雑司ヶ谷高校 執筆部
奴隷生活3日目
 翌日。  朝、登校して教室の席に着くと、悠斗が話しかけてきた。 「純也、おはよう」 「ああ、おはよう」 「奴隷をやってるんだって?」 「なんで知ってんの?」  僕は驚いて悠斗の顔を見た。 「新聞部のツイッターで流れてたよ」  そうか…。  片倉先輩だな。SNSに投稿するのは止めてほしいもんだ。 「純也にそう言う趣味があったとはね」  悠斗は笑いながら言う。  僕は軽くため息をついてから答えた。 「いや、趣味じゃない。やむを得ずやらされているだけだ」 「また、何かに巻き込まれたのかい?」 「巻き込まれたというか…。まあ、そんなところだ」  上杉先輩の胸に触ったからとは言えまい。 「あまり、人目が付くところでやらない方がいいんじゃないか?」 「あれには僕の意志が入り込む余地がないんだよ」 「そうかい。また、風紀委員に目を付けられたら面倒じゃないかと思ってね」  それもそうなんだが、僕にはどうすることもできないので仕方がない。  予鈴が鳴ったので、悠斗は去って行った。  そんなこんなで、午前の授業、昼休み、午後の授業が終わり、放課後。  今日も仕方ないので部室に行く。  今日は毛利さんと一緒だ。  部室の扉を開けると、いつもの様に伊達先輩と上杉先輩が居た。 「来たね」 「いらっしゃい」 「「こんにちは」」  いつもの挨拶を交わす。  僕は椅子に座り、あきらめを含んだ声で尋ねた。 「今日も散歩ですか?」 「そうだね」  上杉先輩は今日もニヤつきながら、机の上に置いてあるピンク色の首輪とリードを取り上げた。 「じゃあ、付けるね」  そう言って、僕に首輪をつけ始めた。  昨日、これを見なかった毛利さんはその様子を見て、とても驚いている様子。  伊達先輩は昨日同様に笑っている。 「あははは」  上杉先輩は声を立てて笑う。  昨日も見たんだから、そんなに可笑しくないでしょ…? 「じゃあ、散歩に行こう!」 「はいはい」  僕は言われたままに立ち上がった。  そして、上杉先輩にリードで繋がれながら廊下に出た。  僕が先に歩き、後を上杉先輩が付いて来る。  今日は誰にも見られないといいなあ…。    階段を降りて1階へ。  廊下を移動。今日もげた箱あたりで数名の生徒に見られた。  廊下の端で階段を上がり2階へ。  今日も幸い廊下には誰もいなかった。  続いて3階へ。3階でも誰にも見つからず通過できた…、と安堵していると、階段の直前で聞きなれた声で名前を呼ばれた。 「純也?」  目線を上げると、目の前に雪乃が立っていた。 「何をやってるの?!」  雪乃はとても驚いた表情で尋ねた。  そりゃ驚くよな。 「いや…、ちょっと事情があって」 「事情って?」 「1か月、上杉先輩の奴隷をやることになって…」 「奴隷?!」 「そう」 「ふーん…。純也にそういう趣味があったなんて。私もそんなプレイ、まだやったことないのに」 「いや、趣味とかプレイじゃない」 「今度、私にもやらせてよ」 「いや、断る」 「良いじゃん、やってもらったら?」  上杉先輩が割り込んで来た。 「いやいや、なに言ってるんですか?」 「アタシの命令ってことにすれば、1か月以内だったら出来るよ」  上杉先輩は雪乃に向かって言った。  余計な事を言うなよ。 「そうなんですね。しばらくは演劇部の練習があるから、落ち着いたらお願いします」  雪乃もやる気になるなよ。 「じゃあ、また」  そう言って雪乃は去って行った。  僕と上杉先輩は階段を登って4階へ。  再び歴史研の部室に戻って来た。  僕と上杉先輩は椅子に座る。 「良い運動になったね」  上杉先輩は満足そうに行った。 「そうですね」  僕は適当に相槌を打つ。 「今、階段で武田君の彼女に会ったよ。織田さんだっけ」  上杉先輩は伊達先輩に報告する。 「あっ、僕、雪乃…、織田さんとは別れましたから」  僕は自己申告した。 「「えっ!?」」  伊達先輩、上杉先輩は驚いて僕を見た。 「なんで振られたの?」  上杉先輩が尋ねる。  なんで僕が振られるのが前提なんだよ。 「いや、最初から付き合うのは1か月と約束してましたから」 「そうなの?!」  下校時間まで上杉先輩と伊達先輩に、雪乃との一か月の状況を根掘り葉掘り尋問を受けた。  尋問が終わると上杉先輩が言う。 「じゃあ、週末の合コンは気合を入れてやらないとね」 「そうですね」  適当に返事をする。  気合を入れるつもりはない。 「アタシたちの合コンのセッティングも忘れないでよ!」  上杉先輩に釘を刺された。  そうこうしていると、下校時間になったので首輪を外されて帰宅した。
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