雑司ヶ谷高校 執筆部
合流
 翌朝、我々は野営地を出発し、島の南側へ移動を開始した。今日の夕方には島の南側でホフマン隊と合流し、翌日には島の中央部へと進む予定だ。  昨夜、ゴーレムの襲撃があったので、うっそうとした森の中、周りを注意深く確認しながら前進する。昨日の生存者の話で、地竜が島の中央部に居ることが分かったが、今いる島の周辺部に、他の敵がいるかは不明だ。念のため、あたりの探査をしながら進む。  夕方ごろ、我々は何事もなく、島の南側の合流予定地の浜辺に到着した。ここは北側のものよりも小さい砂浜となっている。  私は野営地を砂浜近くの森の入口に決め、隊を休ませるように指示した。西回りルートをやってくるはずの、ホフマン隊を待つ。しかし、日が落ちてもホフマン隊が到着することはなかった。私の中で不安がよぎる。昨夜のわれわれのようにゴーレムや、もしくは、ほかの怪物の襲撃を受けたのだろうか。  私は、今夜中にホフマン隊が到着しなければ、ホフマン隊の捜索に西へ向かうと兵士たちに告げ、今夜は休むように伝えた。もちろん一晩中、交代で見張りを立て、警戒は怠らない。  夜、私は眠りに就こうとした時、突然、隊員が私のテントにやってきた。夜襲かと思ったが、ホフマン隊の隊員が今、到着したという。しかし、人数が少ないとのことだ。  私は、到着していたホフマン隊の隊員を見た、傭兵部隊の者が十二名、帝国軍兵士二名の総勢十四名。松明の明かりに照らされその表情には、誰も疲労の色を隠せない。この中に、ホフマンやアグネッタは居ない。私はまず、隊員たちに水を与える様に言い、その後、落ち着いたら隊員から事情を聴くことにした。  隊員たちの中で比較的元気そうな人物を選び、私のテントに招いた。彼はこれまでの経緯を話し始めた。  昨夜、我々と同じようにゴーレムの襲撃を受けた。隊はゴーレムと戦うも全く歯が立たないとわかり、退却を開始。ホフマンはゴーレムを大きく迂回して合流地点であるここに向かおうとした。夜でもあったので、森の中で比較的通りやすいところを進んだという。夜が明け、さらに進み昼頃には、開けた場所に出た。よく見ると、その付近の木は枯れているようで、地面にも草はほとんどなかったという。すると突然、前の方から霧が立ち込めてきた。隊は道を進むため、ほぼ一列で進んでいたが、霧に包まれた前方の隊員が苦しみながら倒れだしたので、後方に居た彼らは霧から逃れようと、後退した。そこで半数近くが霧でやられたようだということだ。アグネッタは上空からあたりを警戒していたが、霧が見えてからは、どうなったか、わからないという。彼らはその後、ここを目指して移動し、ようやく先ほど到達したという。  彼らがたどり着いた開けた場所と言うのは、おそらく島の中心部で、酸の霧は岩場にいた生存者が言っていた地竜が吐いたものとみて間違いないだろう。  何か怪物は見なかったかと尋ねたが、彼は何も見ていないと答えた。  先にホフマン隊が迷い込んでしまったようだが、おそらく、そこが我々の目的地だ。地竜は間違いなくそこに居る。それを操る魔術師もそこに居るかもしれない。魔術師を倒さなければ、我々の安全な帰還はない。私はそこへ向かうことを決意した。  その後、ホフマン隊の者達も休ませるように言うと、私も一旦、眠りに就くことにした。  そして、夜が明けた。  これまでの経緯を踏まえ、私はオットー、ソフィア、エミリーを早朝から呼び出し、地竜の対策を話し合った。酸の霧は、ソフィアの大気魔術で対応することが可能だろうということだ。先日、盗賊討伐の際、敵が使った目くらましの霧を、突風で吹き飛ばした要領でやってみるという。  また、地竜自体は翼竜の数倍の大きさがあるという。弱点が不明なため、私が首都でやったような剣を突き立てて、それに稲妻を放ち、ダメージを与えていくという方法、ソフィアの念動魔術や、私の持っている毒が利用できないかと言う案も出たが、決定的なものはなかった。苦しい戦いを強いられそうだ。  私は今日は、準備と対策会議のためもう一日、ここにとどまることを決め。明日、早朝に島の中央部に向けて出発することにした。
ギフト
0