雑司ヶ谷高校 執筆部
進展無し
 三連休が終わった。  朝、起床するが疲れが残っている。昨日、卓球をやらされたせいだ。  それでも何とか登校する。  今日も、げた箱付近で毛利さんと会う。  彼女に挨拶をして、一緒に教室に行き、席に着く。  しばらくして、悠斗が教室に入ってくるのが見えた。彼は僕に近づいて話しかけてきた。  聞くと、次のVRMMORPGをやる日程の調整がしたいという。  話し合いの結果、来週は試験があるので試験の終わる最終日にまた、六角君と3人でプレイしようということになった。  その会話を横で聞いていた毛利さんが話しかけてきた。 「そういえば、前にVRゲーム、やらせてくれるって言ってたよね」 「え? そうだっけ?」  そんなこと言ったような気もするが。 「ちょっと、やってみたい」 「え!? そうなの?」  毛利さんがゲームに興味を持つとは、予想外の事態にちょっと驚いた。 「えーと…。じゃあ、今日の放課後、うちに来る?」 「うん」  ということで、放課後に毛利さんが家に来ることになった。  昼休み。  僕と毛利さんは、教室で一緒に弁当を食べている。  弁当を食べ終えたころ、教室に予想外の人が尋ねて来た。  新聞部部長の片倉先輩だ。 「やあ、ご両人」  片倉先輩は、教室にづかづかと入って来て、僕と毛利さんの隣に立つと話しかけてきた。 「あ…。こ、こんにちは」 「例の怪文書の件で報告したいことがあってね」 「えっ?! 何か進展、ありましたか?」 「いや、その逆。まず、CROWNが盗まれたという件。トロフィーなどが無くなってないか各部活に確認してもらったけど、どこも紛失は無いってさ。あと、北条と赤松さんにも聞いたけど、イケコン、ミスコン賞品の王冠もちゃんと家にあるって言ってたよ」 「そうですか」 「それと、差出人の“P”について。海外にルーツのある生徒を当たってみたけど、該当者はいなかった」 「それは、残念です」  推理が全部外れていたので、僕はため息をついた。 「まあ、そんなに落胆しないで。また、何かあったら連絡するよ。武田君も何かあったら教えてよ」  片倉先輩はそう言うと、笑って教室を去って行った。  そうは言っても、手掛かりがほとんどない状態では、捜査の進展は望めないのでは…。これは迷宮入りかな?  あとは、成田さんが“北参道に通う者”かどうかだけど…、なにか手紙が届いたりしたないのだろうか? 今度また聞いてみよう。  昼休み、午後の授業が終わり、放課後。  僕は毛利さんと一緒に下校し、学校から徒歩5分の僕の家にやってくる。  僕の部屋に入れて、ジュースとお菓子を出してあげる。    早速、ゲームの説明をする。  今回は、お試しということで、僕のキャラを使って探索をすることにした。  僕のスマホをゴーグルを挟み、毛利さんにゴーグルを渡す。  毛利さんは、ゴーグルを被って異世界の中に入った。  彼女は異世界の中を徘徊しているようだ。  しばらくすると、毛利さんが、 「きゃっ!」  と、悲鳴を上げた。  敵と遭遇したらしい。 「剣で倒して!」  僕はアドバイスする。 「えーっ!? え? え? やられちゃう!」  これはダメかな…。僕は苦笑する。  しばらくしたら静かになった。  毛利さんはゴーグルを外して、感想を言う。 「なんか、難しいね」 「まあ、慣れだよ」 「このゴーグルって高いの?」 「いや、4000円もしない安物だよ」 「ふーん」  などと話していると、部屋の扉が開いた。  妹だ。 「いま、悲鳴みたいなのが聞こえなかった? あっ、毛利さん、こんにちは」 「ああ…。毛利さんが、VRゲームをしてたんだよ」  僕はゴーグルを持ち上げて言う。 「そう…。また、お兄ちゃんが、エロいことしたのかと思ったよ」 「するわけないだろ」 「説得力無いよ」 「そんなことより、お前、いつの間に帰って来たんだ?」 「たった今、帰って来たんだよ」  そう言い捨てると妹は部屋を去って行った。  僕は改めて、毛利さんに尋ねた。 「VRゲーム、どうだった? やってみる?」 「うーん…、ちょっと考えてみる」 「そう?」  ちょっと興味を持ったみたい。想定外だな。 「もし、やるんだったら、一緒にパーティ組もうよ。悠斗とか、六角君とかも一緒にやってるから」 「うん」  その後もしばらく世間話とか、来週からの試験のこととかを話して過ごし、1時間もしたら彼女は帰宅した。  夜、晩ご飯を食べて、風呂入ったりした後、部屋でダラダラしていると真帆からLINEが来た。 『明日の放課後、ヒマでしょ?』 『ヒマ』 『じゃあ、いつものところに集合ね!!』 『りょ』  明日は、いよいよバレンタインデーだが、真帆からは既にチョコもらっているからな。もう、チョコをもらうことはない。  いつもの様に、O.M.G.の打ち合わせと称したデートみたいなものなのだろう。  その後も、スマホいじったり、うだうだしていたらいつの間にか眠ってしまった。
ギフト
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