雑司ヶ谷高校 執筆部
大奥〜その3
 さらに翌日。  今日も学校を休んだ。  呼吸も問題なくできているし、体調はとっくに通常に戻っているが、やはり精神的に回復していない。  面倒なトラブルに関与したくないので、昨日も考えたが、このまま学校通うのやめようかな。  そんなことを考えつつ、1日を過ごす。  放課後の時間になって、妹が帰ってきたようだ。  ドタドタと階段を登ってくる音。  ノックがあって扉が開かれると、そこには妹だけでなく、悠斗がいた。 「調子どうだい?」  悠斗は開口一番で尋ねて来た。 「大分、いいよ」  僕は横になったまま答える。 「じゃあ、私はこれで」  妹はニヤつきながら言い放った。 「あとは、お小姓におまかせします」  妹は言い放つと、さっさと部屋を出て行った。  もう、いいって。 「え? コショウ?」  悠斗は尋ねる。 「妹の言うことは聞き流してくれ」  悠斗はベッドの脇に座った。 「そう言えば、過呼吸はストレスとかが原因だって保健室の先生が言ってたけど、生徒会のことと関係あるのかい?」  悠斗、鋭いな。  しかし、本当のことを言えない。 「いや、関係ないよ」 「そうか。体調がさほど悪くないのなら、明日は球技大会だけで授業が無いし、気晴らしになるから来たらどうだい?」 「球技大会か…、そうだったな…」 「まあ、無理にとは言わないけどね…。純也は卓球を選んだんだっけ?」 「ああ、そうだよ。悠斗はサッカーか」 「当然」 「そう言えば、サッカー部のほうは、調子どうなの?」 「先週、東京大会の準決勝で負けたよ」 「そうか、惜しかったな」 「雑司が谷高校としては、準決勝進出は初めての快挙だったんだよ」 「来年は優勝出来るんじゃない?」 「そうなるように頑張るよ」  悠斗は頑張れるものがあっていいな。  そう言えば、他のみんなも目標があって…、  雪乃は、女優。  毛利さんは、図書館司書。  伊達先輩は、政治家。  松前先輩は、心理カウンセラー。  小梁川さんは、科学ジャーナリスト。  羽柴先輩は、卓球でドイツ留学。  上杉先輩は何も無さそうだな。  こういう人がいると、ちょっと安心する。  いや…、上杉先輩、何も考えてない風で、じつは何か考えているのかもしれない。  何に対しても情熱が湧かず、そして、何も考えていない自分は果たしてこれで良いんだろうか…?  うーん…。  自室に籠っていると、ネガティブな思考に陥るから、明日は気晴らしに学校に行くか。 「織田さんも寂しがってるようだから、来れたら来なよ。じゃあな」  悠斗は部屋を出て行った。  雪乃か…。  そうなのだ、雪乃の方も来週には決着を付けないといけないのだ。  お試しで付き合って、2週間と少し、このまま付き合い続けるのか、別れるのか。  決断の日は近い。  悩みは尽きないな。
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