雑司ヶ谷高校 執筆部
要望リスト
 僕は帰宅して、自分の部屋に戻り、部屋着に着替えるとベッドに横になった。  先ほど、伊達先輩たちから提案してきた僕が副生徒会長になる交換条件として、僕の要望を彼女らに『出来る範囲内で』飲んでもらうということになった。  というわけで、期限の今週金曜までに、その要望を出さないといけない。  なるべく沢山要望を出して、なるべく沢山飲ませよう。  そこで、彼女たち、特に伊達先輩が嫌がりそうなことを考えたいと思っている。  それらを上手く飲ませるようなことを思いつかないと。ちょっと難しいが、これ必須で。  これは伊達先輩に生徒会選挙の時、ひどいことをされた。その上、毛利さんを盗られた、それらの意趣返しの意味もある。  僕はスマホのメモ機能を立ち上げた。  そこへ箇条書きでリストとして書き込んでいく。  エロいことは、明らかに出来る範囲外で却下されるだろうから、初めから外しておくか…。  いや、ダメもとでエロい要望も書いといてやろうかな?  一応、リストに入れる。 【Hなことさせろ】  他にも、何かないか、しばらく考える。  そうだ!  東池女子校の生徒会長、宇喜多さんとの連絡先を教えてもらえないだろうか?  伊達先輩なら、宇喜多さんと連絡先を知ってるだろう。  だから、【僕と、宇喜多さんがLINE交換できるように計らってくれ】  いいなこれ。リストに書いておく。  待てよ、これ浮気になるのか?  織田さんとは、まだ(仮)で付き合っている状態だし、問題ないか?  問題ない、ということにする。  後は下世話な事しか思い浮かばない。 【お金くれ】、【試験問題を前もって調べて教えろ】とか…、まあ、無理だろうな…。  これ以上、良いことが思い浮かばない。  また、何か思いついたらリストに加えることにしよう。  今日はリスト作りを中断した。  その後は、夕食を取り、風呂に入り、机に向かって少し勉強したり、ベッドに転がってマンガを読んだりして過ごす。  そうしていると、スマホが鳴った。  織田さんだ、LINEでメッセージが来た。 『今、何してるの?』 『マンガ読んでた』 『エッチなやつ?』 『違うよ。織田さんは何してたの?』 『新しい台本読んでた。冬公演と映像研で何やるか、今日決まったから』 『台本は誰が書いたの?』 『執筆部の人』  執筆部は、小説を書いたりしている部だっけ?  雑司が谷高校には文芸部が無くて、代わりに執筆部があるとか、毛利さんが言ってたような気がする。  舞台の台本なんかも書くんだな。  続けて織田さんからメッセージが来た。 『ねえ、付き合ってる同士だから、下の名前で呼び合おうよ』  え? うーん…。  ちょっと恥ずかしいが、了解する。 『いいよ』 『じゃあ、これからは純也って呼ぶね。私は雪乃って呼んでね』 『わかった。雪乃』 『そう言えば、生徒会に呼び出されたのは、どうだったの?』 『副会長になってくれって言われたよ』 『どうして?』 『役員に男子がいないから、運営に支障が出そうなんだよ。抵抗勢力とかが出てきてるらしい』 『で、なるの?』 『まだわからない。金曜日に、最終的な交渉をして決まるよ』 『純也が役員になったら、一緒に仕事出来るね』 『そうだね』  雪乃は生徒会の総務。  僕が副会長になったら、一緒になる時間が増えるな。  しばらく間が空いて、再びメッセージが来た。 『自撮り送るね』  雪乃のパジャマ姿の写真が送られてきた。  可愛いな……。 『純也の自撮りもちょうだい』  えっ?! 困ったな。やっぱり恥ずかしいけど…。  でも、仕方ない。  スマホで、変なところが無いか確認して自撮り。  どうかな? 変かな?  うーん。  何枚か撮影して、一番マシそうなものを送った。  雪乃からメッセージ。 『カッコイイね』  えっ!?  カッコイイとか初めて言われたよ。  照れる。とりあえず、礼を返す。 『ありがとう』 『じゃあ、もう寝るね。また明日』  "おやすみ”っていうスタンプが来た。 『おやすみ』  僕はメッセージで返す。  それにしても、女子とこんなLINEのやり取りをするなんて、少し前なら想像もつかなかったな…。  僕も、そろそろ寝るか。  あっ。生徒会への要望だけど、思いついた。  【織田さんの昔の悪い噂を撤回させるように手を尽くす】をお願いしよう。  これをリストに加えた。
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