日没が近づいた為、私は上陸初日の捜索を一段落させ、部隊に適当な地点で野営するように命じた。
そして、夜もだいぶ更けったころだろうか、見張りに立っていた兵士の一人が、私のテントに駆け込んできた。
「敵襲です!何者かがこちらに向かっています!」
私は起き上がり、剣を取って表に出た。野営地の少し先の森で何かが動き、こちらに迫ってきているようだ。メキメキと木なぎ倒す音があたりに響き渡る。
魔術師がその方向に、火を放つと人の形をした何かが映し出された。身長は人間の三倍はあるだろう。しかし、明らかに岩のようなものが、人の形に組み上げられているだけに見えた。
ゴーレムだ。
木をなぎ倒しながら、こちらに徐々に向かって来る。
調査隊の隊員全員が起床し戦闘の準備をして、それを待ち構える。エミリーが矢を放った。ゴーレムの体に突き刺さるも、その怪物は動きをやめない。
私やオットー、ソフィア、魔術師が炎や稲妻を放つが、びくともせず迫ってくる。またも強敵だ。我々が見守る中、ゴーレムは森を抜け野営地に近づいて来る。もう、我々と目と鼻の先だ。
隊員が数名、駆け寄り剣で切りつけた。しかし、剣はむなしく弾き返されるばかりだ。ゴーレムの振るった岩の腕が、その隊員たちを跳ね飛ばした。隊員たちの体は軽々と宙に浮いて、後ろに飛ばされた。
「近づくな!」
私は叫んだ。
ゴーレムは怪力だが、動きはそれほど早くない。
「奴を岩場の崖の上へ誘導する」
私は叫んで、隊全体がゆっくりと後退し始めた。ゴーレムはそれに続いてくる。
しばらくゴーレムを誘い出し、後退してきた我々は、左手が高さ三十メートルはある岩場の崖までやってきた。ゴーレムが岩場の崖の端あたりに到達したところで私は叫んだ。
「奴の足元を狙って稲妻を放て!」
と同時に、私、オットー、ソフィア、魔術師が稲妻を放つ。ゴーレムの足元の岩場が、ひび割れ崩れだした。岩場は、ゴーレム自身の重さにも耐えられず、がらがらと崩れた。ゴーレムはバランスを崩し、崖の下に転落した。
我々が崖の下を確認すると、ゴーレムはバラバラになり、本来の岩と化していた。
私は数人に崖の下のゴーレムの残骸を調査させた。すると魔石が見つかった。やはり傀儡魔術によるものだ。何者かが、こちらの位置を把握していることは間違いない。監視されているのだろうか。
我々は野営地に戻り、ゴーレムに弾き飛ばされた隊員達を確認するも、三名が死亡していた。
私は遺体の埋葬を指示し、自分のテントに戻った。
これまで、我々は翼竜、クラーケン、ゴーレムと戦った。剣や矢が歯の立たない相手ばかりだ。おそらく島の中央部に居る地竜もそうだろう。今後の戦いも苦戦を強いられると予想する。
もう一方の、ホフマン隊は大丈夫だろうか。