翌日の放課後。
僕、毛利さん、成田さんの3人は新聞部の部室に向かうべく、教室外の廊下で待ち合せをする。
あらかじめ、新聞部に行くと片倉先輩には昨夜のうちにLINEをして、アポは取ってある。
3人で新聞部の部室前にやってくると、僕は扉を開けた。
今日は、数名部員が居て、パソコン前で何やら作業をしている。
前髪に赤いペアピンでメガネ女子の小梁川さんの姿も見えた。
一番奥に部長の片倉先輩がいた。
片倉先輩は僕らの姿を見ると声を掛けて来た。
「やあ、待ってたよ」
片倉先輩が手招きするので、僕らはぞろぞろと部室の奥へと進む。
パイプ椅子を並べて片倉先輩の側に座る。
そして、小梁川さんもやって来て、片倉先輩の隣に座った。
片倉先輩は彼女を見て言った。
「小梁川さんにも、この件を取材してもらおうと思ってるんだ。次期部長だからね」
新聞部の次期部長、小梁川さんか。
歴史研の次期部長は、毛利さんかな。
僕も成田さんを紹介する。
「こちらも、将棋部の成田さんが協力を申し出てくれました」
「この謎。私、気になります!」
成田さんは、眼を輝かせながら言った。
「いいね」
片倉先輩は笑いながら言う。
「新聞部は報酬の分け前、半分もらうけどね」
最初の怪文書の報酬は1.57M。
これが、157万円という意味だったら、新聞部が半分、78.5万円。
それを僕と毛利さんと成田さんの3人で分配するとなると、26万1666円となる。
まあ、良いか。それでも結構な金額だ。
報酬が日本円でない可能性もあるが。
「早速ですが、これです」
僕はそう言って、昨日、成田さんから預かった手紙をカバンから取り出し、片倉先輩に手渡した。
彼は、それを読んでみる。
◇◇◇
1.
そがあかぱ、さぷまやぺらくわぽちひみい
、せきいのしちにあひんけ。なみいざりい
ふぉぽむーる。すおこつこそとろよーれえ
さぎうくすつぬさふむゆえにるうのほもよ
ぱとぴのんぺしえけせてねへめえらぷれえ
ぐあかぱさたかぴなしまはぷまやぺらわぽ
。きいきしちにじすりいたぴなはふぉぽる
かげおこそせとぶーなていほもよおろよ。
いうくすずうつぬ、ふそむえゆるぜかうを
あごえけせてねへ●めえとわぱとたぴら。
2.
中庭のタイル、一番端から。
Р
◇◇◇
片倉先輩は読み終えて、一言。
「なんのことか、さっぱりだね」
「ええ、僕らも全然わからなくて」
僕は答えた。
「ただ、差出人が“P”なので、怪文書の差出人と同一なのは間違いないと思います」
片倉先輩は、小梁川さんに手紙を渡す。
彼女も手紙を黙読する。
「あと、これも同封されていたとのことです」
僕は手紙に同封されていたという、桂馬の駒を差し出した。
片倉先輩は駒を受け取る。
「これは、将棋の駒だね」
「はい。この文章を解読するためのヒントなのかと思っているのですが…」
「ふむ」
片倉先輩は少し考え込んでから、尋ねた。
「成田さん、この駒は将棋部の物かい?」
「いえ。将棋部で駒が無くなったとかそう言う話はありません」
「そうか…。例の盗まれたかもしれない“王冠”のことかもしれないと思ったが、違うみたいだね」
「“王冠”というのであれば、“王将を”盗むのでないでしょうか?」
僕は疑問を呈す。
「確かにそうだね。やっぱり、“王冠”とは関係ないのだろう。そして、なぜ桂馬なのかだ…。これに何か意味があるのか、ないのか…。この手紙の写真を撮って、またXにポストしておくよ。誰かが解明してくれるかもしれないしね」
そう言って、片倉先輩はスマホで手紙の写真を撮る。
そして、スマホで何やら入力してXにポストしたようだった。
「あとは」
片倉先輩は再び口を開いた。
「なぜ、このタイミングかということだ。成田さんの下駄箱にこれが入っていたのは、昨日のバレンタインデーだろ?」
「バレンタインデーに意味があるんでしょうか?」
「昨日は、下駄箱にチョコを入れるために、朝から人が結構いただろ? それに紛れてしまえばいいと思ったんじゃないかな?」
「なるほど、昨日であれば下駄箱に手紙を入れるのを見られても、さほど疑いは持たれないのか…?」
「目撃者がいるかもしれないね」
片倉先輩は成田さんのほうを向いた。
「成田さん。下駄箱にはこの手紙以外は何も入ってなかったのかい?」
「何も。でも、女子にチョコとか、おかしくないですか? 他の目撃者はいないのではないでしょうか?」
「「そんなことないよ」」
僕と片倉先輩が同時に返事した。
「伊達先輩は、女子からのチョコがいくつか入ってたって言ってたよ」
僕は実例を話す。
「うん。女子でも女子からチョコもらう話は、それなりに聞くよ」
「そうなんですね」
成田さんは少し感心したように言った。
その後も、全員で推理をしてみるが、あまり答えにつながりそうなものは無かった。
推理が行き詰ったところで、片倉先輩は提案してきた。
「この手紙にある、中庭のタイルをちょっと見に行こうか?」
皆は賛成して、新聞部の部室を出て、中庭に向かった。