雑司ヶ谷高校 執筆部
お悩み相談~その2
 僕は次の悩み事を松前先輩に話し始める。 「実は、以前、気になる人が居たんです。その人も、僕のことが好きだった様子で、ちょっと良い感じになったことがあったんですが、相手が、どうやら、ほかの人と付き合っているようで、僕はあきらめたんです。ところが、相手は以前のように度々、僕にアプローチをしてくるので、ちょっと困惑していて。相手が一体どういうつもりなのか知りたい、と言うか…」 「あら、それは織田さんのことじゃなくて?」 「織田さんとは違います」  これは、毛利さんの話だ。 「そう。織田さんとはうまくいっているのと思っていたのに、別れたと聞いたので」 「ええ、彼女ともいろいろありまして…」  期間限定の(仮)付の彼氏のだったとは言わなくてもいいだろう。  話を戻す。 「それで、その相談の女子は、どうしたいと思っているのかと。二股をしたいと思っているのか、とか…。女子目線から松前先輩のご意見をいただければ」 「そうね。相手には付き合っている彼氏がいて…」  まあ、彼氏じゃなくて伊達先輩なんだけど。ここは訂正しないでおく。  松前先輩の話を続けて聞く。 「それなのに、武田君に接近してくる、と…」 「そうです」 「武田君は、その人のことが好きなのかしら?」 「いや…、今はそれほどでも」 「武田君が、相手のことが好きで、相手に彼氏がいるのを気にしないというのであれば、付き合ってしまうのも一考だと思ったのだけど」 「えっ?!」  僕は驚いた。 「それって、浮気相手になれと…?」 「そう、武田君が浮気相手だということが気にならないのであれば」 「いや、さすがにそれは気になります」 「じゃあ、話し合って、その女子、その彼氏と武田君の3人で付き合うとか」 「ええっ?!」  僕は再び驚いた。 「それは、どういう…?」 「言葉の通りよ、3人で付き合うのよ」 「いや、さすがにそれは…」 「まあ、そうなると相手の彼氏にも了承を得ないといけないけどね」 「そう言うことが可能とは思えないです」 「そうかしから? 配信サイトで海外のドラマを見ていると、良くあるみたいだけど」 「それはドラマだからでは?」 「現実でもあるみたいよ」 「いや…、でも、さすがにそれは…」  そうなると、僕と毛利さんと伊達先輩と3人で付き合うということになる。  話をしていて、松前先輩の恋愛観もなんか、少し違うような気がすると感じた。  雪乃もちょっと違うと感じたが…、それとも、僕がずれているのだろうか?  わからなくなってきた。  とは言え、松前先輩の提案の実現は、流石に無理だろう。  僕は答える。 「それに、僕はその相手の女子が、もう好きではないんですよ」 「じゃあ、はっきりと“好きじゃないからやめてくれ”っていえばいいんじゃないかしら?」 「まあ、そうなのですが…。そうですね、わかりました、今度、何かされたら言います」  その答えを聞くと、松前先輩は微笑んで見せた。  毛利さんの件は、解決できるかもしれない。  上杉先輩の方の解決は、ちょっとわからない、ということになりそうだ。  松前先輩は再び尋ねて来た。 「他にないかしら?」 「今日のところは、これで十分です」  悩みの解決はともかく、話をしたことで少しすっきりしたような気がする。  さっき、松前先輩は『悩みを人に話すだけでも、心の負担は減るっていう』って言ってたっけ。  その後は、松前先輩と世間話をする。  話の内容は、お悩み相談の内容の流れで恋愛の話に。  松前先輩は同じ占い研の蠣崎先輩と付き合っているんだそうな。  同性同士の付き合いも、今の時代、珍しくもなくなっているし、やはり、毛利さんと伊達先輩も付き合っているんだろうな、などと考えを巡らせた。  そして、松前先輩はネット配信の海外ドラマを良く見ているそうで、その中では、同性同士で付き合うとか、3人で付き合うとか、そういうのは良く見ると言っていた。  僕がSF好きだということを言うと、あるSF作品で3人で付き合うシチュエーションのあるドラマを教えてくれた。 “それを参考にしてみて”と松前先輩は笑って言う。  参考になるんだろうか…? とりあえず、今度見てみよう。  そんなこんなで、悩み相談は終了した。  僕は、悩みを聞いてもらったのと、コーヒーをおごってもらった礼を言うと、カフェの前で別れた。  松前先輩は都電荒川線に乗って大塚駅まで帰るらしい。  僕は徒歩で自宅に帰った。
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