雑司ヶ谷高校 執筆部
それでも僕はやりたくない
 金曜日。  1日いつもの様に過ぎて、放課後。  毛利さんは図書委員の仕事で図書室へ。  僕は一人で部室に部室に向かう。  今日も日課の散歩か…。  このことは、校内でだいぶ広まっているようだが。  部室の扉を開けると、いつもの様に伊達先輩と上杉先輩が居た。 「来たね」 「いらっしゃい」 「こんにちは」  いつもの挨拶を交わす。  上杉先輩は早速、慣れた手つきで僕の首に首輪とリードを付ける。 「行くよ!」 「はいはい」  今日も上杉先輩にリードで繋がれて廊下に出た。    階段を降りて1階へ。  廊下を移動。今日は結構な人数が居た。  そして、滅茶苦茶写メで撮られた。  ツイッターで拡散されたおかげで、かなりの人にこの散歩が知られているようだ。  やれやれ。  2階に上がると、もう人は居なかった。  そして、生徒会室の前に差し掛かったところで、占い研の松前先輩と蠣崎先輩と遭遇した。 「あら」  松前先輩は僕の姿を見ると声を掛けてきた。 「本当に散歩しているのね」  そう言って笑う。 「ええ、まあ」 「浮かない顔をしているのね」  松前先輩は僕の表情を見て、心配そうに尋ねた。  それはそうだろう。こんなことをやらされているんだから。 「ええ、まあ」 「悩み事があったら、また相談に来てね」  そういうと松前先輩は蠣崎先輩と生徒会室に入っていった。  悩み事は、いろいろあるよな。この奴隷状態とか。  本当に相談に来ようかな。  僕と上杉先輩は部室に戻った。  すると、部屋の中には珍しい人が居た。  島津先生だ。  島津先生は僕の姿を見つけると早速話かけて来た。 「武田君、卓球部に来てくれるんだって?」 「えっ?」  僕は突然のことで、言葉に詰まった。  そう言えば、昨日、上杉先輩が『話をつけとく』って言ってたな。  早速、話をつけたということか。  それでも僕はやりたくないので、しらを切る。 「何のことでしょう?」 「上杉さんから、武田君が卓球部に来たいって言ってたって聞いたから」  島津先生は言う。 「知りません」 「卓球部に行くの! アタシの命令だよ!」  上杉先輩が横から叫んだ。  なぜ、僕に卓球をやらせたがる? 「来週は期末試験があるから、再来週の月曜からでいいわ。ユニフォームは用意しておくから。放課後に体育館に来てね」  そう言うと、島津先生は部室をさっさと去って行った。  困ったな。  卓球をはじめスポーツ全般は疲れるから、あまりやりたくないのだが。  まあ、1か月我慢すればいいか。  いや、再来週からだと、実質2週間、我慢すればいいということか。  卓球やっている間は、リードに繋がれて散歩も無くなるだろうし。  僕は、軽くため息をついて、椅子に座った。 「そう言えば」  伊達先輩が話しかけてきた。 「期末試験の対策は出来てる?」  忘れてたけど、来週はもう期末試験だった。  なんか、試験ばっかりしているような気がするが…。 「いえ、全然勉強してません」 「じゃあ、また勉強会をやりましょうか?」  歴史研の勉強会は恒例だ。  伊達先輩に教えてもらえると、成績が上がるのは事実としてあるから、今回も教えてもらおう。  忘れてたけど、そもそも、僕が歴史研に入部したのは伊達先輩に勉強を教えてもらうためだ。  と、いう訳で、 「お願いします」 「じゃあ、土曜日に武田君の部屋でどうかしら?」 「すみません、土曜日は合コンがありまして…」 「なら、日曜日は?」 「それでお願いします」 「じゃあ、毛利さんにも伝えておいてね」 「わかりました」  僕らは世間話をして、下校時間になったら帰宅した。  僕は自室に着くと、部屋着に着替えてベッドに寝転がった。  その後、御飯を食べて、風呂に入り、再び部屋でくつろいでいるとLINEでメッセージが来た。  東池女子校の細川さんだ。 『明日の14時、よろしくね』 『了解』  僕は、簡単に返事をして済ませる。  それにしても合コンって何をやるんだろうか?  マンガだと王様ゲームとかやっているけど、明日、やるのかな?  などと、考えを巡らせながら夜を過ごした。  そして、日曜日の勉強会の連絡を毛利さんにLINEで送ってから就寝した。
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