雑司ヶ谷高校 執筆部
長篠城(日本100名城 No.46)
 さて、いよいよ今日からお城巡りだ、4泊5日の旅。  今日もいつもの様に待ち合わせの朝6時に着くように池袋のいけふくろう前に向かう。  今回は、長旅なので少々荷物が多い。ボストンバッグに着替えなどを入れて持って来た。  ぞろぞろと歴史研のメンバーが集合する。他のメンバーも少々荷物が多めだ。  そして、今回の旅は、なんと雪乃が参加するのだ。  今日は、昨日クリスマスプレゼントでもらった、毛利さんからもらった水色のマフラーをしている。  しかし、彼女とは、僕が告白を断った経緯もあって、ちょっと気まずい雰囲気だな…。 「じゃあ、行きましょう」  伊達先輩が号令を掛ける。  しかし、雪乃の姿が見えない。 「ちょっと、待ってください」 「何かしら?」 「雪乃…、織田さんがまだ来てませんが」 「はあ?」  上杉先輩が怪訝そうな顔をして割り込んで来た。 「キミ、話を聞いてなかったの?」 「話?」 「そうだよ。織田さんは舞台が今日まであるから、明日の朝、新幹線で大阪まで追い付いて来るって話」 「え? 聞いてませんけど…」 「お昼休み、お弁当食べながら話してたじゃん? キミもその場に居たでしょ?!」  全然、聞いてなかった。 「いや、女子の会話に聞き耳立てるのは、良くないと思って聞いてませんでした」  適当に言い訳を作って、ごまかす。 「しょうがないなあ」  上杉先輩はため息をついた。そして、続ける。 「ところで、私の荷物持ってよ」 「え? なんでですか?」 「だって、キミ、奴隷でしょ? ご主人様の荷物を持つのは当たり前。ついでに、みんなのも持ってあげてよ」  そうだった。奴隷状態は、まだ続いているのだった。 「でも、3人分の荷物を持つのはちょっと無理ですよ…」 「じゃあ、行きは私のを持ってよ。帰りは恵梨香の持ってあげて」  まあ、1人分ぐらいなら、なんとかなるだろう。 「わかりました」  仕方ないので、僕は上杉先輩のボストンバッグを受け取って肩に掛けた。 「中、開けてパンツ漁らないでよ」  上杉先輩がいつになく真面目な顔で言ってきた。 「漁りませんよ」  伊達先輩が再び号令を掛ける。 「じゃあ、行きましょう」  今回の旅は、『青春18きっぷ』を使う。  12050円でJRの在来線が乗り放題になる、春休み、夏休み、冬休み時期限定で販売されるきっぷだ。途中下車も可能。  今回は、大阪に行く途中に、まだ未訪問だった日本100名城の1つの長篠城を寄り道して見学することになっている。  長篠城のある場所は愛知県。最寄り駅は長篠城駅。  池袋駅から長篠城駅までは約7時間の旅だ。  豊橋駅までは東海道線で、そこから飯田線に乗り換える。  途中下車して、豊橋駅近辺で昼食を食べる。  そして、豊橋駅から長篠城駅までは1時間弱の移動。  そして、午後1時38分に到着した。  長篠城駅は無人駅。  小さな駅舎はお城のような雰囲気のデザインになっていた。  長篠城跡へは、さらに、ここから徒歩で10数分移動をする。  上杉先輩の荷物も担いでいるので、少々息が上がる…。  さて、長篠城。  1508年に菅沼元成が築城。1575年の、織田信長と武田勝頼による、いわゆる“長篠の戦い”が起こり、長篠城は荒廃して廃城となった。  長篠の戦いでは、武田軍は織田軍の鉄砲で大敗北を喫した。  現在は長篠城跡には建物は残っておらず、土塁のみが残っている。  そして、長篠城址史跡保存館が建てられていて、その中で歴史的な展示物を見学することができる。入場料220円。  長篠城跡と保存館を一通り見学し終えて、再び長篠城駅に向かう。  途中、僕は伊達先輩に質問をする。 「有名な長篠の戦いって、ここだったんですか?」 「戦場は、ここから少し離れたところ。連吾川れんごうがわ沿いに武田の騎馬隊をさえぎる柵があったようね」  博識な伊達先輩が解説をする。  そんなこんなで、長篠城駅から再びJRで、途中、乗り継ぎつつ大阪駅まで移動する。  さらに、そこからJR、地下鉄を乗り継いで、今回の宿泊する旅館まで。  途中、コンビニで食料を調達。旅館に到着した時にはもう夜9時を回っていた。  上杉先輩の荷物を持っていたので、2倍疲れたよ。  部屋は、いつもの様に少し広い和室。ここで皆で4泊するのだ。  明日は、千早城と和歌山城を回る予定だ。  雪乃との合流だが、毛利さんが頻繁に彼女とLINEで連絡を取っているらしく、毛利さんによると明日の朝に雪乃と難波駅で待ち合わせになっていそうだ。  今日は移動でみんな疲れたので、食事をして風呂に入って、さっさと寝ることになった。  =============  長篠城の情報  https://www.city.shinshiro.lg.jp/mokuteki/shisetu/shiryokan/nagashinojyoshi/goannai.html
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