雑司ヶ谷高校 執筆部
それでも紗夜は寄せてくる
 期末試験2日目。  何とか無事終了。  英語は毛利さんに教えてもらったから、それなりに出来たような気がする。他の科目も無難に解けたように思う。  さっさと帰宅して、明日の試験勉強でもしようと思って、席を立った。  毛利さんに別れの挨拶をして下校する。  今日は、織田さんに声を掛けられなかったな。明日の試験は捨てたんだろうか? まあ、いいや。  自宅に帰って、1人でカップ麺を食べていたら、インターホンが鳴った。  玄関を開けると、予想通り上杉先輩だった。 「やあ」 「また来たんですね」 「毎日来るよ。奴隷の躾をしないといけないからね」  躾ってなんだよ…。  上杉先輩は家に上がり込むと、カップ麵を要求してきたので作ってあげた。  上杉先輩はカップ麵をすすりながら尋ねて来た。 「キミさあ、いつもお昼はカップ麺なの?」 「そうです」 「もうちょっと、良い物食べたら? 冷蔵庫に食材はないの?」 「まあ、あるみたいですけど」 「じゃあ、少しは自分で料理しなよ」 「僕は料理できないんですよ。作れるのはオムライスだけです」 「ああ、学園祭の時に特訓したからね」  上杉先輩はカップ麵すすりながら、少し考え事をしているようだ。  そして、再び話し出した。 「じゃあ、何か料理覚えて作ってよ」 「ええっ?! できませんよ。レシピも知らないし」 「今時、レシピなんてネットにいくらでもあるでしょ?!」 「それは、そうですが…」 「明日の昼は、私のために何か作ってよ! 決まりね!」 「えええー…」 「奴隷は命令を聞くの!」  やれやれ、厄介事がまた増えた。  何を作ればいいんだろうか…?  カップ麵を食べ終わると、僕と上杉先輩は僕の部屋に行く。  いつもの様に、上杉先輩はベッドに寝転がってマンガを読み始める。食べた後、すぐ寝ると牛になるよ。  僕は試験勉強を始める。  しばらくして、上杉先輩が話かけて来た。 「よく考えたら、今日はアタシら2人きりだね」 「そうですね…」  意識してなかったけど、今日は家には僕と上杉先輩の2人きりだ。  両親は共働きで夕方まで不在。  妹も、もうしばらくは中学校から帰ってこないだろう。 「誰もいない家で、男女2人がやることって、何だと思う?」  上杉先輩はニヤつきながら言う。  そして、男女2人がやること…って、アレだよな…?  しかし、僕はドギマギしながらも、すっとぼける。 「何でしょう?」 「フッフッフッ」  上杉先輩はニヤつきながら起き上がった。  上杉先輩、まさか、僕が言いなりになることを良いことに、エロいことをやろうって言って来るんじゃあないだろうな…。 「じゃあ、しよう」  上杉先輩はジリジリを身体を寄せてくる。 「えっ? えっ? するって…。ダメですよ」  僕はちょっと身体を後ろに引いた。 「えっ?! いいじゃん!」  上杉先輩はそれでも身体を寄せて来た。 「良くないですよ…、僕らは付き合っているというわけじゃあないんですから」 「はあ?! 何、言ってるのよ」 「えっ? 何って…」 「しようってのは、あれのことだよ」  上杉先輩は机の上にあるマグネット将棋盤を指さした。 「なんだ…、将棋のことですか…」  僕は残念だと…、いやいや、安堵した。  そして、わざわざ、『男女2人でやること』、みたいな言い方しなくてもいいだろうに。 「ひょっとして、何かエロいこと想像したんでしょ?」 「想像してません」  僕はごまかした。 「最近、将棋やってなかったじゃん?」  最近、将棋してなかったのは、上杉先輩が僕を散歩させていたからでしょうが。  将棋じゃなくて試験勉強したいんだけどなあ。  それでも上杉先輩は納得しないだろうから、 「じゃあ、少しだけなら」  と答えた。  1時間ほど将棋をしたら、上杉先輩は満足したようで、再びベッドに寝転がってマンガを読み始めた。  それにしても上杉先輩、将棋、着実に強くなっているような気がするんだが、影で研究しているのではないだろうか?  まあ、上杉先輩が将棋が強くなろうが僕は興味ないので、試験勉強を始める。  そして、妹が帰宅、今日も上杉先輩は妹の部屋に遊びに行ってしまった。  その後は、1人で試験勉強を進められ、何事もなく平和に時間が過ぎて行った。
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