雑司ヶ谷高校 執筆部
奴隷生活4日目
 翌日の昼休み。  毛利さんと一緒に体育館の観客席で世間話をしながら弁当を食べていた。  しばらくして、毛利さんが話題を変えた。 「昨日、合コンやるって言ってたけど、誰とやるの?」 「僕と悠斗と片倉先輩だよ」 「片倉先輩って、新聞部の?」 「そう。最近、良く話をするんだ」 「ふーん…。女の子のメンバーは?」 「東池の女子だよ」 「学園祭の時に会ったあの子?」  毛利さん鋭いな。 「そうだよ」 「ふーん…。それと、上杉先輩が、“私たちの合コン”って言ってたけど、上杉先輩ともやるの?」 「うん。女子のメンツは歴史研のメンバー3人だよ」 「えっ? 私も入っているの?」  毛利さんは驚いて目を見開いた。 「そうだよ」 「初耳」 「そうだったね…。ま、そう言うことだよ」 「合コンとかやったことないのに…」  毛利さんは心配そうに言った。  僕は慰めるように言う。 「僕も無いよ。今度がお初だよ」  東池女子校のメンツとの合コンはともかく、歴史研の合コンはいつも通りの良く分からない感じになるんじゃないかと予想している。  毛利さんは続けて質問をしてくる。 「私の参加する合コンの男の子の参加者は、武田君以外には誰?」 「一応、悠斗と片倉先輩を予定しているけど」 「ふーん…」  毛利さんは不安そうに返事した。  よく考えたら毛利さんは伊達先輩と付き合っているんだよな?  その2人が合コンに参加とはどういうことだ?  2人して二股か?  そして、それをお互い容認しているということになるが?  自由なのか?  まあ、合コンで知り合って付き合うことになることは、さほどないとも聞くが(ネットの情報)。  いずれにしても、この2人は良くわからないな…。  そんなこんなで昼休み、午後の授業が終わり、放課後。  毛利さんと一緒に部室に行く。  さて、今日も散歩をやらされるのかな。  部室の扉を開けると、いつもの様に伊達先輩と上杉先輩が居た。 「来たね」 「いらっしゃい」 「「こんにちは」」  いつもの挨拶を交わす。  僕は椅子に座り、あきらめを含んだ声で尋ねた。 「今日も散歩ですか?」 「そうそう」  上杉先輩は嬉しそうにピンク色の首輪とリードを手にした。  彼女は手際よく、僕の首に首輪とリードを付けると号令を掛ける。 「じゃあ、行こう!」 「はいはい」  上杉先輩にリードで繋がれながら廊下に出た。  今日は誰に見られるのか…。    階段を降りて1階へ。  廊下を移動。今日も廊下とげた箱あたりで数名の生徒に見られた。  指を指されて笑われた。  廊下の曲がり角。出会い頭に人とぶつかりそうになる。  咄嗟に歩みを止める。  顔を見ると、まさかの天敵、卓球部所属のクラスメート、明智優衣だ。  彼女は僕の顔を見ると舌打ちをして大声で言った。 「なにやってるの?! バカなの?!」  ああ、めんどくさいな。  僕は黙ったままでいる。  明智さんは続ける。 「学校でそんなプレイとかして、場所をわきまえろよ!」  いや、プレイじゃあないんだが…。  さらに明智さんは続ける。 「エロ本は持ち込むし、エロプレイはやるし、ロクでもないね! 性欲の塊! 今、ぶつからなくてよかったよ! 触られただけで妊娠する!」  そう吐き捨てると、その場を去って行った。 「誰? 今の?」  当然、一部始終を見ていた上杉先輩が後ろから尋ねる。 「卓球部の明智さんですよ」 「何か、凄い怒ってたね」 「彼女は僕のことが嫌いなんですよ」 「そうなんだ? どうせ、キミがエロいことでもしたんでしょ?」 「しませんよ」  ん? 待てよ。 「明智さんが怒っている理由は、エロ本を学校に持ち込んだことと、卓球勝負で島津先生の胸を見せろって言ったからですよ」 「なるほど。そりゃ、怒るかもね」 「いやいやいやいや。全部、上杉先輩が仕込んだことじゃないですか?!」 「そうだっけ?」 「そうですよ! ちょっとは反省してくださいよ」 「そんなことより、触れただけで妊娠させられるって、キミすごいね」  上杉先輩が感心したように言う。 「いやいや、そんな特殊能力があるわけないじゃないですか?!」 「そうなの?」 「そうなの、って…、僕にそんな能力があったら、上杉先輩もとっくに妊娠してますよ」 「それもそうだね。そんなことより、散歩の続き行くよ!」  そう言って、リードを打った。  僕と上杉先輩は校舎内のいつもの散歩コースを移動して部室に戻った。 「今日も良い運動になったー」  部室に戻ると上杉先輩は満足そうに行った。  僕は深いため息をついて椅子に座る。 「さっき、武田君、凄い怒られてたよ」  上杉先輩が楽しそうに、伊達先輩と毛利さんに報告する。 「さっきの子、卓球部だっけ?」 「そうですね」 「そう言えば」  伊達先輩が尋ねて来る。 「武田君、最近は卓球部の勧誘はないの?」 「球技大会の後に、羽柴部長に誘われましたね。断りましたけど」 「今度、卓球やってるとこ見せてよ!」  上杉先輩がまた適当なことを言い始めた。 「いやですよ」 「奴隷に拒否権は無いんだよ」  そうだった…。  僕はまたため息をついた。 「じゃあ、卓球部に話をつけとくね!」  上杉先輩が嬉しそうに言う。  僕は全然嬉しくないのだが。  明智さんとは教室では、お互い接近しないようにしている。  しかし、僕が卓球部の練習に出ることになったとしたら、顔を合わせる機会が増えるのかと思うと気が重くなった。  その後は、下校時間まで無駄話をして過ごした。
ギフト
0