雑司ヶ谷高校 執筆部
攻略!イカ男
 日曜日。  今日の午後から、僕の部屋で勉強会をやることになっている。  明日から中間試験なので、その対策である。  歴史研のメンバー全員集合だ。  前回、歴史研で勉強会をやったのはいつだったかな。夏休みか? とすると約2か月ぶりだな。  そんなわけで、午後になって、歴史研のメンバーがゾロゾロと僕の部屋にやって来た。  今回も、上杉先輩は勉強しない。  早速、僕のベッドの上に寝転んで、僕のマンガやエロマンガを読み始めた。 「そう言えばさあ」  僕らが教科書やノートを机の上に広げて、勉強会の準備をしているところに、唐突に上杉先輩が話しかけてきた。 「いつも思うんだけど、この部屋、あんまりイカ臭くないよね。エロ本活用してないの?」  それもそのはず、来客がありそうな時は、部屋を掃除したついでに、消臭剤を嫌と言うほど撒いているからな。  午前中も念のため撒いていたのだ。 「活用してません」  と、嘘をつく。 「エロ本がもったいないね。全部もらっていい?」 「それはダメです」  などとアホな会話をしていると、妹の美咲がジュースを持ってきて来てくれる。  ローテーブルの上にジュースの入ったコップを並べて言った。 「伊達さん、私も勉強みてください!」 「いいわよ。でも、お兄さんは、やっぱりみてくれないの?」 「お兄ちゃんは相変わらずケチだからみてくれないんです…。あっ! でも最近はどこかで誰かとキスしてくると、ケチが治るみたいです」  妹よ、余計な事を言わなくていい。 「あら、そうなの?」  伊達先輩はジロリと僕を見た。  僕は、全力で否定する。 「美咲、そんなわけないだろ?」  妹が続ける。 「でも、この前、白雪姫とキスして来た時、犬のぬいぐるみくれたじゃん!」 「あれは、たまたまだろ」 「昨日も、お兄ちゃんがマンガをくれたんです。だから、誰かとキスしてきたんじゃあと疑っているんですが、伊達さん何か知りませんか?」  伊達先輩は記憶を辿るように、少しうつむいてから、再び口を開いた。 「私たちと生徒会室を出た後、ずっと毛利さんと一緒に居たみたいだけど?」 「えっ?! じゃあ、毛利さん、お兄ちゃんとキスしたんですか?」  妹が目を輝かせながら、毛利さんに尋ねた。 「してないよ…」  キスしてないから、毛利さんは当然否定する。 「するわけないだろ!」  早く妹を黙らせないと。僕は強めに否定する。 「するわけないって…? でも、この前、この部屋で毛利さんとキスしようとしてたって、お兄ちゃん言ってたじゃん!」  おいおいおい、みんなの前で何を言い出すんだ、妹よ。 「へー、そうなんだ」  上杉先輩がニヤつきながら、僕と毛利さんの顔を交互に見る。  毛利さんは顔を紅潮させている。 「いいから、勉強しましょう! 勉強!」  僕は、会話を強制終了させる。  こんなことより、僕は中間試験を攻略しないといけないのだ。 「やっぱり、この部屋には、いやらしい匂いがする」  と、上杉先輩がニヤつきながらボソりと言った。  そんなこんなで、勉強会が開始された。  その後は、幸いなことに比較的平和な時間が流れた。
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