雑司ヶ谷高校 執筆部
クリスマスプレゼント検討会議
 火曜日。  この日も放課後、卓球部に参加してきた。  最初に校庭1周ランニングをし、その後、福島さんのマンツーマン指導。  指導のおかげか、だいぶ卓球に慣れてきたような気がする。  そして、福島さんはあたりも柔らかいので、安心して指導を受けていられる。  今日は、歴史研の女子3人は部室の掃除をしてるらしいので、体育館には顔を出すことが無かった。  そんなこんなで、平穏に卓球の練習が終わり、さっさと帰宅する。  自室で部屋着に着替えるとベッドに横になる。  ところで、ちょっと悩みがある。  週末はクリスマスだ。  その日に雪乃の出演する舞台を毛利さんと一緒に見に行くのだが、クリスマスプレゼントを2人にあげたが方がいいのだろうか?  たまたま舞台を見に行く日がクリスマスだというだけで、クリスマスプレゼントを渡すのか?  とは言え、僕が手ぶらで行って、2人ともプレゼントを用意していたら、ばつが悪いし。  逆に僕だけプレゼントを持って行って、2人が何も準備してなかったら2人にばつが悪い気分にさせてしまうかもしれない。  さらに雪乃は誕生日が12月28日なのだ。  11月の僕の誕生日の時にプレゼントでネクタイピンをもらったので、お返しの意味も含めて、こちらも何か検討しなければならない。  しかし、僕がプレゼントをもらったのは(仮)とはいえ付き合っている時。別れてしまった後に、元カノにプレゼントを贈っていいのだろうか?  そして、誕プレを渡したら、よりを戻すことに変に期待を持たせてしまうみたいで、その点どうなのかと考えている。  そして、そもそも女子にプレゼントって何をあげればいいのか見当がつかないな。  しばらくベッドで横になったまま考えて、ふと思い立った。  そうだ! 妹に聞いてみよう。  僕は起き上がって、階段を降り1階に行く。  妹は、台所で冷蔵庫を開けて紙パックのジュースを飲もうと、それを手にしていた。  僕は声を掛ける。 「なあ、美咲」 「何?」 「クリスマスプレゼントなんだけど…」 「えっ?!」  妹は目を見開いて驚いた様子で尋ねて来た。 「お兄ちゃん、私にクリスマスプレゼントくれるの?!」 「いや、違う」 「なーんだ。ドケチのお兄ちゃんがプレゼントくれるなんて、あるわけないと思った」  妹は落胆して、ダイニングの椅子に座り、コップにジュースを注ぎ始める。  僕は構わず尋ねた。 「一般的に、女子が喜ぶクリスマスプレゼントって何だろう?」 「私にも、くれるんだったら教えてあげる」  しまった、妹に聞いたのは間違いだったか…。  仕方ない。 「安い物だったら、いいぞ」 「それで、誰にあげるの?」 「雪乃…、織田さんと毛利さんだよ」 「2人!? お兄ちゃん、二股なの?」 「いや、違う。たまたま、2人とクリスマスに会うことになってだな、それで、プレゼントを用意した方が良いのではないかと考えているのだ。それに、織田さんは誕生日も近いのでそれも併せて」 「あー、そういうこと。いいかもね」 「で、何がいいと思う?」 「うーん」  妹はしばらく考え込んでから答えた。 「パンツとかいいんじゃない?」 「パンツ?!」 「そう」 「パンツって、下着のことか」 「そうそう」 「いやいやいやいや、付き合っている相手ならまだしも、2人はただのクラスメイトだぞ、下着なんかあげたらドン引きだろ」 「そんなこと無いよ。今の流行りは男子が女子にパンツをあげるんだよ」 「お前、絶対嘘だろ」 「チッ、引っ掛からなかったか」  妹は悔しそうにする。 「なぜ、だまそうとする?! 僕が2人にドン引きされてもいいのかよ?」 「あの2人は、お兄ちゃんに変に良いイメージが付いているみたいだから、正さないといけないと思って」 「それに、今の話の流れだと、お前にもパンツをあげることになるけど」 「お兄ちゃん、変態」 「なんでやねん」  僕はため息をついてから再び尋ねた。 「真面目に答えてくれよ。お前にもプレゼント買ってやってもいいって言ってるだろ」 「そっか…。マフラーとか手袋は定番すぎて面白くないよね…」  妹はコップのジュースを一口飲んでコップをドンと置き、決断したように言う。 「じゃあ、髪留めとかどう? そんなに高くないものもあるし、お兄ちゃんでも買えるでしょ?」 「髪留めって、高くないのか?」 「1000円ぐらいであるよ」 「1000円か…」  雪乃、毛利さん、妹で掛ける3で3000円か。  今月は合コン行ったりしたので、少々財布の中身が厳しいのではあるが、致し方ない。 「わかった。髪留めにするよ。ありがとう」 「あとは、織田さんに誕プレって、もう付き合ってないんだから、もうあげなくてもいいんじゃない?」 「いや、僕の誕生日の時に誕プレをもらったからな、スルーも良くないと思うんだ」  妹は再び少し考えてから尋ねて来た。 「なるほどねえ…。お兄ちゃん、織田さんには何もらったの?」 「タイピン」 「そっか…」  妹はちょっと長いこと考えている。 「思いつかないや」 「困ったな…」 「で、クリスマスプレゼントのほうは、いつ買いに行くの?」 「明日にでも行って来るよ」 「私もついて行く! お兄ちゃん、センスないから、変なデザインのを買わないように。それに、お店で見たら、織田さんの誕プレも良いのが思いつくかもしれないし!」 「わかったよ。じゃあ、明日、学校終わったらサンシャインシティで合流な」 「了解~」  僕はクリスマスプレゼント問題が解決したので、再び自室に戻ってベッドに横になった。
ギフト
0