雑司ヶ谷高校 執筆部
小梁川さんと図書室で…~その2
 水曜日。  僕と織田さんの噂は絶賛流行中。  それ以外は、何事もなく1日が過ぎ、放課後となる。  僕は昨日、小梁川さんと約束をして、有効的なツイッターの運用方法について教えてもらうことになっている。  東池女子校の宇喜多さんが“SNSの運用方法を知りたい”との言っていたので、それをネタにお近づきになりたいからだ。  そんなわけで、僕は約束の場所の図書室で座って待っていた。  少し遅れて小梁川さんがやってきた。 「遅れてごめんなさい」  小梁川さんは、僕の隣に座る。 「全然大丈夫」 「じゃあ、早速、ツイッターについて教えるわね」  ということで、新聞部のアカウント――実質は片倉部長のものだが――を中心に解説してもらう。  まあ、以前、ざっと僕も見たことはあるんだけど、ムカついて途中で見るのをやめたからな。  小梁川さんはスマホでツイッターを開く。  僕は横から覗き込む。 「まあ、みんなが読みそうなネタをツイートするんだけど、見ての通り、恋愛ネタが多いわね。誰と誰が付き合ってる、とか」  確かにそうだ。  僕と織田さんが付き合っているとか、他の生徒についても同様なネタについて書いてある。  実名は上げておらず、写真は後姿で本人かどうかはわからないが、ツイートはわかる人にはわかる、というような内容になっている。  なので、自分と関係しない生徒の話は、正直よくわからないという状態。  それでも、学校の生徒は結構見てるらしい。  後は、片倉部長が何を食べたとか、食べ物の写真がアップされているだけのツイートもある。 「学校行事とかについては、つぶやかないの?」  僕は質問する。 「最近だと学園祭については、結構つぶやいてたね」  ツイートを少し遡る。  学園祭の出し物などの写真が色々とアップされていた。  占いメイドカフェのメイドの写真とか、体育館のステージの出し物など。僕が出演した白雪姫の舞台の写真、キスしているところもしっかりアップされていた。  キスの写真はリツイートも、いいねも結構ついていた。 「やっぱり、こういう写真は、反応が多いわね」  小梁川さんは言う。  僕は思わず苦笑する。 「ゴシップ以外に反応のいいツイートはないの?」  僕は尋ねた。  学園祭の時のものでは、  将棋部にプロ棋士が来ていた時の写真。  科学部の科学実験の動画。  写真部のコスプレ撮影大会の写真。  ミスコンとイケメンコンテストの写真。  外部から呼んだ漫才師のステージ写真。  などが反応が良かった。  なるほど。  学園祭は東池女子校も終わっているからな。   それに、ゴシップネタ中心となると……。  宇喜多さんのやりたいSNS運用とは違うような気がするなあ。  一応、提案してみるか? どうしよう? 「他には?」  僕はさらに尋ねる。 「これ以上は、あまりないなあ」 「そうか…。生徒会長選挙の頃は?」  そう言えば、生徒会長選挙の時、それとなく伊達先輩の良いところをアピールするようなツイートがあったとかなんとか。 「遡ってみるね」  小梁川さんは、どんどんスライドさせて、古いツイートをさかのぼる。    そして、5~6月の頃のツイートが表示される。  伊達先輩の写真と公約についてのツイートが結構アップされていた。 「これって、公平性に欠かない? 対立候補の北条先輩については全然ツイートが無いようだけど?」 「だって、これ、片倉部長の個人アカウントっていう体だから、大丈夫なのよ。新聞部公式だとダメだと思うけど。まあ、北条先輩から文句を言われたことは、あるみたいだけど、個人アカウントだからって突っぱねたみたい」 「新聞部のやっているアカウントはないの?」 「ないよ。でも、来年は私がこのアカウントを引き継ぐ予定。だから本当は新聞部のものみたいなものなんだけどね」  そうなのか。 「ところで、なんで、こんなこと調べてるの?」  東池女子校の生徒会長とお近づきになりたいから、とは言えず…。 「えーと…、部活の宣伝とかに使えないかなと思って」  適当に嘘をつく。 「歴史研なら、お城巡りの時の写真とかいいんじゃない? お城の写真とか、良さそうじゃん?」 「まあ、そうだね……。考えてみるよ」 「じゃあ、もういいかな? そろそろ、部室に行かないと」  小梁川さんはそう言って立ち上がった。 「うん。ありがとう」  小梁川さんは図書室から去って行った。  SNSについて、宇喜多さんに提案するには、もっとネタを集めた方が良いかもしれない。  しばらくの間、その場で考えるもいい案は思いつかなかった。  この後は、歴史研の部室に行くのも面倒なので、自宅に帰ることにした。
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