雑司ヶ谷高校 執筆部
マッサージ部屋
 午後の授業も終わった。  今日は、上杉先輩に顔を合わせたくないので放課後はさっさと帰ってしまおう。  僕は立ちあがって、毛利さんに話かける。 「今日は、用があるから家に帰るよ」 「え? そうなの?」  毛利さんは驚いた様子で返事をした。 「じゃあ」  僕は簡単に挨拶をすると、さっさと教室を後にした。  5分で自宅に着き、自室に入ると部屋着に着替える。  そして、ベッドに転がってスマホをいじりながらくつろぐ。  そうして30分も経った頃、玄関を開ける音が。妹が帰宅したようだ。  ドタドタと階段を登ってくる音。  ん? 一人の足音じゃあない。  そして、いきなり扉が開いた。 「ねえ、ちょっと!」 「えっ?!」  僕は驚いて飛び起きた。  入ってきたのは上杉先輩だった。妹、伊達先輩、毛利さんもその後に続く。 「なんで、部室に来ないのよ!?」  上杉先輩は僕に近づいて尋ねた。 「えーと…。ちょっと用事が…」 「家で寝てるじゃん!」 「いろいろあるんですよ」 「いろいろって、何? エロ本読むこと?」 「読んでません」 「いろいろじゃなくて、エロエロじゃん?!」 「エロ本、読んでませんって」 「ともかく、キミは奴隷なんだから、私の言うことは聞かないといけないんだよ! 今日、部室に来たら命令をしようと思ったのに」  だから、部室に行かなかったんだよ。 「契約不履行で、私の胸触った件、通報するよ」  上杉先輩は言う。 「それは、勘弁してください」 「お兄ちゃん、往生際悪いよ」  妹が横から口を挟む。 「そうそう、観念しなよ」  上杉先輩が相槌を打つ。  やれやれ。やっぱり逃げ切れなかったか。  僕は、諦めて尋ねた。 「じゃあ、これから部室に行けばいいですか?」 「もう、いいよ、ここで色々してもらう」 「何をするんですか?」 「とりあえず、今日のところは肩でも揉んでもらおうかな。今日は体育の授業があったから、疲れがたまっているから」  上杉先輩は肩を自分で触りながら言う。 「お兄ちゃん、その前に、ジュース持ってきてよ」  妹が言う。 「ちょっと待て。上杉先輩の命令は聞くけど、なんで、お前が命令するんだよ」 「ああ、良いね。持ってきて」  上杉先輩は妹に調子を合わせる。  上杉先輩の命令なら、しょうがない。  そして、妹よ。調子に乗るなよ。  1階のダイニングまで降りて、ジュースを人数分コップに入れて、自分の部屋に戻る。  上杉先輩はベッドに寝転がってエロ漫画を熟読していた。  伊達先輩、毛利さん、妹はローテーブルを囲んで談笑している。  僕の部屋で、何くつろいでいるんだ、この人たちは。  やれやれ。  僕はローテーブルにジュースを置く。  それを見て上杉先輩がエロ漫画を置いて言う。 「ご苦労。じゃあ、肩揉んでよ」 「はいはい」  上杉先輩はベッドに上に座って待ち構える。  僕は肩を揉み始めた。 「おっ。上手いねー」  褒められても、あまり嬉しくない。  15分ほど肩を揉まされた。 「じゃあ、背中のほうも、やって」 「はいはい」  しょうがないので、背中も親指で押してマッサージを始める。 「胸は揉まなくていいからね」  上杉先輩は釘を刺してきた。 「揉みませんよ」  胸も背中も大して変わらないじゃねーか。と思ったが、口に出すと命が危険なので、それ以上は黙っている。  そして、さらに10分ほど背中をマッサージして終了。 「おお! コリがだいぶほぐれたよ。キミ、マッサージ上手いね。プロになったら? 向いてるんじゃない?」  上杉先輩は肩を回しながら、嬉しそうに言った。  こっちは全然嬉しくない。 「プロにはなりませんよ…」 「恵梨香と毛利ちゃんと美咲ちゃんも、やってもらったら?」  上杉先輩は談笑している3人に向かって言った。 「じゃあ、やってもらおうかしら」  伊達先輩が言う。 「ちょっと待ってください、上杉先輩以外の命令は聞かなくていいのでは?」  僕は抗議した。 「じゃあ、私の命令で、みんなの肩もみして」  上杉先輩が言った。  やれやれ。  しょうがないので、他のみんなの肩もみをする。  今日は、僕の部屋はマッサージ部屋と化した。  そして、全員のマッサージが終わったら、皆は満足して帰宅していった。妹も自室へ。  結局、2時間近くマッサージし続けたので、かなり疲れた。  疲れた僕のマッサージをしてくれる人は居ない。  しかし、1か月の奴隷生活も肩もみ程度で終わるんであれば、我慢できるかな。
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