雑司ヶ谷高校 執筆部
決断
 日曜日の夕方。  これから雪乃と学校の教室で待ち合わせをしている。  学校に行くので日曜日というのに制服に着替える。  めんどくさいな。学校で待ち合せにしたのは間違いだったか。  いや、外に出るんなら、何か着替えないといけないから一緒か。  そんなわけで、家から徒歩5分で学校に到着。  校庭ではサッカー部が練習をしているのが見えた。幼馴染の悠斗の姿も見える。  寒いのにご苦労なことだ。  僕は校舎に入り、上履きに履き替えて教室へ。  約束の時間より少し早く来たので、自分の席に座って待つ。  これから話す内容のせいで、かなり緊張している。心臓もつかな。  しばらくして、雪乃がやって来た。 「待った?」  走って来たのか、すこし息が乱れている。 「い、いや、さっき来たばっかり。演劇部はどう?」 「順調だよ」 「そう…、それは良かった」  雪乃は僕の前に席に座って尋ねた。 「で、日曜日に教室なんかで、何か用なの?」 「あ、えーと…。先月のお台場に行った時の話なんだけど…」 「お台場の話? なんだっけ?」 「い、いや、その…、(仮)で付き合ってる件、なんだけど…」 「え…? ああ、そっか。そんな話もあったね」  え? 雪乃、覚えてないの? 「いや…、それで…なんだけど…。言いにくいんだけど…、結局、僕に恋愛感情が生まれなかった…、ということで…」  僕は何とか言葉を絞り出した。 「え? ということは…」  雪乃は少し考えて、お台場デートの時のことを思い起こしているようだ。 「別れるって事?」 「そ、そうなるね…」  僕は目線をそらした。 「ええー、なんで?」  雪乃は顔を近づけて来た。 「なんでと言われても…」 「今月は私が忙しくてデートをほとんどしなったから?」 「いや、そいう理由ではなくて…」 「じゃあ、なんで?」  詰められても、理由なんか無いよな。 「わからないけど…、雪乃のことを好きになれなかったんだよ…」  雪乃は諦めたように話し始めた。 「そっか…。私は(仮)とかじゃなくて、もう本当に付き合ってるつもりだったんだけど……。今まで忘れてたけど、あの時、『純也が私のこと好きにならなかったら諦める』って約束したからね」  しばらく沈黙。  その時間は数秒だったが、体感は数分だ。  雪乃は諦めたように明るく話し出した。 「じゃあ、わかったよ。これからは友達だね…。勉強は教えてよ」  雪乃は再び、顔を近づけた。 「勉強…? ああ、いいよ…」    雪乃は、その答えを聞いて安心したように微笑んだ。 「じゃあ、またね」  そう言って雪乃は立ち上がって、教室を去って行った。  それを見送ったあと、深いため息をついた。  すごく緊張した…。  少し思いを巡らせる。  もう、1か月ぐらい付き合ったら、雪乃のこと好きになったのだろうか?  うーん…?  もう別れるって言ったから、もう検証のしようもないけど。  これでよかったのだ。と、自分に言い聞かせた。  それにしても、別れ話をするのがこんなにキツイとは思わなかった。  今後は(仮)とか、軽々しく付き合うなんてことはしないでおこう。まあ、こんなケースは、二度と無いと思うけど。  いずれせよ懸案事項が1つ無くなって、肩の荷が下りたな。  悩みは、他に色々あるけど。  10分ほどその場で、さらに考えを巡らせたあと、教室を後にした。
ギフト
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