雑司ヶ谷高校 執筆部
千早城(日本100名城 No.55)
 翌朝、僕と歴史研のメンバーは大阪の旅館で目覚めた。  今日もお城巡りをする。千早城と和歌山城を回ることになっている。  そして、今日から雪乃が、まさかの参戦。彼女とは、なんば駅で待ち合わせをしているという。  と言うわけで、旅館の朝食を早めに食べて、さっさと出発の準備をする。  千早城が山城なので、みんな動きやすいジーンズやチノパンという装備。  今日の移動、最初は近鉄と南海電鉄を利用するということで、普通にきっぷを買って移動開始。  10分も掛からずに、なんば駅に到着した。  歴史研のみんなで、駅の改札付近で人ごみの中に居ると思われる雪乃を探す。  雪乃はすぐに見つけることができた。 「おお! 歴史研の皆さん! おはようございます!」  雪乃は、いつものようにやや高めのテンションで挨拶をしてきた。  歴史研のメンバーもそれぞれ挨拶を返す。 「朝、早いので眠いでしょ?」  伊達先輩が尋ねた。 「今は大丈夫です! 新幹線で寝てましたから」 「朝、何時起き?」  次に上杉先輩が尋ねる。 「5時起きでした! いやー、きつかったです」  雪乃が答える。  きつい、という割には元気だな。新幹線で寝てたから回復したのか。 「荷物はどうしたの?」  見たところ、軽装の雪乃を見て、今度は僕が尋ねた。 「そこのコインロッカーに預けたの。帰りもこの駅を使うって聞いたから、旅館には帰りに持ってくよ。それで、今日はこれからどこに行くんだっけ?」  雪乃は尋ねる。その答えは伊達先輩が答える。 「千早城ね。ここから南海電鉄で河内長野駅まで行って、バスに乗り換えるのよ」  と言うわけで、僕らは切符を購入して再び移動開始。  なんば駅から30分ほどで河内長野駅に到着。  数分の待ち時間の後、バスに乗る。  河内長野駅から約30分で、金剛登山口というバス停に到着。ここからは徒歩だ。  他にもここで降りる乗客はそれなりに居るが、みんな山登りの装備だ。  山登りで良く見る杖(トレッキングポール)を持っている人もいる。  僕ら、ほとんど装備無いけど、大丈夫なの?  少々、不安を抱えつつ、千早城を目指して移動するが、後に聞くと、他の人たちは金剛山の登山に来ているらしく、千早城を見に来たわけでは無いようだった。  ちなみに、金剛山は大阪府で一番高い山だとか。  移動を始めて坂道を数分進んだところで、『金剛山 山の豆腐』という豆腐屋さんがあるのに気が付いた。  こんな山奥に豆腐屋さんとは。ググると1777年創業らしい。  さらに進み、きつい上り坂と長い階段を登りながら僕は尋ねた。 「伊達先輩、千早城の解説をお願いします」 「千早城は、鎌倉時代末期に楠木正成によって築かれた、周りを絶壁で囲まれている城で、1333年に正成が鎌倉幕府と戦った場所よ。『太平記』によると正成はたった1000人の手勢で千早城に籠城して、100万の幕府軍を撃退したとか」 「それは、すごいですね」 「まあ、100万は誇張されているみたいだけど」  などと話しつつ、山道を登り、さらに長い階段を登る。  そして、千早城本丸跡にある千早神社までやって来た。  結構、疲れた。  僕は、初参加でいきなりこんな山城に付き合っている雪乃が気になって、声を掛けてみた。 「雪乃、疲れてない?」 「これぐらい、大丈夫よ」  雪乃は笑いながら答えた。  雪乃もそうだが、他の歴史研のメンバーも意外にも元気で体力があるなあ、と感心する。  少し移動してベンチがあったので、みんなそこでしばらく休憩をした。  僕と雪乃が世間話をしていると、上杉先輩が話しかけて来た。 「キミたち、本当に別れてるの?」 「え? まあ、一応、別れてますけど」 「その割には、仲いいよね?」 「別に、喧嘩別れしたわけじゃあないから、仲いいですよ!」  雪乃は笑顔で答える。  休憩の後は、先ほどのバス停・金剛登山口まで移動する。今度は下り坂なので、さほど疲れることなくやって来た。  そして、次のバスが来るまでベンチで休憩をする。  バスが来るとそれに乗り、再び河内長野駅まで戻って来た。  駅前で簡単に昼食を取る。  次の目的地は、和歌山城だ。  ==========================  千早城の情報  http://www.chihayaakasaka.org/spot/castle.html
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