に有名なので、だいたいのストーリーは知っていた。
出演者は全員女子なので、観たことは無いが、“タカラヅカ”はこんな感じのかな、などと思いながら観る。
ほどなくして、舞台は終了。
パンフレットでタイムテーブルを確認すると、どうやら、先ほどの魔法少女3人組のアイドルライブはこの後にやるらしい。
舞台の転換で、10分ばかり休憩。
しばし待って、いよいよライブが始まる。
大音量で音楽が流され、ステージにライトが点ると、歓声が上がる。
魔法少女3人組が登場して、パフォーマンスを開始した。
最前列のほうで、ライト?(後で調べたが、サイリウムと言うらしい)を振り回して、暴れている? 踊っている?観客たちが20名ほど。
あれがヲタ芸と言うやつなんだろうか?
たまになんか叫んでるし、ちょっと怖い。
曲の合間に魔法少女たちは、MCで自己紹介をする。
グループ名は『O.M.G.』と言うらしい。
Oh My God?!
そりゃ、オーマイゴッドだな。
パフォーマンスは、20分ばかりで終了。
感想は、ダンスが上手かった。歌はもうちょっと頑張ろうか、という感じ。
まあ、珍しいものが見れた。
『O.M.G.』の出演が終わると、僕と毛利さんは体育館を後にする。
お腹が空いてきたので、お昼ごはんを食べることにした。
校舎に沿って食べ物屋台がいくつか出ている。その中から選ぶことにする。
そして、毛利さんの希望でお好み焼きを食べることに。僕らは、お好み焼きを買って、近くのベンチに座って食べる。
お好み焼きを食べていると、ライブ直後の『O.M.G.』の3人が通りかかった。
赤い魔法少女の細川さんが、僕に近づいて声をかけて来た。
彼女を見ると、ライブ後のせいか汗だくだ。前髪が汗で額に張り付いている。
「あっ、武田君! ライブ見てくれた?」
「ああ、見たよ」
「どうだった?」
「いやー、いろいろ感動した」
感動は言い過ぎかもしれないが、アイドルライブを生で見たのは初めてだったし、ヲタ芸も初めて見れたからな。
「おおー、それは良かった!」
細川さんは嬉しそうに、ほほ笑んだ
「ところで、グループ名の『O.M.G.』だけど、なんであんな名前にしたの?」
「これは、『Orthodox Magical Girls』の略なの」
なんだ、Oh My God! じゃないのか。
そして、『正統派魔法少女』とは?
「なるほどね」
僕はそう言うだけで、あまり突っ込まないでおく。
「ねえねえ、LINEで友達になろうよ!」
「えっ?! まあ…、良いけど」
いきなりの提案で驚く。
そして、細川さんは、スマホに表示されたQRコードを向けて来た。
読み込めということか。
とりあえず、自分のスマホでそれを読み込んで、友達追加ボダンを押す。
細川さんは友達になったことを確認する。
「ありがとー。じゃ、またねー」
と、言って魔法少女たちは去って行った。
「女の子の連絡先をもらえてよかったね」
隣で一部始終を見ていた毛利さんが、嫌味を言ってきた。
僕は返答に困る。
「えっ? ああ、そうだね…」
そして強引に話題を変える。
「じゃあ、次、茶道部に行ってみようか?」
僕らは茶道部が野点をやっているという中庭に向かう。