雑司ヶ谷高校 執筆部
自作自演
 翌日。  昨日のうちに毛利さんと試験勉強を一緒にやろうと約束をしていたので、午後、彼女が家へやって来た。  勉強を始めて順調に進み、教えたり教わったりして、それ以外は特に変わったこともなく、夕方頃には勉強を終わった。  その後、僕らは世間話をして過ごす。  会話の中で、毛利さんが怪文書の話題を振って来た。 「昨日の成田さんの手紙の謎解きなんだけど…」 「うん」 「簡単に解けたのが、ちょっと不思議だなと思っていて」 「どういうこと?」 「最初に生徒会に届いた怪文書の解読には、時間が掛かったでしょ?」 「そうだね。『北参道に通う者』が、成田さんのことだとわかるには、5カ月近く掛かったね」 「でも、成田さんのところに届いた手紙の謎は、すぐにわかったじゃない?」 「まあ2つのうち、1つだけだけどね」  手紙の前半の良く分からない文字の羅列は、まだ判読できていない。  それに、一番最初の怪文書の半分『CROWNから盗む』の件もまだわかっていない。 「成田さんに関わるところだけ、すんなり解けてるわけじゃない?」 「そう言われれば、そうかな…?」 「だから、成田さんが怪しいんじゃないかなって」 「ええっ?!」  毛利さんが、僕の予想だにしなかった推理を話し出したので驚いた。 「そ、そうかな…?」 「中庭のタイルも、成田さんが簡単に謎を解いたし。下駄箱に手紙を入れたのも自分でやったことかもしれないじゃない?」  僕は少し考えてみる。 「でもさ、差出人の“P”と成田さんって繋がり無さそうだけど?」 「例えば、成田さんのあだ名にPが付くとか」 「えー。それはこじつけが過ぎるのでは…? まあ、今度、会った時に成田さんのあだ名を聞いておくよ」  そして、僕は再び考えてから話す。 「でも、そうなると自作自演ってことになるね。でも、自作自演なら新聞部だって、こういったことをやりそうじゃない? Ⅹに投稿できそうなネタなら、いくらでも捏造しそうだし。それに、なぜか謎の解明に協力的だし」  片倉先輩は、僕の噂をある事ない事流しているって言ってたし、捏造もやりそうだ。 「そうかも…」  と言っても、毛利さんは僕の答えにちょっと不満そうだ。  うーん。  僕は少し考える。  成田さんや新聞部の自作自演の線は無さそうだけどなあ…。 「そもそも、犯人はなんでこんなことをするのかだ」 「そうだね。動機が分からないよね。嫌がらせか、愉快犯か…」 「もし、これが生徒会への嫌がらせとなれば、北条先輩も怪しいよな…。実際に嫌がらせを仕掛けて来たわけだし」  その被害を被ったのは僕だけだけど。  僕と毛利さんは、しばらく推理をしているが、結局決定的な解決は見つからなかった。  話をしていると、毛利さんのスマホが鳴った。  毛利さんはスマホを見て、何やらイジっている。  さしづめLINEのメッセージの返事でも書いているのだろう。  しばらく、スマホをイジったあと、毛利さんは僕に尋ねた。 「明日、ヒマ?」 「え? まあ、ヒマだけど」 「織田さんから、明日、一緒に勉強したいって来てるけど?」 「えっ?! 雪乃?! ま、まあ、いいけど。どうせ暇だし」 「じゃあ、明日も勉強会ね」 「毛利さんは、明日も大丈夫なの?」 「うん、自宅で勉強しようと思っていたから。明日も来るね」 「お、おう…」  そうなると、2日連続で試験勉強か。  かまわないけど、そんなに勉強をしたら、試験の得点が爆上がりしそうだな。  しかし、雪乃が試験前に勉強したいとか珍しいな。  試験期間中なら、教えてくれって言って僕の部屋に上がり込んでくるけど、今回はどうしたんだろう。  まあ、明日、理由を聞いてみることにしよう。  そんなこんなで、今日のところの勉強会は終了となった。
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