織田さんの演技の練習に付き合った後、帰宅。
自分の部屋に戻ってベッドに横たわる。先ほどの織田さんとのキスが脳裏を蘇る。
まったく、彼女はどういうつもりで、キスをするような、あんな策を弄したのか? 謎だ。
でも、明日になれば教えてくれるらしいからな。
しばらく部屋でダラダラして、ダイニングで夕食を取って、風呂に入り、また部屋に戻る。
さて、僕は明日のデートコースを考えなければいけない。
まずは無難に映画かな。
後はお金があまりかからない遊び、公園を散歩とか?
あまり女子を歩き回らせるのは良くないか…?
うーん。
ネットで検索しよう。
映画は自分の好みにしようと思ったが、織田さんにとって忙しくなる直前の最後の週末だし、女子が好きそうなものを選んであげることにした。
スマホで上映作品を調べてみるが、タイトルだけでは、どれがいいかわからん。
ここは、妹の美咲に聞いてみることにする。
僕は隣の美咲の部屋を訪れる。
扉をノックする。返事があったので入る。
部屋では妹がパジャマでベッドに転がって、少女漫画を読みながら、くつろいでいた。
ヒマの潰し方が、僕そっくりだな。
「なあ」
「何?」
「今やってる映画で、女子が観て喜ぶやつって何?」
「『恋する大腿骨』」
「それは観たから、別のやつで」
「『こいだい』観たの?」
「『こいだい』?」
「『恋する大腿骨』のことだよ! いつの間に?!」
「先週、織田さんと観てきたよ。何か、よくわからなかったけど」
「よくわからない?! あれは女子が観てキュンキュンするやつだよ。あれがわからないなんて、ヤバいよ、お兄ちゃん」
「そうなのか?」
「そうだよ。お兄ちゃん、女子の気持ちがわからないなんて、一生彼女できないよ。ジ・エンドだよ。エンド・オブ・ザ・ワールドだよ」
世界まで終わらせるなよ。
「まあ、いいから、映画、教えてよ」
「しょうがないなあ…。じゃあ、『恋活A.S.A.P.』かなあ」
「わかった、ありがとう」
「それで、誰と映画行くの?」
「織田さん」
「織田さんと付き合ってるの?」
「いや。今、お前、僕に彼女できないって言っただろ。それで、付き合ってたら、矛盾してるだろ」
「宇宙は矛盾に満ちているんだよ」
「哲学か?」
「で、付き合ってないんだね」
「まあな」
「なにが『まあな』よ」
「もう、わかったから。ありがとう」
おススメの映画を教えてもらうと言う目的は果たしたので、妹の絡みから逃れるために部屋を出た。
さて、映画は決まったから、その後か…。
引き続きスマホでデートコースを検索して、いろいろ検討する。
適当に遊べるところ、他には、ご飯食べにレストランでも入って…、遊べるところも…、散歩して…。僕は人ごみが嫌いだから、人が少ない穴場的なところも…。
なんやかんやで、時間がかかってしまったが、何とかデートコースを決定した。
そして、明日に備えるため、もう寝ることにした。