雑司ヶ谷高校 執筆部
図書館
 土曜日。  図書館に行くことになっている。  毛利さんに休んでいる間の勉強を教えてもらうためだ。  僕は自宅から徒歩で東池袋駅近くの図書館へ向かう。  複数の科目の教科書を持参したので、カバンがちょっと重い。  それでも約束の時間より早く到着。  図書館は少し混んでいたが、2人分の席を確保し、LINEで位置を毛利さんに教えて、彼女が来るのを待つ。  しばらくして毛利さんがやって来た。  今日の彼女のコーデは、茶色のセーターにカーキ色のロングスカート。やっぱり大人っぽい雰囲気でやって来た。 「おはよう」  毛利さんは挨拶をした。 「やあ、おはよう」  早速勉強を開始する。  毛利さんはノートを持って来てくれていたので、それを写しながら彼女の説明を聞く。  なんやかんやで、休憩を挟みつつ3時間ばかり複数の教科を教えてもらった。  勉強が終わり、僕らは遅い昼食を取りにサンシャインシティに行く。  今日のお礼に昼食は、僕が奢ってあげた。  食事の後は、毛利さんの提案でカフェに移動して休憩する。  そのカフェは通路に面しているので、多くの人々が行き交うのが見えた。 「織田さんって私服はどんな感じなの?」  突然、毛利さんが質問する。 「え? そうだな……」  僕は、カフェの前を行き交う人の中で、雪乃が着ていたような服の人を何人か指摘して教えてあげる。 「あの人の服装が、ちょっと似てる」 「スカート、短いね」 「そ、そうだね。丈が長めの時もあったよ…。でも、なんで、こんなこと聞くの?」 「え…? なんとなく気になって…」  毛利さんも、女子だからファッションは気になる所なのかもしれんな…。でも、いつも地味な毛利さんだけど、雪乃みたいな格好をするのは想像出来ない。 「ねえ、先週、織田さんと付き合うかどうか今月末に決めるって言っていたけど、決めたの?」 「え? いや、まだ決めてないよ…。けど、来週には決断しないといけないんだよ」  なんで、毛利さんは、この件も気にしているんだ?  やっぱり僕を二股の相手にしようって企んでいるのかな?  織田さんとどうするかは、僕は実は考えている。でも、毛利さんには言うこともないだろう。  次に、やはり毛利さんの提案で、夏休みの最後に一緒に行ったサンシャイン広場へ。  サンシャイン広場はサンシャインシティの建物の屋上、ベンチが幾つかあって、意外にもあまり人が来ないところ。  時間は夕方4時。しかし、11月中旬ということもあって、だいぶ肌寒く感じた。  陽の当たる場所は少々暖かいので、僕と毛利さんはそこを選んでベンチに並んで座った。  この前、毛利さんとここに来たのは8月末。3か月前か。  あっという間だな。  あの時は、毛利さんに小指を絡められたんだった。  そして、僕が毛利さんを意識し始めた頃。  あの後、毛利さんと付き合ってたら、どうなっていたんだろうか?  もし、付き合っていたら、今頃、キスしたかな? Hもしただろうか?  最低、キスはしてただろうな。僕の部屋でキス寸前までいったから。  などと物思いにふけっていたら、毛利さんが話しかけてきた。 「もう少しで、今年も終わるね」 「そうだね…。あと1か月と少しか…」  思い返すと、雑司が谷高校に入学してから、いろいろ大変な事ばかりだったな。  そして、現在進行形で北条先輩に脅されている。  平和で何事もなかった中学の頃とは大違いだ。  やれやれ。思わず苦笑してしまう。  そんな、僕の様子を見て毛利さんが尋ねた。 「なんで笑ってるの?」 「いや、ロクなことのない大変な年だったなって」 「まだ1か月あるじゃない? きっと、いいことがあるよ」 「だといいけどね」  あまり期待しない。 「毛利さんはどうだった?」 「うーん…。まあ、楽しかったかな」 「そいつは良かった」  毛利さんは、伊達先輩とラブラブだから、さぞ楽しかろう。  2人でデートしたりするんだろうか?  しばらく話をしていたが、時間が経つにつれ、気温も下がって来たので帰ることにした。 「もう、帰ろうか。今日は勉強ありがとう」 「うん」  毛利さんは静かに返事をする。  僕らは立ち上がり、歩いて東池袋駅へ向かう。  そして、そこで別れた。
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