雑司ヶ谷高校 執筆部
伊達先輩ははかれない
 木曜日。  明日までに生徒会に対して提出する要望リストを充実させないと。  多少無理な要望があってもいいと思い始めていた。  もし、要望が通らない場合は、そもそも僕は副会長にならなくてもいいし。  良く考えたら、生徒会のいざこざは僕にはどうでもいいことだった。  今、リストにあるのは以下の通り。 【Hなことさせろ】 【僕と、宇喜多さんがLINE交換できるように計らってくれ】 【織田さんの昔の悪い噂を撤回させるよう尽力しろ】  3つだけだと少なすぎる。せめて10個はほしい  授業中も、1限目から勉強そっちのけで色々考えていた。  そこで、思いついたのが、【僕の悪い噂を撤回させるよう尽力しろ】。  生徒会役員選挙の時に、ひどい目にあったエロマンガ伯爵のことを、帳消しにさせる。  まあ、いまさら、どうにもならないだろうけどなあ。  一応、リストに入れた。  放課後も部室で、家から持って来た将棋セットで、上杉先輩と対局しながら、さらに要望リストについて考える。    やっぱり、伊達先輩に一矢報いたいな。  近くで座ってスマホを見ている伊達先輩をチラチラ見ながら、伊達先輩にこれまでされたことを思い起こす。  壁ドンされて脅された、エロマンガを盗まれて風紀委員に通報され怒られた、噂を流されてエロマンガ伯爵にされた、頬にキスされた、卓球部の合宿に行く羽目になった(これは伊達先輩が元凶かは不明)、生徒会の手伝いをやらされた。  こんなところか。  しかし、改めて思い起こすと、本当にひでえな。  されたことを同じように、やり返すと考えると、こうなる。 【壁ドンし返す】 【エロマンガを伊達先輩のカバンに忍ばせた上、風紀委員に通報】 【悪い噂を流す】 【キスし返す】 【卓球部に送り込む】 【僕の手伝いを何かやらせる】  微妙だなあ、あまり面白みを感じない。  そして、リストに入れても、全部却下されそうだ。  考え事をして、将棋の盤からしばらく目を離していたら、うっかり飛車を取られた。  ド素人の上杉先輩に負けてしまいそうだったが、なんとか挽回した。  そんなこんなで、下校時間となり、皆は歴史研の部室を後にした。  帰宅後、さらに考える。  もっと幅広く考えよう。  今後もことも考えて、 【僕を謀略の対象にしない】  これがあれば伊達先輩も僕に対してあくどいを策略をはかれまい。  他に全然思い浮かばないので、 【妹の勉強を毎週見る】  を追加。  妹は喜びそうだ。  夕食を取った後も考え続けるが、良いことが何も思い浮かばない。  気分を変えて、LINEで雪乃へメッセージを送る。 『今、何してる?』  大分経ってから返事が来た。 『ごめん。お風呂入ってた』  メッセージの後、すぐに自撮り写真が送られてきた。まさかのバスローブ姿。  僕は、ドギマギしながらメッセージを打つ。 『明日は、生徒会に行く?』 『演劇部だよ。なんで?』 『明日、僕が副会長になるかどうかの話し合いをするから』 『一緒の時間が増えるから、副会長になってね』 『それは交渉次第』  とはいっても副会長にあまりなりたくない。  どうしようか悩んでいるのが本音だ。 『上手くいきますように』 『ありがとう。今日はこの辺で。おやすみ』 『おやすみ』  僕は再び、要望リスト作りに戻った。
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