雑司ヶ谷高校 執筆部
カレー
 期末試験3日目。  今日は、ヤマがあたって、結構解けたような気がする。  そして、帰宅しようとするが、今日は上杉先輩が昼ご飯を食べに来るから、命令で何か作らないといけなくなっていた。試験中も奴隷生活は続いているのだ。  ほとんど料理したことの無い僕が簡単に作れる料理ってなんだろう…?  レトルトとか、レンチンだけで終わる料理は、上杉先輩が納得しそうにないからな。  隣の席の毛利さんに聞いてみよう。 「ねえ、毛利さん、簡単に作れる料理って何かな?」  毛利さんは、僕の突然の質問に戸惑っているようだ。 「え…? いろいろあるけど? どうして?」 「いや、上杉先輩に昼ご飯を作らないといけなくなったんだよ」  少し考えるも、まったく思いつかないのだが。  じゃあ、自分が今、食べたいものでいいか? 「カレーとか、どうだろう?」  僕は毛利さんに尋ねてみた。 「カレーは、それほど難しくないし、作り置きが出来るからいいかも」 「じゃあ、カレーにするかな…」  具材を買いに行かなければいけない。  近くにミニスーパーがあるからそこで買うか。  カレーの具って、肉、ニンジン、ジャガイモで良いのかな?  などと、席で座ったまま、しばらく考えていると、毛利さんが話しかけてきた。 「私も武田君の作ったカレー食べたいな」 「えっ?!」  毛利さん、何を言い出すんだ。  しかし、カレーなら量が作れそうだから人数が増えても良いのかな?  とりあえず、了承する。 「まあ、いいけど…」  そんなわけで、僕と毛利さんは学校を後にして近所のミニスーパーまでやってっ来た。そこで食材を漁る。  牛肉、ニンジン、ジャガイモ、カレーのルーをかごに入れてところで、毛利さんに玉ねぎを忘れているのを指摘されて、追加する。  無事、食材を購入できた。  出費が痛い…。  牛肉って高かったな…。豚肉でも良かったのか? 買ってしまったので仕方ない。  そして、帰宅。  まずは、ご飯を炊く準備をする。  お米を研いで、炊飯器のスイッチを入れる。  次に、食材を広げてカレーを作り始める。  スマホで、カレーの作り方を探してそれを確認。  毛利さんも手伝ってくれるというので、遠慮なくお願いする。  毛利さんは、玉ねぎの皮をむいて、包丁で手際よく切り始めた。  僕はジャガイモを洗ってから、皮をピーラーでむきながら毛利さんに尋ねる。 「毛利さんって、料理できるんだね」 「うん。お弁当とか自分で作ってるよ」 「へー、そうか。すごいね」  朝、早起きして作っているのか、ご苦労なことだ。  引き続きピーラーで、今度はニンジンの皮をむきながら、僕は言った。 「こうして一緒に料理していると、新婚みたいだよね」 「えっ?! そ、そうだよね…」  毛利さんはちょっと驚いたようだ。  やっぱり、驚くか…。  僕も以前、織田さんにオムライスを一緒に作っている時に言われて驚いたからな。  さて、僕は切られた玉ねぎを、油を引いた鍋に投入。ヘラで混ぜる。  毛利さんは引き続き、ジャガイモとニンジンをカットしている。  カットが終わると、ジャガイモ、ニンジン、肉を鍋に投入。炒める。  玉ねぎが、しんなりしてきたところで、水を鍋に投入。煮込む。  途中、灰汁を取りながら、さらに煮込む。  15分程度経ったら、一旦火を止め、カレールーを投入。  かき混ぜながら、再度弱火で煮込む。  自分、あんまり『料理』してないな。まあいいや。 「あと、10分もすれば出来上がり」  毛利さんが言う。  ちょうどその時、インターホンが鳴った。  玄関に行くと、上杉先輩だった。  彼女は家に上がると言った。 「良い匂い。カレーだね」 「ええ、毛利さんにも手伝ってもらいました。もうちょっと待ってください」  カレーがいい具合に煮上がり、ご飯も炊けた。  僕が皿によそって、ダイニングテーブルで待つ、上杉先輩と毛利さんに提供する。  上杉先輩は一口食べて、感想を言う。 「美味しい! キミ、料理の才能あるんじゃない? 将来、料理人になったら?」 「はあ…」  料理を褒められて嬉しいが、レシピ通りに作ればそれなりに出来るのでは?  あと、美味しいカレールーを作った企業の努力だな。  そして、カレー作れたぐらいで料理人になれとか、料理人はそんなに簡単なもんじゃないと思うけど。  そう言えば、この前は『マッサージ師になったら?』と言われたな。適当か?  カレーを食べ終える。  毛利さんは、明日の試験科目の数学を教えてほしいと言うので、一緒に勉強もすることになった。  そして、上杉先輩は今日もベッドに寝転がってマンガを読む。  数時間後、妹が中学校から帰って来た。  僕の部屋に入って来て開口一番、 「カレーの匂いがするよ! あっ、紗夜さん、毛利さん、こんにちは」  僕が答える。 「カレー作ったからな」 「紗夜さんが? それとも、毛利さん?」 「僕だよ」 「えっ!? お兄ちゃんが作ったの?」 「そうだよ」 「何が起こったの?! お兄ちゃん、全然、料理なんかしないじゃん! 天変地異の前触れ?」  天変地異ってなんやねん。 「いや、上杉先輩が作れと言うので」 「おお! さすが紗夜さん! この調子で、お兄ちゃんをもっと調教してください!」  妹は嬉しそうに言った。 「任せといて」  上杉先輩は寝転がったまま答えた。  調教って…、勘弁してくれよ。  僕と毛利さんは明日の試験勉強をし、上杉先輩は妹の部屋に行ってしまった。  その後は、無事平穏な時間が流れ、試験対策も完璧に終わった  帰り際、毛利さんと上杉先輩は食材の代金ということで、それぞれ200円、合計400円くれた。  それでも収支はマイナスだけど…。
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