雑司ヶ谷高校 執筆部
奴隷生活1日目
 週が明けて、月曜日。  いつも通り登校。  しかし、悩みは尽きない。  北条先輩の件が無くなったのだが、クラスの陽キャ女子に絡まれないかと恐れながらコソコソと教室へ向かう。  自分の席について教室を眺めると、黒板の近くで雪乃と陽キャ女子が談笑しているのが見えた。  彼女たちが、こっちに来そうになったら逃げようと企んでいる。  そして、もう1つの懸念事項は上杉先輩の件。  1か月、奴隷をやらされるという話だが、何をやらされるんだろう?  それにしても、悩みの数としては、一歩前進二歩後退という感じだな。  面倒だから、しばらくは部室に行くのやめようと決心して、1時間目の授業の準備を始める。 「やれやれ」  思わず独り言が出て、ため息をついた。 「おはよう」  隣の席の毛利さんが挨拶してきた。 「お、おはよう」 「元気ないね」 「うん? いや、元気だよ」 「そう…。ねえ、また、小説書いてみたから、今度読んでくれない?」 「え? いいけど」  また小難しい文章なんだろうか。  毛利さんの小説はあまり興味がないので、適当に流して授業の準備を続ける。  そんなこんなで授業が始まり、あっという間に昼休み。  弁当を食べるため毛利さんと体育館の観客席に行こうと立ち上がると、声を掛けられた。 「純也」  雪乃だ。  先週、陽キャ女子たちにフクロにされた記憶が蘇った。  今度は雪乃にボコボコされるのであろうか?  僕は恐る恐る返事をする。 「あ? ああ、何?」 「お昼、一緒に食べない?」 「え…? ああ、良いけど…。毛利さんも一緒でいい?」  いざという時、毛利さんに助けてもらおう。 「もちろん」  僕らは一緒に食堂に向かった。  そして、僕と毛利さんは席について雪乃が定食を買って来るのを待つ。  雪乃が定食を持って席に座る。  そう言えば雪乃と別れ話してから、初めて会話するな。約1週間ぶりか。  僕らは少し世間話をほどほどにした後、雪乃が話題を変えた。 「純也、先週、ミユ達にボコられたんだって?」  ミユ? ああ、陽キャ友達のことか。 「う、うん。女子トイレでボコられたよ。毛利さんに助けられた」 「ゴメンね。私がミユたちを怒っておいたから」 「あ、ああ…、そうなんだ」  ということは、もう陽キャ女子たちにシバかれることもないか。  よかった。不安事項がまた1つ減った。  僕は胸を撫でおろした。  それにしても、雪乃、付き合っている時と大して変わらない風に話して来るな。僕はちょっと気まずさを感じているのだが。   「それで、ミユたちに、どういう風にされたの?」  雪乃が尋ねた。 「いや…。股間を思いっきり蹴られたよ」 「大丈夫だった? 勃たなくなったら大変だよね」 「大丈夫だよ」 「よかった」  そして、雪乃は話題を変えた。 「タイピン、まだしてるのね」  雪乃は僕からの誕生日プレゼントであるタイピンを指さした。 「え? ああ、そうだね」  実は、少し気に入っている。  惰性でしているが、別れたらもうしないもんなんだろうか?  まあ、いいや。  今度は、僕が話題を変えた。 「月末の舞台の練習はどう?」 「順調だよ。来てくれるんでしょ?」 「う、うん、そのつもり」  毛利さんも行くというので、僕と一緒に観劇に行くことになりそうだ。  そして、もうすぐ期末試験もあるので、勉強の話とかも少し出た。  織田さんは今回も勉強を教えてほしいとのことで、近々勉強会をやることになりそうだ。  その他の会話をしつつ僕らは昼食を終え、教室に戻った。
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