雑司ヶ谷高校 執筆部
合コン反省会
 日曜日は、奴隷労働もなく、珍しく平穏な1日を過ごすことができた。  明けて月曜日。  もう今週、我慢すれば金曜日は終業式なので、今週は消化試合の様相。  朝、早く起きて弁当を3人分作る、  今回も昨夜の残りものと、冷凍食品をレンチンしてさほど手間をかけずに完成させた。  登校して、午前中の授業を受ける。そして、昼休みには部室に行き、弁当を歴史研女子3人に食べさせる。  その間、今日は僕は購買に行き、パンを購入。部室に戻ってそれを食べている。  話題は、必然的に土曜日に行われた合コンについて。  案の定、上杉先輩が苦情を言いだした。 「合コン、思ったより楽しくなかったんだけど。幹事が悪いんじゃない?」 「なんでですか? 悠斗はイケメンだし、六角君も爽やか系で良かったでしょ?」 「いや、外見が良くてもダメなんだよ!」  では、どうしろと?  僕は、土曜日の座席の組み合わせを思い出す。  1回目のくじ引きの結果。  悠斗と伊達先輩。  片倉先輩と毛利さん。  六角君と上杉先輩。  僕と妹。    2回目のくじ引きの結果。  悠斗と毛利さん。  片倉先輩と上杉先輩。  六角君と伊達先輩。  僕と妹。 「上杉先輩は六角君と片倉先輩とは、何の話をしたんですか?」  僕は尋ねた。  上杉先輩は不満げに答える。 「六角君はサッカーとゲームの話をするんだけど、あたしの興味ないものばかりだったよ」 「上杉先輩もスマホでゲームしてるんじゃあ?」 「乙女ゲーは男子はやらないでしょ? ジャンルが違うのよ!」 「それはそうですね…、じゃあ、しょうがない無いじゃないですか…」 「ちなみに、伊達先輩と毛利さんは何の話をしたんですか?」  伊達先輩は箸を置いて答える。 「足利君、六角君もサッカーとゲームの話をしてきたけど、興味なかったわ。私は生徒会の話とか歴史研の話をしたのだけど、2人とも興味ないみたいで」  まあ、2人は生徒会には興味ないだろう。それに歴史研にも。 「毛利さんは?」 「私は、片倉先輩とは学校新聞に短編小説を書く相談をされて、ずっとその話をしてた。足利君とは…、いろいろ」 「そうか…」  上杉先輩が文句を言い続ける。 「合コンのメンバー、もうちょっと考えてよ!」 「勘弁して下さい。僕は友達が少ないんですから、過度な要求ですよ」 「はー、しょうがないかぁー」  上杉先輩は諦める様にため息をついた。  最悪の合コンだったということだな。  まあ、これで、上杉先輩は2度と合コンをやろうなんて言ってこなくなるだろう。  やはり、僕にとっては、良い結果となった。 「キミは、何の話をしたの?」  上杉先輩が尋ねて来た。 「僕はずっと妹とペアだったので、何も話してません。妹はずっとブツブツ文句言ってましたけど」 「席決めが悪かったよね」 「仕方ないです。くじ引きの結果は公正ですよ」 「くじ引きにしたのが悪かったんじゃない?」 「あれが一番良いと思ったので。ともかく、兄妹で合コンに参加するのもんじゃないという教訓を得ました」 「それは、収穫だったね」  収穫と言っていいんだろうか?  僕自身も合コンのような騒がしいのは苦手なので、できればもう参加したくない。  そんな感じで、合コンは大失敗だったと結論づけて話を終えた。  昼食を食べ終えると、解散となりそれぞれ教室に戻る。  僕は毛利さんと一緒に教室に戻って、席に着く。そこへ雪乃が声を掛けて来た。 「純也!」 「何?」 「最近、お弁当、純也が作ってるって聞いたけど?」 「誰に?」 「歩美だよ」  毛利さんは、最近は雪乃と仲が良いらしいから、情報は筒抜けなのだろう。 「そうか…。まあ、作ってるよ」 「私も食べてみたいんだけど」 「えええーっ?!」  流石に4人分作るのは勘弁してほしい。 「食材費がかかるから、これ以上は難しいなあ」 「歩美は200円払っているって聞いたけど。私も払うよ」  そこまで話しているのか。 「弁当箱がもう無いんだよ」 「じゃあ、あたしが1個持ってくればいいでしょ?」  逃げ場がない。  しょうがないな…。 「わかったよ、いいよ」 「じゃあ、明日弁当箱持ってくるから、明後日からよろしく」  雪乃は嬉しそうにほほ笑んだ。 「金曜日は終業日で午前で学校終わるから、実質、水曜と木曜の2日のみになるね」 「そっか…。じゃあ、3学期からも作ってよ」 「えっ?! そもそも、1カ月間、上杉先輩のいう事を聞かないといけなくなって、仕方なくやっていることだから、3学期はもうやらないよ」 「えー。そうなの? 残念」  そこへ、隣の席の毛利さんが割り込んできた。 「3学期からも武田君のお弁当食べたいな」 「無茶言うなよ」 「じゃあ…、たまに、お弁当を作って交換するのはどう?」 「えっ? どういうこと?」 「週に1回ぐらい、お互いにお弁当を作って交換するの」 「それって、織田さんも交えてって事?」 「そう。3人で順繰りで交換するの」  毛利さんは説明を始めた。  まず、それぞれ弁当を持ち寄って、  毛利さんの作った弁当を僕が食べ、  僕の作った弁当を雪乃が食べ、  雪乃が作った弁当を毛利さんが食べる。  翌週は、その逆で、  雪乃が作った弁当を僕が食べ、  僕の作った弁当を毛利さんが食べ、  毛利さんが作った弁当を雪乃が食べる。  という提案。 「いいね!」  雪乃はノリノリだ。  まあ、週1回ぐらいならいいかな。  それに3学期は短いし、すぐに春休みだ。 「わかった。それで、いいよ」  僕も了承した。  それを聞いて、毛利さんは満足そうに笑った。 「それで」  雪乃が話題を変えた。 「最近、なんで、上杉先輩の言いなりなの? 首輪をつけて散歩もさせられてるでしょ?」 「それは…、言えないな」  上杉先輩の胸を触って、その罰だとは言いにくい。 「ふーん」  雪乃はちょっと不満げで、追加で質問をしたそうだったが、午後の授業のチャイムが鳴り、僕はそれに救われた。  それにしても、雪乃って料理できたんだっけ?
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