雑司ヶ谷高校 執筆部
荷物持ち
 金曜日。  今日は日中に真帆からLINEメッセージが来ていて、放課後にマックへ来いと呼び出されていた。  何か用事があるらしい。  と言う訳で、放課後、サンシャインシティのマックにいつものようにやって来た。  そして、いつものように120円ドリンクを買って席に着く。  しばらく待っていると、真帆がやって来た。  今日は、何やら大きめのトートバッグを持っている。  真帆は僕を見つけると挨拶をする。 「お待たせ」 「そんなに待ってないよ」  僕はトートバッグの大きさがどうしても目につくので尋ねた。 「そのバッグ、何?」 「これ、明日からの物販で売るグッズとか入ってる。純ちゃんに渡すから、明日待って来てね」 「え? 僕が?」 「遠征で私たちも荷物が多めだから、みんなで話し合って純ちゃんにも手伝ってもらおうって」  なんだ、荷物持ちか。  なんか仕事が増えてるな。  最初は、オブザーバーという話だったのに…。  まあ、バイト代もらえるから手伝うか。  僕はトートバッグを受け取った。  意外に重くない。 「何が入っているの?」 「Tシャツとか、タオルとか。アクスタもあるよ」 「アクスタ?」 「アクリルスタンドのことだよ」 「それは知ってる。O.M.G.のアクスタってこと?!」 「そうだよ。業者に写真のデータを送れば、小ロットでも作ってくれるんだよ」 「へー」  驚いた。  アクスタを作れる事もそうだが、買う人もいるって事だよな。 「Tシャツやタオルも私たちが考えたデザインだよ。ファンの皆んなもTシャツ着てたの見たでしょ?」  確かに見た。  ライブでピンク色のTシャツを着たおじさん達が何人もいた。 「郡山は初めてライブするから、持ってなくて買う人もいると思うのよ」 「なるほど」  真帆の説明に納得した。  明日の朝、持って出るの忘れないようにしないと。  その後は、世間話をしてしばらく過ごしていたが、真帆が唐突に提案してきた。 「これから水族館行かない? 時間あるでしょ? 奢るから」 「えっ? サンシャイン水族館?」 「そう」 「まあ、いいけど…」  サンシャイン水族館は、サンシャインシティの建物内にある。  以前、雪乃と行ったことがある。  と言う訳で、チケットを買ってもらってサンシャイン水族館までやってきた。  ここは、ペンギンの水槽が目玉なのだが、真帆のお目当てはアシカショーらしい。  入館して早速、真帆はアシカショーを見てご満悦の様子。 「アシカ、好きなの?」  僕は尋ねた。 「うん。可愛いじゃん?」  その後も、館内のペンギンや他の魚類とか両生類とか爬虫類とかも見て回る。  1時間半ぐらい見て回って、館内のカフェで休憩することにした。  真帆がジュース奢ってくれると言うので、遠慮なく奢られることにする。  前も、バナナスムージーを奢ってくれたが、気前がいいな。  アイドル活動で儲かっているのだろうか? 「そういえば、オリジナル曲、どうする?」  春日局こと徳川さんにオリジナル楽曲の制作について聞いた内容を伝えていたが、結局、制作するかどうか検討中だったようなので尋ねた。 「作ってもらうことにした。お金もなんとか工面できそう」  真帆は満足そうに笑って答えた。 「そうか、よかったね。春日局さんに感謝だな」 「純ちゃんも、彼女から話を聞いてくれて助かったよ」 「大したことしてないよ」  本当に聞いた内容を伝えただけだからな。 「今後も色々手伝ってね」  真帆は微笑みながら言った。  まあ、バイト代くれるから、もうしばらくは真帆たちに関わっていこうと思っている。クビになるまでは。  そろそろ夕方も遅くなってきたので、明日の遠征の待ち合わせ時間を再度確認してから解散して帰宅することにした。  夜、自室で明日の準備をしていると、伊達先輩からSMSでメッセージが。  明日の集合時間の確認だった。  今回は真帆たちのライブ遠征とお城巡りが合同だからな。  女子6:男子1という、恐ろしいことになっているが大丈夫かな?  少々不安があるが、明日のことは明日の自分に対処してもらうことにする。
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