雑司ヶ谷高校 執筆部
風呂椅子
 火曜日の放課後。  また、真帆に呼び出されてサンシャインシティのマックに来ている。  最近は、毎週、真帆に呼び出されているような気がする。  O.M.G.の件の打ち合わせと思ったら、その話題は少なめで、先週はプリクラ、先々週はサンシャイン水族館、先々々週はてんぼうパークに行ったよな。  これって毎週、真帆とデートしてるみたいだ。  まあ、いいけど。  サンシャインシティまでやって来た。  2月なので最近は派手にバレンタインデーの飾り付けがなされている。  噴水広場は臨時のチョコ売り場となっていて、にぎわっていた。  マックに到着して、いつものように120円ドリンクを買って待っている。  しばらくすると真帆がやって来て、ドリンクを持って席についた。 「おまたせ」 「やあ、今日は何?」 「先週、話した名古屋遠征、決まったよ」 「そうか。月末?」 「うん、2月の最終週、天皇誕生日と合わせて3連休になってるから。2泊3日で3公演」 「え、天皇誕生日? そうだっけ?」 「そうなの。それで、歴史研の人たちは、やっぱり無理そうかな?」 「えっ…、そうだなぁ…、名古屋城は行ったからね。あと、愛知県だと犬山城や岡崎城なんかも行ったから…。今回は一緒に行くのは無いんじゃない?」 「そっか、残念だなぁ。一応、念のために聞いておいてよ」 「まあ、聞くのはいいんだけど…」 「あとね」  真帆は話を続ける。 「春日局さんから紹介された作曲家、フロイスさんって言うんだけど、彼にお願いした楽曲制作が進んでいて、その歌入れが2月中にありそうなの」 「風呂椅子…?さん、変な名前だね」 「フロイスって、当然、芸名だよ」 「芸名でも変でしょ? 風呂椅子って」 「そう…かな…?」 「まあいいや。それで、CD販売は今月中?」 「ううん、ライブで発表するには振り付け考えたりするのがあるし、今月は学校の試験もあるから、いろいろ忙しくて3月になりそうなのよ」  振り付け…、そうだよな。  楽曲制作は思ったよりやることが多くて大変そうだな。  僕は何もしてないけど。  そして、試験か。  雑司が谷高校も当然試験がある。  最近はちょっと、勉強がおろそかになっているので、真面目に勉強しなければ…。  明日から本気出す。  真帆が話題を変える。 「もうすぐバレンタインだね」 「そうだね」 「純ちゃん、チョコもらえそう?」 「チョコ?」  妹は毎年、義理チョコくれてるな。  あとは…、  毛利さん。  雪乃。  以上の3人は、くれそうだな…、多分。 「ええと…、多分、もらえると思う」 「だよねー。純ちゃん、モテるもんね」 「モテてないよ」 「モテてるよ。謙遜も時として嫌味だよ」 「そんなつもりじゃあ…」 「ふふふ…。私もあげるね」 「え…、うん、ありがとう」  じゃあ4つか。  そう言えば、ファンに配るために手作りチョコを作るとか言ってたよな。  去年までは、妹がお情けでくれる1個だけだったのに、そう思うとスゴイ進歩だな。  その後、しばらく世間話をしてから、今日はどこにも行かずに真帆と別れて帰宅した。  夜、家の用事をすべて終わらせて、自室ベッドに転んでくつろいでいる。  少し悩んだが、今日の真帆からの名古屋遠征について伊達先輩に報告しておくか。真帆も念のため聞いておいてくれと言っていたし。  SMSで、伊達先輩にメッセージを送る。 『2月のO.M.G.のライブ遠征は、月末の三連休に名古屋だそうです』  少したって返事が来た。 『わかったわ』    それ以上については、返事がなかった。  今後こそ、お城巡りは無しになればいいのにな。  ちょっと早いけど、今日は眠ることにした。  試験勉強、明日から本気出す。
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