雑司ヶ谷高校 執筆部
クリスマスプレゼント披露会
 毛利さんといろいろあったので、若干ブルーな気分で帰宅した。  雪乃の時もそうだったが、ああいう状況は苦手だ。  居間に入ると妹と両親がソファに座ってTVを観ながら、くつろいでいた。  僕の帰宅に気付いた妹が話しかけてきた。 「あ、お帰り、お兄ちゃん」 「ただいま」 「今日は、確か、織田さんの舞台を見て、紗夜さんたちとプレゼント交換会をやったんでしょ?」 「なんで、知ってるんだよ」 「紗夜さんにLINEで聞いた」 「あ、そう」  僕の情報は、いろんなところから筒抜けになっているな。 「でも、遅かったね。プレゼント交換会ってそんなに時間が掛かったの?」 「ちょっと、その後、池袋をふらついていたからな」  毛利さんとプラネタリウム行ったとかは、妹に言う必要はないだろう。 「ふーん…、ところで、それは?」  妹は僕を指さして尋ねて来た。 「それって?」 「マフラーだよ。いつもはマフラーなんかしてないじゃん? ひょっとしてプレゼントでもらったの?」 「ああ、そのひょっとしてだよ」 「おお! 誰にもらったの?」 「これは、毛利さんから」 「へー…」  妹はソファから立ち上がり、僕に近づいて来た。そして、いきなり言い放った。 「じゃあ、出して」 「え? 何を?」 「今日、他にもいろんな人からプレゼントもらったんでしょ? 全部見せてよ」 「しょうがないなあ…」  まあ、いいか。減るもんじゃなし。  僕はダイニングの椅子に座って、テーブルの上に紙袋からもらったプレゼントを並べた。  まずは、毛利さんからもらった水色マフラー。  次に、伊達先輩にもらったアロマキャンドル。  そして、織田さんにもらった包み。開けてないので、何が入っているかは、まだわからない。  妹はその3つを見て、尋ねる。 「このアロマキャンドルは誰から?」 「それは、伊達先輩。歴史研のプレゼント交換会で当たった」 「ふーん。さすが恵梨香さんは良い物選ぶね」  これって、良い物なのか? 詳しくないので、何ともわからないが。  妹はまだ開いていない包みを指さした。 「それは?」 「これは、織田さんにもらった」 「開けて見せてよ」 「そうだな…」  僕は包みを開けると、紙箱が。  さらに紙箱を開けると、マフラーが入っていた。ワインレッド色のチェック柄。 「マフラーか…。毛利さんと被ってしまったな」 「お兄ちゃん、いつもマフラーしていないから、2人とも『マフラーも買えないのか』と憐れんでくれたんじゃない?」  まあ、そうかもな…。 「それで」  妹は続けて質問をする。 「2つもマフラーもらって、どうするの? どっちかだけを使うの?」 「うーん、どうしよう」  どちらかだけを使っていると、一方だけ特別扱いしている感じになってしまうしなぁ…。  両方使わないというのは、『せっかく、あげたのに…』と不快にさせてしまうかもしれない。それはそれで、めんどくさいことになりそうだ。  さて、どうするべきか…? 「そうか! 一日おきに交互に使えばいいんじゃないか?」 「まあ…、良いんじゃない?」  妹は、あまり興味なさそうに言う。  なんだよ、天才的な解決策だと思ったのに。  妹は、おもむろに、どこからともなく紙袋を出してきた 「お兄ちゃん、これあげる」 「何これ?」 「クリスマスプレゼントだよ」 「え? なんで?」 「はぁ?! 私がプレゼントあげるとおかしいの?」 「あ、いや、想定外だったので」  先日、僕は、みんなにあげるプレゼントを買うのに付き合ったお礼で、妹にプレゼントを買ってあげた。  なので、それで終わりかと思っていた。 「開けていいかな?」  僕は尋ねた。 「いいよ」 「これは…。ポーチ?」  ナイロン製の手のひらほどの大きさ。 「バッグだよ。それ、折り畳みされてるから、広げるとまあまあ大きいよ」 「ほほう…」  僕は言われた通りに、折りたたまれているポーチを展開してみる。  結構な大きさになった。 「へー。こんなに大きく広がるんだ」 「お兄ちゃん、部活で旅行によく行くでしょ? 行きは、それを折りたたんでおいて、帰りは広げて使うんだよ」 「帰りに広げるって…、荷物の量は、行きも帰りも変わらないだろう?」 「いや、お土産入れるのに便利でしょ?」 「お土産…」  これは、『お土産買ってこい』アピールなのか…。  明日から、お城巡りで大阪方面に向かうのだが、そのための何も準備をしていなかった。  例によって朝早いし、さっさと準備を終わらせて、風呂入って、さっさと寝よう。 「まあ…、ありがとうな」  一応、僕は妹に礼を言うと、プレゼント一式を再び紙袋にいれて、自室に向かった。
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