雑司ヶ谷高校 執筆部
SPICE×FAMILY
 僕らは西早稲田駅で地下鉄を降りた。  雪乃と毛利さん、妹は、織田邸がある駅近くのマンションへ。  僕は晩ごはんにカレーを作らなければいけないということで、材料を買いに1人で近くのスーパーマーケットへ向かう。  今日は前回のように牛肉ではなく、豚肉にした。ちょっと安上がり。  その他の材料も購入して。織田邸に向かう。  織田邸に着くと、雪乃に案内されて奥へ。女子3人はリビングルームでソファに座ってテレビを見ながらくつろいでいた。  前回来た時は、雪乃の部屋だけしか入らなかったので、他の部屋は始めてだ。どこも綺麗に掃除されているようだった。  僕は、さらに奥へ導かれて台所へ。  そんなわけで、料理開始。  ご飯を炊くところから開始しなければならなかった。無洗米があったので、それと水を炊飯器に入れる。   料理の途中、毛利さんが「手伝う?」と尋ねて来たが、1人で問題なさそうなので、「TVでも見てて」と言って、追い返した。  なんやかんやで、大体完成、しばらくカレーをとろ火で15分ばかり煮込むので、僕は台所を離れてリビングルームに行った。  妹が、雪乃や毛利さんと仲良くやっているか不安だった。  理由はわからないが、妹は雪乃と毛利さんを敵視しているみたいだからな。  とりあえず、仲良く(?)TVで流行のドラマを見ているようで、ちょっと安心した。  僕も彼女たちに混ざってソファに座って15分間TVを見る。そろそろ、カレーも出来たようだ。  ご飯も焚けているので、雪乃に皿を出してもらい、ご飯とカレーを盛って完成。  みんなダイニングテーブルを囲んで座って、カレーを食べ始める。  1口食べた雪乃が感想を言う。 「美味しいね」 「それは、良かった」 「前と、ちょっと味が違くない? ルーが違うの?」  妹が言う。 「ルーは同じだよ。違う点と言えば、前回は牛肉だったけど、今日は豚肉。あとは、風味づけに香辛料を入れた」 「へー。そうなんだ」  妹は感心したように言うと、もう一口食べる。 「香辛料って何?」  毛利さんが尋ねる。 「ガラムマサラだよ」  僕はさっきスーパーマーケットで、たまたま見かけて買って来た香辛料の入った小瓶を手にして、みんなに見せた。 「130円。前と同じだと、ダメ出しが来そうだったから」  毛利さんと妹は以前、僕のカレーを食べている。全く同じだと、特に妹がなんか言って来そうだしな。 「ふーん。私も今度やってみよう」  毛利さんは感心したようだ。 「お兄ちゃんのくせに、やるじゃん」  珍しく妹に褒められた。 「『お兄ちゃんくせに』は、余計だ」  この点は言い返しておかないと。  僕は続ける。 「カレーは中辛なんだけど、もっと辛くしたかったらこのスパイス使って」  取り出したのは、レッドペパーの小瓶。 「ちょうだい」  そう言って、妹は僕の腕から取り上げた、レッドペパーを自分のカレーに掛ける。  僕は注意する。 「あんまり入れすぎるなよ」 「辛い!」  入れすぎたらしい。  慌てて水を飲む妹。  そうこうしてカレーを食べ終え、しばらくその場で会話をする。 「こうやっていると、家族みたいだね」  雪乃が唐突に言う。 「私と、お兄ちゃんは本物の家族ですけど?」  妹が少々不満気味に言った。 「わからないわよ、将来、私も本物の家族になるかもしれないじゃん?」  雪乃は不敵に笑いながら言い放った。 「そうですか?」  妹はやはり不満そうだ。  何これ? 妹vs雪乃のバトルが始まってる?  そして、雪乃は遠回しにプロポーズみたいになっているけど…? 「後片付けするよ」  何か面倒なことに巻き込まれそうなので、僕はそう言ってみんなの皿を集めて台所に向かった。  後片付けが終わり、リビングルームへ行くと、雪乃が尋ねた。 「お風呂入るでしょ? 順番どうする?」  それに妹が、すぐに反応する。 「お兄ちゃん、一番最初に入りなよ」 「え? 皆がそれでよければ、最初でいいけど?」 「お兄ちゃん、みんなの後だと、みんなが入ったお湯飲むでしょ?」 「はあ?! そんなことするわけないだろ!」  まったく、妹はどういう目で僕を見ているんだ。  ともかく一番湯を頂くことになった。  風呂に入って、上がった後は、雪乃に借りた、雪乃のお父さんのトレーナーに着替える。  女子たちも次々に風呂に入る。  風呂上りは一同は、雪乃の部屋に行って、くつろいでいる。  女子たちは、全員パジャマ姿なのでちょっと気になるな。  女子だけのお泊り会であれば、恋バナをするのだろうが、今日は僕が居るし、このメンツだと修羅場っぽくなりそうなのだが…。  雪乃と毛利さんは、それぞれ僕のことが好きなようだが、なぜか2人の間で対立はなさそうで、逆に仲は良いみたいだ。  一方、妹は、なぜだか雪乃にも毛利さんにも敵対心を持っている様子。  雪乃はそのことは全然気にしていないようだが。  その事を証明するように雪乃は妹に普通に話しかけている。 「美咲ちゃんって、彼氏いないの?」  やっぱり、恋バナするんだ。  妹は不満げに答える。 「いないです」 「同級生とかに、気になる男子とかは?」 「同年代の男子って、ガキっぽくて」 「じゃあ、年上が好みなんだ?」  僕も話に加わる。 「じゃあ、悠斗とかいいんじゃないか?」 「悠斗って、足利君の事?」  雪乃は尋ねる。 「そう。あいつは幼馴染だから、小学校の頃は、美咲も一緒に遊んでたんだよ」 「そっか。彼は、イケメンでサッカーも上手いし、良いんじゃない?」 「えー」  妹はやはり不満そうだ。 「イケメンって、ライバルが多そうだから、めんどくさい」 『めんどくさい』とか、僕みたいなこと言ってるな。 「じゃあ、年上で、それ程イケメンじゃあない男って言ったら、お兄さん?」  雪乃は、いたずらっぽく笑いながら言った。 「えっ? お兄ちゃんは嫌いです」  そもそも、実の兄妹だぞ。論外だ。  そして、妹よ、僕のことを嫌いとか言うな。  さらに言えば、雪乃、“それ程イケメンでない男”で僕のことを言うなよ。まあ、その通りなのだが。 「優しいお兄さんじゃん?」  雪乃は言う。 「全然。意地悪だし」 「意地悪してないだろ」  僕は反論した。  しばらく、僕と妹を肴に話が盛り上がる。  その後は、雪乃を中心とした陽キャグループ内での学校の話とか、僕の知らないことを聞かされた。  いろいろあるんだなあ。面倒だから関わらないようにする。  後、生徒会長選挙の話題が出て、雪乃は立候補するつもりなのだが、当選の暁には僕だけでなく、毛利さんにも役員に入ってほしいとのことで依頼していた。  毛利さんは、OKのようだ。  そんなこんなで、夜も更けて来たので、もう寝ようということになる。  女子たちは雪乃の部屋で、僕はリビングルームのソファで寝ることになった。
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