雑司ヶ谷高校 執筆部
ミステリー
 金曜日。  ホームルームで来週の球技大会での競技の割り振りを決めた。  僕は結局、卓球になった。  体育館で屋内だし、あまり走り回らなくて疲れないはずなので、ちょうどいいと思っている。  そして、お昼休み。  いつものように織田さんに誘われて食堂に、そして、彼女は今日はどういうわけか毛利さんも誘った。  僕ら3人は食堂に行き、昼食を取りながら話をする。 「演劇部は順調なの?」  僕は尋ねた。 「うん、順調」 「冬の公演って、いつやるんだっけ?」 「12月の後半の週末だよ」 「その話が出たので、ちょうどいいわ。純也と毛利さん、舞台、観に来てくれるでしょ?」  そう言えば、以前、僕と毛利さんにチケットを買ってくれ、という話をしてたな。  今日、昼食に毛利さんを誘ったのは、それの確認ということか。 「僕はいいよ」 「私も良いけど」  僕と毛利さんは答えた。 「どんな内容なの?」  僕は尋ねた。 「ミステリーね」 「台本書いた人、ええと……、森さんだっけ? その人、ミステリーが好きなの? 学園祭のショートムービーも、ミステリーだったでしょ?」 「うん。そうみたい。執筆部は伝統的にミステリーが好きな人が多いんだって」 「ふーん」 「純也はミステリー好き?」 「好きと言うほどじゃあないけど、まあ、嫌いじゃないよ」 「毛利さんは?」 「私はドイルとかクリスティーとか少し読んだ程度」 「ドイル? クリスティー? 誰だっけ?」  僕は尋ねた。 「コナン・ドイルはシャーロック・ホームズを書いた人。アガサ・クリスティーはABC殺人事件とか、オリエント急行の殺人とか書いた人」 「ホームズなら、知ってるな」 「毛利さんって、いろいろ読んでるのね」  織田さんが感心して言う。 「小説とか台本を書いたりはしないの?」 「……しないよ」 「そっか。もし台本とか書けるようだったら、次回以降にお願いできればと思ったけど」 「試しに何か書いてみたらいいのに」  僕は適当なことを言う。  毛利さんは苦笑するだけで明確に回答はしなかった。  ミステリーと言えば、生徒会室に貼られている怪文書も言ってみればミステリーになるよな。  名探偵がいれば、簡単に解決なんだろうけど。  ただ、あの頭の良い伊達先輩ですら、よくわからないって言っているから、誰も解けないんではないだろうか?  まあ、あれを気にしているのは僕だけのようだけど。  そんなことを話しつつ昼食を終え、教室に戻る。  午後の授業も平穏に終わり、放課後になった。  今日は金曜日なので、図書室で宿題をすることにする。  図書室の机に向かっていると、聞きなれた声で名前を呼ばれた。 「武田君」  顔を上げると、新聞部の小梁川さんが立っていた。 「やあ」  僕は軽く挨拶をする。 「武田君が副会長になったの、評判良いみたいよ」 「あ、そう」  あまり、興味ない。 「そう言えば、片倉先輩がなにか策を打つみたいなことを言っていたけど、やったの?」 「いいえ。まだ、やってないみたい」 「何やるの?」 「うーん。私は聞かされてないんだよね。今のところ生徒会長と部長の2人しか知らないみたい」  伊達先輩がまた何か悪どいことを企んでいるんだろう。 「じゃあ、勉強の邪魔になるから行くね」  そう言って、小梁川さんは図書室の奥に消えて行った。  そして、下校時間。  図書委員の毛利さんの後片付けを待って、一緒に校門まで帰ることにした。 「週末は、織田さんと会ってるの?」  毛利さんが尋ねた。 「いや、織田さんは今月は、演劇部で忙しくて、週末は会う予定がないんだよ」 「そっか…」  毛利さんはそう返事をする。  しばらく、して再び話始めた。 「今日のお昼に、私、小説書いてないっていたけど、実は最近書いてるの」 「へー」 「まだ途中なんだけど、初めての小説だから恥ずかしくて、まだ誰にも言ってなくて…」 「ふーん」 「それで、武田君に読んでもらって、感想を聞きたいんだけど」 「えっ?!」  小説を読むことはある。  この前も毛利さんに誕プレでSF小説をもらって、読んでる途中だ。  しかし、読書感想はどちらかと言うと不得意なんだけどな。 「うーん。たいした感想を言えないと思うけど」 「良かったら、明日、原稿を持って行くから、読んでほしいの」 「明日? 持ってくるって?」 「うん、良かったら武田君ちで」  今週末は織田さんは演劇部で忙しくしていて、デートの予定も入らない。  よって、暇だからいいんだが。  でも原稿はデータで送ればいいのに?  それとも、手書きなのか?  まあ、いいか。 「わかったよ」  僕はそう答え、明日の時間を決めてから毛利さんと別れた。
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