雑司ヶ谷高校 執筆部
チーズケーキ
 いよいよ金曜日。  僕が要望リストを出し、生徒会役員共がそれを検討して、話し合った上で僕が副会長に就任するかどうかが決まる。  放課後。  生徒会室に、伊達、松前、津軽、佐竹各先輩方と、僕が集合した。  早速、話し合いが開始される。  伊達先輩が口火を切る。 「要望の内容は決まったかしら?」 「はい」  僕はあらかじめ紙に書きだしておいた要望リストを伊達先輩に手渡した。  伊達先輩はそれを受け取ると内容を確認する。  結局、僕が提出したリストは以下のようになった。 【今後、僕を謀略の対象にしない】 【織田さんの昔の悪い噂を撤回させるよう尽力しろ】 【僕の昔の悪い噂を撤回させるよう尽力しろ】 【妹の勉強を毎週見る】  以上。  結局、いろいろ考え直して無理難題は取り下げた。  結果的にかなり無難な内容となった。そして、数が少ない。  宇喜多さんの件は、SNSの運用案がもっと内容がまとまってから何とかすることにしたので、このリストに入れなかった。  伊達先輩は紙を他の役員たちにも回し読みさせる。  そして、それが再び伊達先輩の手に戻ると、話し始める。 「内容を、1つ1つ確認させて」 「どうぞ」 「まず、武田君を謀略対象にしないのは、わかったわ」 「前みたいに、エロマンガを盗んで罠に掛けたり、“エロマンガ伯爵”みたいな変なあだ名をつけられては、たまりませんから」 「その次の武田君と織田さんの悪い噂の件、これは具体的には?」 「僕のほうは、エロマンガを持ち込んで罠にはめたのは、生徒会の謀略だったというふうに、校内に周知してください。織田さんのほうは、彼女が以前、短期間で付き合う男を次々に変えてきたことの噂を消すような手を打ってください」 「生徒会が悪者になるのは、今の時期はちょっと困るわね。北条の対策が済んでからでもいいかしら?」 「それでも、いいですよ」 「それと、織田さんのほうは"噂”じゃなくて“事実”よね?」 「そうですが、それでも、何とかやってもらえますか?」  伊達先輩は少し考えてから答えた。 「わかったわ、新聞部の協力を得て、検討することにします。それでどうかしら?」 「わかりました。お願いします」 「次だけど…」 「最後。美咲さんの勉強を見るのは、私、毎週は難しいから、月2回でもいいかしら?」 「いいと思います」 「では、全部受け入れていも良いわ」 「じゃあ、副会長になるのOKです」 「それにしても…」  伊達先輩はちょっと安心したように微笑んで言う。 「もっと、無理難題が来るのかと思ったけど」 「はい、実は、伊達先輩個人に対する要望が幾つもあったのですが、それはやめておきました」 「どうして?」 「バカみたいな内容でしたし、却下されるのは間違いないと思ったので、時間の節約です」  Hな事させろとか、壁ドンさせろとか、キスさせろとか、どう考えても却下だよなぁ。 「そう。じゃあ、武田君、この誓約書にサインして」  伊達先輩は1枚の紙を取り出して手渡した。  副会長に就任のための誓約書だ。  ついに、僕も生徒会役員か。  サインを書き終わった後  先輩方から拍手が起こった。 「これからよろしく」  伊達先輩は改めて挨拶をする。 「早速、このことを新聞部に言って、拡散するわ」 「これで抵抗勢力が大人しくなりますかね?」  僕は尋ねた。これぐらいで状況が好転するとは思えない。 「とりあえず、しばらく様子を見るわ。変わりがなかったら、次の手も打つ予定」  なるほど、さすが伊達先輩、抜かりが無いな。 「武田君、良かったら就任祝いに、この後、ケーキでもどう?」 「ケーキですか?」 「池袋に、チーズケーキが美味しい喫茶店があるから、お祝いに奢るけど」  伊達先輩たちがチーズケーキ食べたいだけなのでは?  まあ、いいや。  折角なので奢られることにする。 「じゃあ、お願いします」  生徒会役員共は学校を後にして、チーズケーキを求めて池袋へと向かった。  目的のカフェでチーズケーキを食べたあと、伊達先輩と別れ際に、 「明日からのお城巡りも忘れないで」  と確認された。 「もちろん、覚えています」  今回は新幹線を使うと言うので楽しみにしている。  自宅に帰った後、妹に伊達先輩たちが勉強を見てくれる話を伝えると、とても喜んでいた。  伊達先輩のLINEを妹に教えて、後は勝手にやってもらうことにした。
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