雑司ヶ谷高校 執筆部
年末年始の予定
 翌日の月曜日。  今日も北条先輩に顔を合わせないように、始業直前にコソコソと登校する。  無事に教室に到着。  そして、自分の席に座る。 「おはよう」  隣の席の毛利さんが挨拶をしてきた。 「ああ…、おはよう」  挨拶を返した後、教室の前のほうを見る。  雪乃と陽キャ友達がいつものように楽し気に話をしているのが見えた。  昨日の夕方、雪乃に別れ話をしたときのことを思い出して、ため息をついた。  キツかったな…。 「どうしたの?」  毛利さんが、僕の様子を見て心配そうに尋ねてきた。 「あ、いや、なんでもない」  誤魔化した。  そんなこんなで、午前の授業が終わり、お昼休みとなった。  あ…、先週までは雪乃と食堂で食べていたが、もう誘われることもないのか…。  雪乃は陽キャ友達と食堂へ行ったようだ。  隣を見ると毛利さんが一人で、弁当を食べ始めていた。  そうか、最近は僕が雪乃と一緒だから、毛利さんはボッチ飯だったんだよな…。  雪乃と付き合う以前は、毛利さんと一緒に弁当を食べていたが、今更、『今日からまた一緒に食べよう』とも言いづらい。  教室に居るのは、いたたまれなくなってきたので、寒いけど中庭で食べるか…。  ここにきて、まさかのボッチ飯とは…。  弁当箱を持って一人で教室を出る。  まてよ、中庭は寒いから…。いい場所を思いついた。  先週の球技大会で休憩で使っていた体育館の2階の観客席にまでやって来た。  屋内なので少し暖かい。  他にも数人、弁当を食べている人がいた。だいたいカップルだけど。  僕は席が開いている隅のほうに座り、弁当箱を開けて食べ始めた。  数分後、隣の席に誰かが座った。  僕は驚いて顔を上げた。 「あ? 毛利さん?」  毛利さん、後をつけて来たのか? 「今日、織田さんは?」  毛利さんは尋ねた。 「今日は…、というか、今日からは、もう一緒に食べないと思う」 「え? どうして?」 「正式に別れたよ」 「そうなの?」 「前に言ったでしょ、織田さんと(仮)で付き合って、1か月後、彼女の事を好きにならなかったら別れるって…。で、好きにならなかったら、別れたよ」 「そうなんだ…」  それを聞くと、毛利さんは弁当箱を開けて食べ始めた。  なんか、ちょっと嬉しそうにしているが…。  僕も弁当の続きを食べ始める。  僕らはあまり話をすることもなく、弁当を食べ終えて教室に戻り、午後の授業を受ける。  そして、放課後。  僕と毛利さんは、4階、端の端、歴史研究部の部室である理科準備室に向かう。  理科準備室の扉を開けると、今日も伊達先輩と上杉先輩はポテチをつまんでいた。  僕らの姿を見て二人は声を掛けてきた。 「来たね!」 「いらっしゃい」 「「こんにちは」」  僕は挨拶をすると椅子に座った。  早速、伊達先輩は話を始める。 「ところで、来月のお城巡りの予定なんだけど。12月の最終週に4泊5日で大阪に行くわね」 「大阪にそんなにたくさん、お城ありましたっけ?」 「大阪に泊まって大阪、兵庫、奈良、和歌山のお城を回るわ、東京から大阪までの途中のお城も巡る予定」 「そうですか」  お城巡りの詳細はいつものようにお任せすることにした。  それよりも、北条先輩のことが気になる。  僕は話題を変える。 「そういえば…。抵抗勢力の動きは、どうですか?」 「動きは無いわね」 「それと、片倉先輩が何かやってるとか言っていましたが、そちらの動きはありました?」 「そちらも何もないわ」  そうか…。  考えを巡らせるが、北条先輩の件は、あちらから接触してこないのでとりあえず、先送りになるか…。  北条先輩、このまま僕の人生からフェードアウトしてくれないかな。  その後は、部室でつまらないことを話しながら時間を過ごし、下校時間になって帰宅した。  自室でカバンを床に置くと、ベッドに横になって今月を振り返る。  いろいろ大変だったな。  もう、早くも12月になる。年末年始ぐらいは平穏に過ごしたいが、そうもいかないのだろうか…?
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