雑司ヶ谷高校 執筆部
大奥〜その2
 さらに翌日。  今日も学校を休んだ。  呼吸は通常に戻っているが、やはり精神的に回復していない。微妙に体調は良くない。  面倒なトラブルに関与したくないので、昨日も考えたが、このまま学校通うのやめようかな。  そんなことを考えつつ、1日を過ごす。  放課後の時間になって、妹が帰ってきたようだ。  ドタドタと階段を登ってくる音。  ノックがあって扉が開かれると、そこには妹だけでなく、伊達先輩と上杉先輩がいた。 「元気ィ?」  上杉先輩が開口一番で尋ねて来た。  今日は、僕の残り少ない元気も吸い取りそうな高いテンションだ。 「いえ。元気なら学校休みませんよ」  そして、元気が吸い取られて、さらに体調悪くなってきた。  上杉先輩の対応は体調が万全でないと難しいな。  伊達先輩が今日来た理由を解説してくれる。 「毛利さんからLINEが来て、武田君が月曜に過呼吸になって、昨日も休んでたって。今日は、毛利さんも織田さんも来れないって言ってたから、代わりに私たちが来たのよ」 「わざわざ、ありがとうございます」 「じゃあ、私はこれで」  妹はニヤつきながら言い放った。 「あとは、側室のお2人におまかせします」  妹は言い放つと、さっさと部屋を出て行った。  大奥じゃないって。 「側室って、なんのこと?」  上杉先輩は尋ねる。 「妹の言うことは聞き流してください」  今度は伊達先輩が尋ねて来た。 「それにしても過呼吸って、なにか凄いストレスを感じることでもあったのかしら?」  あったが、言えない。  しかし、北条先輩の言いなりになるということは、伊達先輩たちを裏切ることにもなるということなのだが…。  雪乃が人質になっているから、どうすることもできない。  思わず、溜息をつく。 「気晴らしに、将棋やろうか?」  上杉先輩は机の上に置いてあった、折り畳み式マグネット将棋盤を指して言った。 「そんな気力がないです」 「キミがそんな状態なら、勝てると思ったのに」 「今日は、上杉先輩の不戦勝で良いですよ」 「やっぱり、キミが居ないと張り合いが出ないから、はやく元気になってよ」 「はい、僕も元気になりたいです」  それにはトラブルの解消が必須なんだが。 「これ、差し入れよ」  そう言って伊達先輩が差し出したのは、スポーツドリンクとお菓子。 「ありがとうございます」  僕はそれを受け取る。そして、思わず尋ねる。 「あの…。生徒会はどうですか?」  妨害工作とか、どうなんだろう? 「いつも通りよ。武田君が副会長になって、男子の生徒の評判も少しは良くなってるって、片倉君が言ってるわ」  本当かなあ…。 「抵抗勢力の動きも止まっているみたいだし」  止まっている?  北条先輩は何か企んでいるんだろうか? 「生徒会が気になるの?」 「いや、なんとなく」 「武田君が生徒会の仕事したいんだったら、学校に来たら幾らでもあげるわよ」 「いや、いいです」  やっぱり、学校、当面行かずに済ませようかな。 「ねえ、チューしとく?」  上杉先輩がニヤつきながら突然言ってきた。 「な、な、何、言ってるんですか?!」 「キミが元気になるかなと思って」 「いや、結構です」  上杉先輩といい、雪乃といい、何を言うんだ。  まあ、上杉先輩は冗談だと思うけど。  その後も少し世間話をしたら、伊達先輩と上杉先輩は帰って行った。
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