雑司ヶ谷高校 執筆部
君、学力は平均値って言ったよね?
 その日の昼休み。  先日の中間試験の校内順位の発表がされた。  掲示板に合計得点と学年の順位が張り出されるのだ。  織田さんと食堂に行く前に、ちょっと見て行こうということになり、掲示板に向かう。  掲示板の前には順位を確認しようと人だかりできていた。  人ごみをかき分け順位表を見てみる。  僕はいつもの様に、中の上ぐらいだろうと思っていたので驚いた。  なんと!  9位 武田純也  ちなみに1学年は、160人ほどいる。   「純也、すごいね! いつもは平均ぐらいって言ってなかったっけ?」  それを見た織田さんも驚いていたが、僕本人が一番驚いている。  順位では、中の上の常連が、まさかの自己最高。  織田さんはどうなんだろう?  2人で確認する。  110位 織田雪乃 「私は、こんなもんね。純也が教えてくれなかったら、もっと悪かったかも」  といいつつ、織田さんは順位には、さほど気にならない様子。  そして、一応、一緒に勉強会をやった毛利さんの順位も確認してみる。  35位 毛利歩美  1学期、僕は毛利さんに勝てなかったからな。   ちょっと、優越感。  順位表を見終わったので、僕と織田さんは食堂に移動し、昼食を食べることにする。  今日も食堂は混んでいた。なんとか座席を確保して座る。  他の生徒が、僕らを見る視線を感じる。  先週から、僕らが付き合っているという噂が出回って、皆、興味津々なのだろう。まあ、僕らは、さほど気にしていない。  いつもの様に僕は弁当、織田さんは食堂のランチを食べ始めた。  織田さんは質問をする。 「そう言えば、朝、足利君と揉めてた? 私の名前も出てたようだけど」 「うん、ちょっとね」 「何があったの?」 「悠斗が、織田さんのことを誤解しているようだから、訂正したんだよ」  以前の織田さんは、いろんな男と遊んでいたようだけど、ここ2、3か月はそんなことをしていない様子。  以前の噂ばかりが出回っているのは、さすがに可哀そうだと思ったからだ。僕もエロマンガ伯爵の件が、出回って今でも困っているからな。気持ちはわかる。  それに、(仮)と言えども一応は彼女だから、噂から庇ってあげないと、と思ったのだ。 「そっか、ありがとう」  織田さんは礼を言う。 「僕らが付き合っていることは、もう隠してないけど、いいよね?」  念のため確認する。 「いいよ。私も友達に武田君と付き合ってるって、言ってるから」  織田さんが陽キャの友達の間で話しているということは、噂が事実として広まるのに時間はかからないだろう。  その後も、食べながら世間話をしていると、僕のスマホが鳴った。  伊達先輩だった。  LINEを開く。 『ちょっと急な用件があるから、今日、放課後、生徒会室まで来て』  急な用件? 何だろう? 嫌な予感がするが。 「どうしたの?」  僕が眉間にしわを寄せているのを見て、織田さんが不安そうに尋ねて来た。 「ああ…、伊達先輩から、放課後に生徒会室に来いって」  何かあったのかな? また頼み事だろうか? 「何だろうね。先週、監査は無事に終わってるし」  織田さんは、総務として生徒会役員の一員となっている。  ある程度は内情は知っているはずの彼女が何も知らないということは、新しい案件かな。 「とりあえず、行ってみるよ」 「私は演劇部のほうが始まるから、生徒会には今日は行けないって、先週のうちから言ってあるから」 「そうか」  何で呼ばれたか、今、考えてもわからず、キリが無いから食事に集中するとしよう。  食事を食べ終わって、僕らは教室に戻ってそれぞれに席についた。  昼休みはまだ5分ほど残っている。  そこに、隣の席の毛利さんが話しかけてきた。 「武田君」 「何?」 「学年9位ってすごいね」 「まぐれだよ、あんなの」 「中間試験、やっぱり全体的に難しかったみたいなのに」 「そうなの?」  そんな感じは受けなかったのだが、普段からの勉強の成果か? それとも、伊達先輩に見てもらった成果か? 「それと…」  毛利さんは、申し訳なさそう尋ねて来た。 「織田さんと付き合い始めったって、本当?」  毛利さんも朝の僕と悠斗とのやり取りを、当然、隣の席だから聞こえていたのだろう。もしくは、噂を聞いたか。 「本当だよ」 「そう…」  毛利さんは、ちょっと寂しそうにそうにしている。  しかし、毛利さんは、僕のことは気にせずに、伊達先輩と仲良くやれば、良いんだよ。  僕は次の授業の教科書の準備を始めた。
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